51.目覚めの光
光が満ちる静かな空間で、フィーアはゆっくりと瞼を開けた。
「……ここは?」
柔らかな寝具の感触。身体はまだ重いが、失われた魔力が少しずつ戻ってくるのを感じる。
傍らには、銀の髪を揺らしながら、穏やかな瞳で見守るファブレムの姿があった。
「フィーア。ようやく目を覚ましたか」
低く響く声とともに、ファブレムは彼女の額へ静かに口づけた。
「ファブレム様……世界は?」
「安心しろ。君の光が全てを浄化した。アトセプトの呪いも、魔族の王も消えた。
今、バルザードとアトセプトは、新しい調和の道を歩み始めている。
――それは、君の勇気がもたらした奇跡だ。我が愛しき王女よ」
その言葉に、フィーアの瞳が潤む。
そこへ、静かにドアが開き、ガゼル、コーラル、そして――タイルが入ってきた。
タイルの顔色はまだ青白いが、瞳は昔と同じ澄んだ青に戻っていた。
「フィーア……」
彼はゆっくりと近づき、深く頭を下げる。
「俺のせいで、お前に剣を向けてしまった。本当に、すまない」
フィーアは堪えきれず、ベッドから身を起こし、兄の手を取った。
「兄様……! 無事でよかった……!」
「謝るな。お前が守ってくれた。俺はもう迷わない。お前の兄として、生き直す」
その言葉に、フィーアは涙をこぼしながら微笑んだ。
長い悲劇の連鎖は、ようやく終わったのだ。
感動の再会の後、ガゼルが静かに歩み出た。
コーラルとタイル、そしてファブレムは気を利かせ、部屋の隅に下がる。
残されたのは、二人だけ。
「フィーア……」
ガゼルの低い声が、静寂を破った。
「戦いの前、俺はお前に言った。『愛している。俺の番になってくれ』と。
あの時、お前は答えをくれなかった。
――今、聞かせてくれ。俺の愛に、応えてくれるか?」
フィーアは彼の手を取り、自分の頬に寄せた。
あたたかい手。血と涙を分け合った手。
その温もりに、彼女の胸が満たされていく。
「ガゼル……」
フィーアは小さく笑い、彼の耳元で囁いた。
「私の答えは、もう決まってるわ。
これからは、番として――ずっと一緒にいてほしいの」
ガゼルの頬が赤く染まり、瞳が震えた。
「……ああ、フィーア。必ずだ。俺は一生、お前を守る」
フィーアは嬉しそうに微笑み、そっと彼の胸に顔を埋めた。
その姿を見て、ファブレムは静かに微笑む。
王として、愛する者の幸福を祝福する――そんな、穏やかな微笑だった。
こうして、戦いに終止符が打たれた世界に、
光と愛が戻った。




