魔王の策(ある姫様の場合)
まさか人間のアタシが魔王の策に乗るなんて。しかも、その目的が手に入れるべき剣と戦うためとはね……
奇妙な関係に困惑するも、取り敢えずは借り物の槍を無心で握り締める。
「オイ、集中しろ! 正面に見える壁だ!!」
ピシッ!
言われた通り。視界に映る壁の一部には大きな亀裂が!
「いいな……手筈通りだぞ!」
魔王はそう念をアタシへ押すと、魔力を溜めた掌を壁の亀裂へ向けて……
「焼き尽くせ!業火!!」
灼熱の火球を撃ち込む!
ボワワワワッッーーーー!!
当たり前のように激しく燃え上がる炎。ただ、こういった状況になると必然的に心配になるので……
「ねぇ、やり過ぎて天空城が火事になったりしないでしょうね?」
「大丈夫だ。一応の加減はしてある」
「加減って……本当に大丈夫なの?」
「信用しろ。たぶん大丈夫だ」
「たぶん!?」
無責任な返事をする魔王は、平気な顔で火球を撃ち続ける。すると、壁の景色が真っ赤に変わり果てた頃には……
『ギャガーーーー!!』
熱さに耐えかねた剣が、勢いよく壁から飛び出す!
「今だ!やれ!!」
「りょ、了解!!」
合図を受けたアタシは、こちらへ突っ込んで来る剣に対して渾身の槍を叩きつける……!?
「ぐっ! か、硬い!?」
身体中が痺れる程の硬さを不思議に思い、槍の先を確認すると?
「こ、これは!?」
何と剣は、何匹もの蛇を鎖の如く巻きつけて防御していたのだ!
「コ、コイツ……こんなことまでやれるのか!?」
相手の柔軟な思考に脅威を感じていた時だ!
「油断するな! すぐに反撃がくるぞ!!」
「ハッ!」
魔王の呼び掛け通り、一匹の黒い蛇が首に噛みつこうと襲いかかっていることに気づく!
「こ、このっ!」
咄嗟に槍で振り払って事なき得られるが、声をかけられなかったら間違いなく危なかった。なのでアタシは、せめてもの礼を……
「ありがとう魔王。おかげで助かっ……」
「そんなのはどうでもいい! さっさと槍を掲げるんだ!」
「え、え、こう?」
……する間もなく、反射的に槍を掲げてしまう!
「よし、それでいい! 轟け!雷鳴!!」
魔王の両掌から放たれる光が、槍の穂先を包み込む!
「雷の魔力を槍に宿した。これで剣に直接的のダメージが与えられるかも知れん!」
「なるほど。電流を使って剣を攻撃しようって訳ね」
魔王の意図を汲むアタシは、魔力が宿った槍で再び剣を攻撃を開始!
「てりゃあああーーーー!!」
バチィッッッーーーーーー!!
『…………!!』
破裂音と共に決まった一撃の手応えからは、巻きついた蛇を通り越して中身の刀身へ確実なダメージを与えてるのが伝わる!
「もう一発……でゃあああーーーー!!」
二度目の攻撃も見事に決まり、剣は自分を守っていた蛇の鎧を解いてフラフラと地面へ倒れる。
「はぁ、はぁ……これで大人しく……」
『大人しくなるとでも思ったかい?』
「こ、この頭に響く声!? アタシが“剣”を使って戦っていた時に聞いたのと同じ!!」
再び聞こえる声に心がざわつく。
『ギャギャ……そう警戒しなくても大丈夫だよ。さぁ、もう一度“ボク”を手に取って魔王を倒すんだ!』
「魔王を……倒す……? そうだ……アタシはそのため剣を欲していて……」
語りかける声はどこか怪しくて甘美。そしてそれは、自分が本来の遂げるべきだった目的を……思い出させる……




