9.ユリアンナ姫の残虐行為
やっと物語が動き出します、やっと〜
フィーアがミリアル王国に潜入している同時期。
ミリアル王国から遠く離れた最強国家、バルザード国では
「ミリアル王国に違法薬物のルートがある可能性が高い。王として、私自ら潜入する」
竜人族の王、ファブレムは、宰相となった元アルセリア国王ルヒトーと、騎士団長となった元アルセリア国皇子タイルの前でそう告げた。
「しかし、ファブレム様!王自らが…!」
タイルは反対した。
「番の気配が、ミリアルの地で強く感じられるのだ」
ファブレムは血のような赤い瞳を輝かせた。
アルセリア王国の城が爆発したあの日以来、ファブレムはずっと弱々しい番の気配を感じていたが、ミリアル王国へと使節団を派遣する準備を始めた頃から、その気配が急に強くなった気がするのだ。
「しかし王...」
ルヒトーが静かに言った。彼は、妻と娘を亡くした悲しみを胸に、ファブレムの宰相として冷静に国を支えていた。
「では、私も使節団の団員として変装して同行します。人族である私は、顔が知られたファブレム様より潜入に適しています。それに王の業務を疎かになるのは...」
タイルは妹の行方を諦めていたが、母と同じ女神の力を受け継ぐ者が、もし生きているなら、その気配もあるのではないかと感じていた。
こうして、バルザード王国からミリアル王国への使節団は、王であるファブレムと、元王子のタイル、そして数名の竜人によって極秘に編成された。彼らの目的は、違法薬物の調査と、弱々しい番の生命を探すことだった。
日差しが眩しく太陽が照りつけるその日。
ミリアル王国に世界最強国、バルザード国から使節団が来ると情報が入る。
「マリア聞いた?バルザード王国からすっごくイケメンな使節団の団員が来るらしいよ!なんでも、どっかの貴族らしいよ」
キラキラとした目で話しかける少女はおさげ髪のミル。2ヶ月前王女様付きになった侍女の1人でフィーアを信頼している。おっちょこちょいでよくミスをするがその度にフィーア(マリア)が庇っているため、こうして引っ付かれているのである。
「そう...なんで来るのか聞いてる?」
「なんでも、貿易がどうちゃら?とか…衛兵の人達がちょこっと話してたの聞いちゃった」
「へぇ…」
マリアことフィーアはなるほど、と納得する。バルザード王国は資源、食材、全てにおいて豊富で他国との貿易も盛んであるため現状困っていないはずである。
では何故わざわざ?
大方、フィーアが調査している例のもののことだろう。ミスリル王国から出荷、それに貴族がかかわっていることに気づいたのはないか、と。
マリアにとってその情報は全て手に入れているため興味がなかった。使節団は王が対応するだろうし、フィーアが会うこともないだろうと。
しかし。
バンッとフィーアとミルが掃除していた部屋に侍女長が入ってくる。
「マリア、ミル、聞いてちょうだい。」
神妙な顔で侍女長であるリルムは言う。
「王女様がバルザード王国の使者の方達を接待するそうよ。なんでも、王女様自ら王様に頼み込んだらしいわ。それで王女様について欲しいわ、マリア。王女様からの希望よ。」
しんっと一瞬にして空気が凍る。他の侍女達も話すのをやめた。そうなるのも無理はない。バルザード王国といえば美丈夫で有名だ。王女様が会いたいに決まっている。
だが。もし仮にバルザード王国の使者が侍女に話しかけでもしたら。その侍女はどうなるのか分からない。
みんな分かっているのだ。ひとめみてみたい気持ちもあるがそれよりマリアンナの目が怖いと。
マリアが呼ばれたのは単に優秀だけだからではない。容姿がとびきり良い訳でもないからだ。
バルザード王国の者達は容姿が良くないと興味を持たないと聞く。それもあってフィーアを指名したのだろう。
「時間は2時間後だそうよ。あまり時間はないわ、直ぐに王女様と合流して準備をしてちょうだい。」
そう、リルムは言った。
「分かりました。」
そう答えるしかマリアに選択はなかった。




