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裏方聖女は逃げ出した!~ブラック職場やめます!お洒落なカフェハウスの店長になったので、今更戻れと言われてももう遅い!  作者: 柚屋志宇
第3章 約束とカフェハウス

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37話 薬師の仕事を頑張った結果

「お金を稼ぎたいんです。製薬をやらせてください」


 私は薬屋の店主ローナさんにお願いをしました。


「お婆ちゃん、アリーは最近、背も少し伸びてるし、もう大丈夫だと思うよ。それに、アリーが作った回復薬(ポーション)は高く売れたんでしょう。作ってもらおうよ」


 ニーナも一緒にローナさんに頼んでくれました。


「そうだねぇ……」


 ローナさんは私をじいっと見ました。


「顔色は大分良くなったね。体の調子はどうなんだい?」

「調子良いです」

「そうかい……」


 ローナさんは考えるような顔をしながら言いました。


「正直、作ってもらえるとありがたいよ。今はポーションが良く売れてるからね。在庫はいくらあっても良い。足りないくらいだ」

「じゃあ……!」

「体の調子を見ながら、無理のない範囲でやるんだよ」

「はい!」

「この前、アリーが作ってくれた最高級のツベルギア・ポーションは薬瓶六本分で金貨六枚になった。薬瓶一本で金貨一枚だ」


 ローナさんがそう言うと、ニーナが驚いたような顔をしました。


「すごいじゃない。アリーにもっと給金を出してあげてよ!」

「もちろんそのつもりさ」


 ニーナにそう答えると、ローナさんは私に視線を向けました。


「普通のポーションの精製は一カ月の給金のうちだ。だが上級ポーションは別にしよう」


 思案気な顔をしながらローナさんは言いました。


「アリーが作った上級ポーションの売り上げは、材料費を引いて残った分の、半分は店の取り分、残りの半分はアリーの取り分とする。要は山分けだ。しばらくそれでやってみて、問題があればまた考えるってのはどうだい?」


(鍋一杯で金貨六枚。その半分なら金貨三枚くらいになるのよね)


 私は頭の中で計算をしました。


(二回製薬すればカフェ豆一袋と粉砕機が買えるわ。四十回やれば金貨百二十枚。ジルさんにお金も返せる)


「はい、それで良いです!」


 私が意気込んで返事をすると、ローナさんは頷きました。


「じゃあそれでやってみよう。……あんまり張り切りすぎないようにね。ちゃんと体の具合を確認しながらやるんだよ」



 ◆



 私はその日から製薬を始めました。


 工房で早速ツベルギア草を使って、神殿の回復薬と同じ濃さの回復薬を作りました。


「す、すごい!」

「見事なもんだね」


 私の製薬を見て、ニーナとローナさんは褒めてくれました。

 褒められて私の気分は上がりました。


 私はニーナに手伝ってもらい、精製した回復薬を硝子瓶に移しました。

 そして続けて、二回目の精製に取り掛かろうとすると、ローナさんが私に釘を刺しました。


「上級ポーションの製薬は一日一回にしておくんだ。あとは普通のポーションの製薬だ」

「まだやれます」

「様子を見ながらと言っただろう。上級ポーションは一日一回以上は駄目だ」


 ローナさんは私にそう言うと、ニーナを振り向いて言いました。


「ニーナ、私は店に戻るから。アリーが無茶しないように見張っておくんだよ」

「解った」



 ◆



 ローナさんが店に戻った後、私とニーナは工房で仕事をしました。

 私は普通のポーションの製薬、ニーナは調薬です。


 普通のポーションは、薬草園の貴族巫女くらいの魔力量で作れるので簡単です。


「アリー、もうそのくらいで良いよ」


 ですが五回目の製薬を終えると、今度はニーナが私を止めました。


「ポーションの在庫はいくらあっても良いんじゃないの?」

「多めにあったほうが良いのはたしかだけど。さすがにもう充分だと思うよ。それに薬草の在庫がなくなっちゃうよ」


 ニーナは小さく肩をすぼめました。


「薬草がなくなったら、明日、上級ポーションが作れないよ」

「……!」

「今年は薬草が不作だからね。いつでも買えるってわけでもないから」



 ◆



 その日から、私は毎日、鍋一杯分の上級ポーションの精製を行いました。

 薬草の在庫を確認しながら通常ポーションも精製しました。


(畑があれば、私が薬草を育てるのに……)


 ローナさんの薬屋の建物は商店街にあり、畑どころか庭もありません。


「ねえ、ニーナ、鉢植えで薬草を育てられないかな」

「育てられないこともないと思うけど……。鉢植えって、畑で育てるほど大きくならないよ」

「そうなの?」

「私も香草(ハーブ)が欲しくて鉢植えで育てたことあるけど、あんまり育たなかった。育てる手間を考えたら市場で買ったほうが効率良いよ」


(でも私はたくさん光魔法を注げるし、癒しの魔術も使えるから……)


