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裏方聖女は逃げ出した!~ブラック職場やめます!お洒落なカフェハウスの店長になったので、今更戻れと言われてももう遅い!  作者: 柚屋志宇
第3章 約束とカフェハウス

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46話 その後のあれこれ

「アリーがルネだってこと、あの人たちは多分気付いているね」


 第二騎士団のエリオット様とダレス様と、そしてスタイン公爵令息ホバート様が来店するという予期せぬ出来事が起こった後。

 彼らがいなくなると、ローナさんは難しい顔をして言いました。


「でもまあ、第二騎士団は見て見ぬふりをしてくれるようだから、当分は大丈夫だろう」

「……ダレス様は私に、追手のことを知らせるためにわざと情報を教えてくれたのでしょうか?」


 私がそう尋ねると、ローナさんは頷きました。


「そうとしか思えないよ」

「うん、あれは親切だよ。それに……」


 ニーナも考えるような顔をして言いました。


「スタイン公爵のご子息はバンクス公爵と戦うって言っていたから、ダレス様はわざとあの人の前で言ったんじゃないかな」

「そうだね」


 ローナさんは渋い顔をして、頭が痛そうに額に手を当てました。


「変人っぽい坊ちゃんだったが……。バンクス公爵や、婚約者だった巫女とは敵対しているようだったから、敵の敵は味方ってことかね」


(味方……なのかな)


 神殿の薬草園で、メレディス様は婚約者のスタイン公爵令息ホバート様を自慢していました。

 貴族の巫女たちは皆、メレディス様がホバート様と婚約したことを羨んでいました。


 ホバート様は、貴族の中で最も爵位が高い公爵家のご令息だから、きっと権力や財産があって凄いから。

 だからメレディス様はそれが自慢で、皆はそれが羨ましいのだろうと、私はそう理解していました。


(もしホバート様が味方になってくれたら、多分、凄いことの気がする)


「上手く収まったから良かったものの……」


 ローナさんが半目で、私を咎めるようにして言いました。


「どうして名乗り出たんだい?」

「迷惑をかけちゃいけないと思って……」

「そんな心配はしなくて良い。裏口からこっそり逃がすことくらいは出来る。隠れてれば良いんだよ。大体、名乗り出た後、どうするつもりだったんだい? 後先考えずに無茶するんじゃない」

「走って逃げれば良いかなと……」

「走って逃げて、その後どうするんだい? ここを出た後のことを考えていなかっただろう」


「冒険者にでもなれば良いかなと」


 私には安眠の術で悪人を倒した成功体験があります。

 それにニーナが私を、最強だとか、凄いとか褒めてくれたので、冒険者になってもやっていけるような気がしていたのです。


「冒険者なんて女の子がやるもんじゃないよ」


 ローナさんは冷めた目で言いました。


「冒険者は野宿をするんだからね。宿屋がない場所にも行くんだから」

「……っ!」


 野宿……。

 ベッドもお布団もないのは……、辛いかもしれません。

 そこまで考えていませんでした。


「野宿するときは、自分で料理もしなきゃいけないんだよ。野営ができなかったら冒険者なんかできないからね」

「……」


 ローナさんの話を聞いて、私は気付かされました。

 冒険者になったら、ニーナのお料理が食べられなくなり、お布団でも眠れなくなることを。


(冒険者になるのは……無理だわ)



 ◆



「この看板を飾りたまえ」


 それから数日後、ホバート様は再び来店しました。

 看板を持った従者を連れて。


 ――スタイン公爵家御用達。


 ホバート様の従者が持っている看板には、そう書かれていました。


「この看板を飾っておけば、この店が我がスタイン公爵家の庇護下にあることは誰の目にも明らかとなる。不用意にこの店に手出しする奴はいなくなるだろう。もしそんな奴が現れたら……」


 不敵に微笑みながらホバート様は言いました。


「すぐに私に知らせたまえ。我がスタイン公爵家が相手になってやる」


「ご好意に感謝いたします」


 ホバート様にはローナさんが応対していました。

 ですが、彼が何をするつもりなのか、私もニーナも気になっていたので、工房から店に顔を出して見物をしていました。


「薬師ルネ、安心して至高のポーションを作りたまえ」


 ホバート様は、ニーナに向かってそう言いました。


(ホバート様は、ニーナと私を間違えてる?!)


「え、私はルネじゃないです。ルネはこっちのアリー」


 ニーナがそう言って私を示しました。

 ホバート様は私をまじまじと見て、そして首を傾げました。


「巫女ルネは十六歳だったと聞いているが……?」


(私が子供に見えるから、ニーナが私だと思ったんだ)


「私、十六歳です。魔力欠乏で成長が遅れているんです」


 私がそう言うと、ホバート様は驚いたような顔をして声を上げました。


「魔力欠乏だと!」

「はい」

「薬草園で手伝いをさせられていたことが原因か?!」

「……多分? それもあると思います」

「何ということだ!」


 苦悩するように頭を抱えたホバート様に、私は言いました。


「でも今、養生しているので、もう大丈夫です。背も伸びていますし……」

「至高のポーションの作り手に、何ということを……!」


 ホバート様は苦悩に身をよじらせて、何度か呻くと、私に言いました。


「養生に必要なものがあれば何でも言って欲しい」

「あ、いえ、大丈夫です……」

「私のことは兄だと思って頼ってくれ!」

「ありがとうございます」



 ◆



「ロゼリア草を混ぜているという疑いは晴れました」


 幾日か経過した後。

 提出した上級ポーションの分析が終わったとのことで、第二騎士団のエリオット様とダレス様が再び来店しました。

 そして調査の結果を教えてくれました。


「魔法塔で分析してもらった結果、ツベルギア草のみで作られたポーションであることが解りました」


 エリオット様がローナさんにそう伝えると、エリオット様の隣にいたダレス様が私のほうを振り向きました。

 ダレス様はくだけた口調で私に言いました。


「スタイン公爵家御用達になったみたいだね」

「はい」


 私が返事をすると、ダレス様は含みのある笑みを浮かべました。


「良かったね」

「はい。おかげさまで」


 ダレス様の意味深な笑みは、結果に満足しているように見えました。

 あのとき独り言で情報を出すことで、ホバート様が私の味方になってくれると、ダレス様はやはり解っていたのでしょうか。


(親切な人だわ)



 ◆



 一時はどうなることかと思いましたが。

 ロゼラス草を違法に使っているという疑いも晴れて、スタイン公爵のご子息ホバート様も味方になってくれて、問題はすべて解決しました。


 その後、宮廷魔術師を名乗る人が来店して……。


「私はリロイ。宮廷魔術師をしている。第二騎士団に依頼されて、この店の上級ポーションの解析をした者だ。薬師殿をスカウトに来た。君、魔法塔で働いてみないか!」


 リロイと名乗った宮廷魔術師に魔法塔に誘われましたが、お断りしました。


「そうか。残念だよ。気が変わったらいつでも声を掛けてくれたまえ。第二騎士団の団長に言えば私に伝わる。君ならいつでも大歓迎だ」



 ◆



 そして平穏な日々が戻りました。

 私はせっせと働き、金貨をこつこつと貯めました。

 そして、ようやく……。


(金貨が百枚になったわ!)


 私は金貨を百枚稼ぐことが出来ました。


(ジルさんにお金を返せる!)

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― 新着の感想 ―
ホバート君の庇護欲が爆発してるの草www
おお…カフェを開く前に借金が返せるのか…
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