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55.苦悩


ファブレムの切実な願いを聞いたフィーアの心は、完全に開かれた。彼女は、王としての威厳ではなく、一人の男としての彼の魂を愛することを選んだ。



「ファブレム様……」



ファブレムは、微かに顔を曇らせたが、フィーアは決意の光を瞳に宿し、深く息を吸い込んだ。

「ごめんなさい。もう、逃げないわ」


フィーアは、ファブレムの力強い腕に抱きつき、彼の耳元で愛の誓いを囁いた。


「ファブレム」


その瞬間、ファブレムの全身の魔力が、嵐のような歓喜となって爆発した。長年、王の孤独を背負いながら、愛する番から対等な愛の言葉を待ち望んでいた王の魂が、完全に満たされたのだ。



「フィーア……!ああ、フィーア」



ファブレムは、喜びの咆哮にも似た声を上げ、フィーアを抱きしめた。彼の絶倫な体力と、純粋な幸福感から来る魔力は、フィーアの高感度の身体を、瞬く間に愛の炎で包み込んだ。


「これこそが、私にとっての真の至福だ、、フィーア、お前は私の全てを解放してくれた。」


敬語の壁が崩壊したその夜から、ファブレムとフィーアの愛の営みは、再び熱狂の頂点へと到達した。フィーアが「ファブレム」と名前を呼ぶたびに、王の愛は激しさを増し、二人は一週間、寝室から出てこなかった。



一週間後。

バルザード王宮では、ルヒトー宰相と騎士団長タイルが国政を完璧に維持していたが、王と王妃の愛の熱狂には、さすがに困惑していた。


「陛下と王妃が、また一週間も……。さすがに、王妃の体力が心配だ」


ルヒトーが、ため息をついた。


「フィーアの魔力は安定している。心配無用だ」



タイルは冷静だが、妹の激しい夫婦生活に、顔を赤らめていた。


ルヒトーは、王妃の体力回復のための食事を、ガゼルに運ばせることにした。ガゼルはフィーアの二番目の夫であり、給仕は最も適任だった。

ガゼルは、重い食事の盆を持って寝室の扉を開けた。


「フィーア、回復の食事を……」


寝室に一歩足を踏み入れた瞬間、ガゼルは強烈な魔力の熱に全身を打たれた。部屋には、ファブレムとフィーアの愛の残り香が充満しており、フィーアの銀色の髪と、愛に満たされた艶やかな肌が、ベッドの上で輝いていた。


ガゼルの狼族の番の本能が、即座に発情した。

「ああ……フィーア……。」


ガゼルは、理性が吹き飛び、食事の盆を床に落とすと、王妃のベッドに駆け寄ろうとした。

宰相の怒声と制裁しかし、その瞬間、扉の影からルヒトー宰相が飛び出してきた。


「ガゼル様!何をするのですか!」


ルヒトーは、娘の貞淑と王宮の秩序を守るため、宰相としての威厳を込めた怒声を上げた。




「ここは、王妃の療養の場です!陛下との愛の行為の直後に、二番目の夫が乱入するなど、王宮の恥です!理性を保ちなさい!」


ガゼルは、愛しい番とルヒトーの威厳に挟まれ、獣人の本能を必死に抑え込んだ。




「くっ……申し訳……ありません……」


フィーアは、ベッドの上で、腰に力が入らない状態だったが、その状況を面白がり、微笑んだ。


「ガゼルも、あなたも、本当に情熱的ね」


ファブレムは、ベッドの隣で、愛する番が自分に名前を呼んでくれたという最高の幸福に浸り、ガゼルの発情にも、ルヒトーの怒りにも、満面の笑顔で対処した。




「ハハハ!ルヒトー。気に病むな。ガゼルも、愛しい番への衝動は抑えられまい。だが、ガゼル。王妃の身体を壊すな。君は、三日後に改めて愛を注げばいい」



こうして、フィーアは二人の番からの愛と、家族の温かい秩序に包まれ、バルザード王国の王妃として、永遠の幸福を謳歌するのだった。

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