序章
“蒼天に舞う翼”も併せてよろしくお願いします。
1913年8月18日
上空で入り乱れる戦闘飛行艇の群。
片方の戦闘艇の国際記章には、赤地に星。
そして、もう片方は太陽をモチーフにしている。
その戦闘空域に入ろうとしているもう一つの群れ。
国際記章は太陽。
その中の一機に搭乗している飛行兵が機外に手を出し、僚機へ指示を飛ばしている。
群れが戦闘空域へ入ろうとした時だった。
何故か一機の戦闘艇が編隊を外れ、もと来た空を逃げるように戻っていく。
それに気付いた先程の戦闘艇が逃げ出した戦闘艇を追い掛ける。
横に着いた飛行兵が手信号で戻るよう伝えても、一向にその気配は無い。
そして、翼を翻した戦闘艇は“逃亡機”の真後ろに付く。
そして、銃撃。
“逃亡機”は黒煙を引き海原へ墜ちて行くが、途中で白い傘が空に開く。
銃撃した戦闘艇はそのまま編隊に戻り、戦闘空域へと突入していく。
一機減ったところで戦闘に差し障りなど無いという事だろう。
空戦の結果は太陽の国際記章−倭国軍−の勝利。
「佐々木飛行少尉、貴様は編隊長撃墜の罪に問われている。いますぐ軍法会議へ出席せよ」
「了解いたしました」
彼の名前は佐々木信也。
倭国海軍飛行少尉。
弱冠、21歳で小隊長の地位へ昇り上がった鬼才だ。