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裏方聖女は逃げ出した!~ブラック職場やめます!お洒落なカフェハウスの店長になったので、今更戻れと言われてももう遅い!  作者: 柚屋志宇
第3章 約束とカフェハウス

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44話 邂逅

(何かしら……)


 薬屋の工房で製薬の仕事をしていた私は、お店のほうから聞こえて来た騒がしい声に気付いて手を止めました。

 聞こえてきたのは、男性の声です。


 ニーナも気付いたようで顔を上げました。


「なんだか騒がしいわね」


 ニーナも仕事の手を止めて、店へと続く扉に歩み寄りました。

 そして扉を細く開けて、ニーナは店の様子を伺いました。


「……!」


 ニーナは鋭く振り向くと、私に小声で言いました。


「騎士様が来てるわ。エリオット卿とダレス卿よ。かっこいい!」

「え!」


 第二騎士団のエリオット様とダレス様には、私はお世話になりました。


 彼らに会ったとき、私は後ろめたいことがあったのでドキドキもしましたが。

 迷子になって暴漢に襲われていたところを助けられ、宿屋に送ってもらいました。

 暴漢を倒したのは私ですが……。

 騎士たちはとても親切で、そして格好良い男性たちでした。


 私も興味が湧いて、店に繋がる扉の所へ行くと、ニーナが細く開けた扉の隙間から店の様子を伺いました。


(エリオット様だわ!)


 格好良いエリオット様の姿を見て、私の気分は上がりました。

 ですが……。

 何やら言い争っている様子で、おだやかではない雰囲気でした。


 扉の隙間からは姿が見えない男性の声が、トゲトゲしい口調で言いました。


「もしここの上級ポーションにケチをつけるのであれば、私が許さない」


(上級ポーション?!)


 この店で上級ポーションを作っているのは私です。

 私に関係のある問題だと解り、戸惑いました。


 続けざまに男性の声が言いました。


「第二騎士団は、いつからバンクス公爵の犬に成り下がったのだ!」


(バンクス公爵!)


 バンクス公爵は、聖女セラフィナ様の実家です。


(セラフィナ様が私を探して、第二騎士団に依頼したの?!)


 格好良いと思っていた第二騎士団の騎士が、セラフィナ様の実家バンクス公爵家の命令で動いているかもしれないという可能性に、私は混乱しました。


(上級ポーションが目を付けられてしまったの?! あれを売ったから私の居場所がバレたの?!)


 薬屋で働いて、徐々に市井のことを知った私は、私が作る上級ポーションは滅多にない最上級品だと知りました。

 私が製薬したポーションが高く売れることが解り、私はお金が稼げると浮かれていました。


(上級ポーションのせいで目立ってしまったんだわ……)


 高く売れる貴重なポーションを作れることは、良いことばかりではなかったことに初めて気付かされました。

 作れる人が少ないということは、目立ってしまう原因にもなるのです。


「誤解だ。バンクス公爵は関係ない」


 エリオット様はそう言いましたが、男性の声はさらに質問を重ねました。


「では第二騎士団が、この店の上級ポーションに何の用だ?」

「それは……部外者にはまだ言えない段階にある……」


 エリオット様は言葉を濁しました。


(バンクス公爵に依頼されて騎士団が来たのね。私が上級ポーションを作ったせいで、この店がバンクス公爵に目を付けられてしまった……)


 ローナさんとニーナは、私の事情を知り匿ってくれています。

 でも一介の平民の薬屋が、権威や特権を持つ騎士団や公爵家を相手にして私を庇うことは無理でしょう。


(ローナさんとニーナに迷惑をかけるわけにはいかない)


 私は意を決して、店に通じる扉を開けました。

 そして店に出ました。


「……!」


 店で問答していた男性たちが、一斉に私を見ました。


「アリー、お前さんは引っ込んでな」


 ローナさんが、しっしっと私を追い払うように手を振って、言いました。

 ニーナも私の腕を軽く引きました。


「そうだよ、アリー、お婆ちゃんに任せておこう」

「ニーナ、ごめんね、迷惑はかけたくないから……」


 私はニーナにそう言うと、カウンターの向こうにいる騎士団の二人に言いました。


「上級ポーションを作ったのは私です!」


 私が大人しく名乗り出れば、この店に迷惑をかけずに済むと思いました。


(いざとなったら、強化の魔術を使って走って逃げよう)


 安眠の魔術で眠らせる手もありますが、それではこの店に疑惑がかけられてしまうかもしれません。

 騎士たちの目の前で私が逃げ出して、この店から私がいなくなったことにすれば迷惑をかけずに済むと思いました。


(後でこっそりと、金貨を取りに戻れば良いよね。ローナさんとニーナならきっと扉を開けてくれるはず)


「バンクス公爵が用があるのは、上級ポーションを作った薬師だけですよね。このお店は関係ないので、手出ししないでください」


「……!」

「え……?」


 騎士団の二人、エリオット様とダレス様が私の顔を凝視しました。


「君が……?」


 貴族のような上等な服を着た白髪紅目のひょろりとした青年が、微妙な表情をして首を傾げました。

 ですが彼はすぐに、はたと気付いたような顔をして私に言いました。


「……そうか! 君は薬師殿を守ろうとしているのだな。大した子供だ。ポーションの価値を良く解っている」


(薬師は私だけど……。何か勘違いをされている? 私が子供に見えるから?)


「私が上級ポーションを作った薬師です」

「君の心意気は私が受け取った。安心したまえ、薬師殿はこのホバート・スタインが守ってみせよう!」


 ホバート・スタインと名乗ったひょろりとした青年は、何か勘違いしているとしか思えないことを私に言うと、騎士団の二人に向き直りました。


「さあ、騎士諸君、バンクス公爵が何を言ってきたのか聞かせてもらおうか。スタイン公爵家が相手になろう!」


「バンクス公爵は関係ありません」


 エリオット様はそう言いましたが、ホバート青年はニヤリと不敵に微笑みました。


「隠し立てしても、ためにならないぞ? 調べる手段はいくらでもある」

「本当にバンクス公爵は関係ありません。……まいったな……」


 エリオット様は独り言を零しながら、何か考えるように目を伏せました。

 そして算段をつけたのか、エリオット様は顔を上げてホバート青年に言いました。


「まだ疑惑の段階ですので、口外しないと約束していただけますか」

「内容による。場合によってはバンクス公爵と戦う」


 ホバート青年が探るような視線でそう言うと、エリオット様は苦笑しました。


「バンクス公爵は本当に関係ありません」


 エリオット様はホバート青年を信用したのか、それとも観念したのか、用件を語りました。


「実は、この店で売られている上級ポーションに、違法にロゼラス草が混ぜられているという密告があったのです。それで上級ポーションを確認に来たのです」

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― 新着の感想 ―
Oh…、もしかして全員隠蔽に協力してくれそう…? ポ男はポ次第ではサクッと裏切りそうだがルナのポの出来は間違いなく裏切らないから大丈夫…? レス適当でよかったです適当によろしくお願いします
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