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61.予兆
とある国で。
人族はついに一つの大国を打ち立てた。
その名は――
ラミレス王国。
神の加護を掲げ、光の騎士団を擁し、「人族こそが世界の正統な守護者である」と宣言した国家。
若き王は戴冠式でこう高らかに告げた。
「我らは闇を退ける光である!」
その言葉は、周辺諸国へも強く響いた。
一方――
竜人族の国、バルザード。
歴史を誇る古王国は、
新興国家の誕生を静かに見つめていた。
ルヒトーが問う。
「陛下。人族は勢力を拡大しています。警戒すべきでは?」
竜人族の王、ファブレムは
玉座に肘をつき、淡々と答えた。
「干渉する理由はない。」
その瞳は冷静だった。
「種族が己の国を築くのは自然の流れだ。
恐怖ゆえに先制するのは、王のすることではない。」
バルザードは――動かなかった。
侵攻もしない。
同盟も求めない。
ただ、静観。
それは余裕であり、誇りであり、
そして他種族への最低限の尊重でもあった。




