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39.ミーラ


バルザード王宮での生活が続き、フィーアの存在は銀髪の女神として、王宮全体に安定と安寧をもたらしていた。


しかし、王宮騎士団、特に黒鱗騎士団では、依然としてある問題が燻っていた。それは、人族であるタイルが、純血の竜人を差し置いて騎士団長の地位にいることだ。


赤い髪に金の瞳を持つ美貌の竜人、ミーラ(身長171cm、部隊副隊長)の不満は爆発寸前だった。

彼女の苛立ちの根本は、タイルが自分の『番』であるにもかかわらず、その運命を認められない竜人のプライドにあった。


(なぜ、人族の男なんかが騎士団長なのよ!しかも、私の番……絶対に認めない!)


ミーラは、自分の感情を誤魔化すため、タイルの能力をことさらに批判していた。


ある日の午後、フィーアが庭園で、回復した魔力の安定化のために、水魔法を使って花に水をやっていると、タイルが公務の合間にやってきた。


「フィーア、具合はどうだ?無理をするな」


タイルは、妹の銀色の髪を優しく撫でた。フィーアは、茶色の魔道具を外した後、家族や親しい仲間の前では素顔でいることが多かった。


フィーアは微笑んだ。「ありがとう、タイル兄様。もう大丈夫よ。この通り、魔力の制御も完璧にできるようになったの。」


二人が和やかに話している様子を、訓練場に向かう途中のミーラが目撃した。彼女の嫉妬は、フィーアの神々しい美しさと、タイルがフィーアに触れている親密さによって、一気に燃え上がった。


(あの女!王の『番』になったくせに、今度はタイルの恋人の座まで奪うつもり!?二股どころじゃないわ!人族の男を弄んでいるのね!)


ミーラの誤解は、フィーアの美しさと、男女比3対1の世界での競争本能により、極端な方向へ暴走した。


ミーラは、二人の間に割って入った。


「タイ、ル、団長!」

ミーラは、フィーアを無視し、タイルに鋭い視線を向けた。


「ミーラか。どうした、そんなに息を荒げて」タイルは冷静だ。


ミーラは、銀髪のフィーアを指差して激昂した。「その女との関係を言え!貴様は王の番を誘惑しているのか!それとも、私が王の番だという噂は嘘か!?まさか、この女こそ、貴様の真の番だというのか!」


フィーアは、突然の剣幕に目を丸くした。「えっ……私は……」


ミーラは、フィーアの言葉を遮った。「黙れ!銀髪の女!貴様は王だけでなく、私の番まで奪うつもりか!潔く勝負しろ!」


「勝負って……」フィーアは困惑した。


タイルは額を押さえた。「待て、ミーラ。落ち着け。フィーアは私の……」


「言い訳は聞かん!タイル!私と決闘しろ!お前が私に勝てば、私はお前が選んだフィーアを認めてやる!負ければ、貴様は騎士団長を辞任し、私の番として私に尽くせ!」



タイルは、呆れ顔でため息をついた。「本当にしょうがないな。分かった。」


場所を訓練場に移し、タイルは剣を取り、ミーラと対峙した。


ミーラは、嫉妬と怒りの感情に任せて、強力な竜人の魔力と剣技を解き放った。しかし、タイルの剣は、その激しい感情を全て受け流し、完璧な冷静さでカウンターを決めた。


カキン!


タイルは、一瞬でミーラの剣を叩き落とし、彼女の心臓の前に剣を静かに突きつけた。


「負けを認めろ、ミーラ。君の剣は強い。だが、感情に支配されすぎている」


剣を突きつけられ、冷静で、圧倒的な実力を見せつけられた瞬間、ミーラの頭の中で、「この男は、私の番として完璧だ」という、理屈を超えた確信が響いた。


(何なのよ、この人!剣を持たせたら、こんなにも冷静で、カッコいいなんて!)


ミーラは、その場で剣を投げ捨て、タイルに飛びついた。


「ずるいぞ、タイル!こんなにかっこいいなんて!もういい!認めるわ!好きよ!私の番になって!」


タイルは、苦笑しながら彼女を受け止めた。「ああ。君は本当に単純で、扱いやすいな」


その言葉に、ミーラは頬を膨らませたが、タイルの口づけに、すぐに不満を忘れた。



後日。ミーラは、王の離宮で、フィーアに正式に謝罪した。


「フィーア様……本当に申し訳ございませんでした。あなたがタイルの大切な妹様だと知らず、大変失礼な振る舞いを……」


フィーアは微笑んだ。「大丈夫よ、ミーラ。タイル兄様が、あなたに愛されていると分かって、私は嬉しいわ」



ミーラは、銀髪のフィーアの優しさに触れ、完全に心を開いた。彼女は、王妃候補としてフィーアを全力で支援することを誓い、最強の姉妹としての絆が生まれた。


王宮での日常は、ファブレムとフィーアの深い愛情、ルヒトーとタイルの家族の絆、ガゼルとコーラルの知的な協力、そして、ミーラの単純で情熱的な愛が加わり、さらにほのぼのとしたものとなった。


フィーアは、愛する王と、家族、そして信頼できる仲間たちに囲まれ、アトセプト国との戦いに向けて、着実に力を蓄えていた。

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