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剣の守人  作者: なめなめ
剣の章
72/85

魔王の策(ある姫様の場合)

 まさか人間のアタシが魔王の策に乗るなんて。しかも、その目的が手に入れるべき剣と戦うためとはね……


 奇妙な関係に困惑するも、取り敢えずは借り物の槍を無心で握り締める。


「オイ、集中しろ! 正面に見える壁だ!!」


 ピシッ!

 言われた通り。視界に映る壁の一部には大きな亀裂(きれつ)が!


「いいな……手筈(てはず)通りだぞ!」


 魔王はそう念をアタシへ押すと、魔力を溜めた(てのひら)を壁の亀裂へ向けて……


「焼き尽くせ!業火!!」


 灼熱の火球を撃ち込む!


 ボワワワワッッーーーー!!


 当たり前のように激しく燃え上がる炎。ただ、こういった状況になると必然的に心配になるので……


「ねぇ、やり過ぎて天空城(ここ)が火事になったりしないでしょうね?」

「大丈夫だ。一応の加減はしてある」

「加減って……本当に大丈夫なの?」

「信用しろ。たぶん大丈夫だ」

「たぶん!?」


 無責任な返事をする魔王は、平気な顔で火球を撃ち続ける。すると、壁の景色が真っ赤に変わり果てた頃には……


『ギャガーーーー!!』


 熱さに耐えかねた剣が、勢いよく壁から飛び出す!


「今だ!やれ!!」

「りょ、了解!!」


 合図を受けたアタシは、こちらへ突っ込んで来る剣に対して渾身の槍を叩きつける……!?


「ぐっ! か、硬い!?」


 身体中が痺れる程の硬さを不思議に思い、槍の先を確認すると?


「こ、これは!?」


 何と剣は、何匹もの蛇を(くさり)の如く巻きつけて防御していたのだ!


「コ、コイツ……こんなことまでやれるのか!?」


 相手の柔軟な思考に脅威を感じていた時だ!


「油断するな! すぐに反撃がくるぞ!!」

「ハッ!」


 魔王の呼び掛け通り、一匹の黒い蛇が首に噛みつこうと襲いかかっていることに気づく!


「こ、このっ!」


 咄嗟に槍で振り払って事なき得られるが、声をかけられなかったら間違いなく危なかった。なのでアタシは、せめてもの礼を……


「ありがとう魔王。おかげで助かっ……」

「そんなのはどうでもいい! さっさと槍を(かか)げるんだ!」

「え、え、こう?」


 ……する間もなく、反射的に槍を掲げてしまう!


「よし、それでいい! 轟け!雷鳴!!」


 魔王の両掌から放たれる光が、槍の穂先(ほさき)を包み込む!


「雷の魔力を槍に宿した。これで(ヤツ)に直接的のダメージが与えられるかも知れん!」

「なるほど。電流を使って剣を攻撃しようって訳ね」


 魔王の意図を汲むアタシは、魔力が宿った槍で再び剣を攻撃を開始!


「てりゃあああーーーー!!」


 バチィッッッーーーーーー!!

『…………!!』


 破裂音と共に決まった一撃の手応えからは、巻きついた蛇を通り越して中身の刀身へ確実なダメージを与えてるのが伝わる!


「もう一発……でゃあああーーーー!!」


 二度目の攻撃も見事に決まり、剣は自分を守っていた蛇の鎧を解いてフラフラと地面へ倒れる。


「はぁ、はぁ……これで大人しく……」

『大人しくなるとでも思ったかい?』

「こ、この頭に響く声!? アタシが“剣”を使って戦っていた時に聞いたのと同じ!!」


 再び聞こえる声に心がざわつく。


『ギャギャ……そう警戒しなくても大丈夫だよ。さぁ、もう一度“ボク”を手に取って魔王を倒すんだ!』

「魔王を……倒す……? そうだ……アタシはそのため剣を欲していて……」


 語りかける声はどこか怪しくて甘美(かんび)。そしてそれは、自分が本来の遂げるべきだった目的を……思い出させる……

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