 私は神殿の薬草園で、薬草を大きく育てた経験と自信がありました。

 私が光魔法を注いだ薬草は、大きくなり、葉の数も増えて、収穫量が倍増しました。


「鉢植えで薬草を育ててみたい」

「アリーがやりたいなら、やってみても良いけど」


 私は仕事の合間に、ニーナに付き合ってもらってツベルギア草の種と肥料を買いに行きました。

 そしてニーナが以前に香草を育てるために使っていたという植木鉢を借りて、ツベルギア草の種を蒔きました。


(光魔法をたっぷり注ごう。大きく育つといいな)


 私は自分の部屋の窓辺の日当たりの良い場所に台を置いて、ツベルギア草の種を蒔いた植木鉢を並べました。



 ◆



「大きくなりすぎでしょおぉ!」


 私が植木鉢に蒔いたツベルギア草の種はすぐに芽吹き、そして短期間で大きく育ちました。


 私はツベルギア草に関しては知識がないので、これで収穫して良いものか迷い、ニーナに見てもらうことにしました。


 ニーナは、私の部屋のツベルギア草の鉢植えたちを見て叫びました。


「ツベルギア草のお化けだわ! アリー、とんでもない怪物(モンスター)を育てたわね!」


 鉢植えにしたツベルギア草は、ギザギザの葉をわさわさと伸ばして、大きく広げていました。


 製薬に使っているツベルギア草の葉の三倍は大きく、厚みがあり、そして長く伸びています。


「光魔法をたくさん注いだら大きくなったんだ」


 私がそう言うと、ニーナは吃驚顔のままで私に質問しました。

 

「どれだけ注いだの?!」

「たっぷり注いだよ」


 神殿の薬草園にいた頃は、いくつもの畑に光魔法を注いでいましたからね。

 数個の鉢植えに光魔法をたっぷり注ぐくらいはラクチンです。


 ラクチンなので、朝夕の二回、光魔法を注いでしまいました。

 ついでに元気が出るように癒しの魔術も。


「……さ、さすがはアレキサンドライト様……。規格外の魔力だわ……」


 ニーナは大きく育ったツベルギア草を凝視したまま、独り言のようにそう呟きました。


「ねえ、ニーナ、収穫しても良いと思う?」

「う、うん。刈り取って良いんじゃないかな。根っこを残せば来年も生えてくるはず」


 私は部屋で育てたツベルギア草の葉を刈り取りました。

 そして束にしてまとめると、ローナさんに見せました。


「……なんてこったい……!」


 ローナさんは私が育てたツベルギア草を見ると、目を丸くしました。


「ローナさん、これで材料費は浮くでしょうか?」


 私がそう尋ねると、ローナさんはかくかくと頷きました。


「あ、ああ……。そうだね……」

「植木鉢と日当たりの良い場所さえあれば、もっと育てられます」

「……働きすぎじゃないのかい?」

「このくらい平気です」

「これだけのものを育てたんだ。光魔法をたくさん使っただろう?」

「いいえ、大して使っていません」

「……」


 ローナさんは私に疑惑の眼差しを向けながら言いました。


「アリーはまだ体が成長していないだろう。大人しく養生していれば年相応の体に成長するかもしれない。ここでまた魔力を使い過ぎたら、伸び始めた背丈もまた止まっちまうかもしれない」

「……!」

「もうしばらくは大人しくして、自分の体の調子を観察するんだ。アリーが製薬してくれるだけで、こっちは充分、元は取れてるからね。今はまだ無理はしないことだ」

「はい……」


(身長は伸びて欲しいわ……)


 ローナさんに忠告されて、私は魔力を使うことを控えることにしました。


 ですが事態はすでに周囲に影響を及ぼしていました。

 私が知らないところで、私が作った上級ポーションに対する疑惑と悪意が膨らみ始めていました。

 その疑惑と悪意はローナさんの薬屋に対して向けられることになりました。

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― 新着の感想 ―
カフェが飲みたいから頑張って働いてるけど、そんなに目立つ事して大丈夫なのか? 悪意…いざとなれば眠らせてしまえばいい‥のか? ただ、探されてるのを知らないにしてももう少し自重して欲しい。 店に置いてく…
悪意が来てもおばあちゃんがあっさりと… なんか普通に売らないって言うだけで勝てる気がする。盗られるとしたら薬草かな?? お金欲しいは気持ち分かる笑 美味しいもの飲み食いしたいよね。
食う者と食われる者。 ここはすべての悪徳が集う暴力の都。 むせる嫉妬と悪意が危機を呼ぶ。 ルネが飲む、王都のカフェは苦い。
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