背中合わせ(魔王の場合)
「こ、このバカが……何をやっているんだお前は!?」
「はぁ? あなたこそ邪魔なのよ! さっさと、どかないから受け身を取り損ねたじゃない!!」
私と侵入者の彼女が互いに罵り合うなか、剣はその鋭い切っ先を向ける……
「ちっ、つまらん喧嘩はあとだ! 今はあの剣をどうにかするぞ!」
「そうね。あなたの提案通りに尻尾を巻いて逃げるにしても、あれを何とかしない限りは背中から“グサッ”ってやられかねないわ」
「……どうでもいいが、『尻尾を巻いて』という表現はやめてくれないか?」
そんな間の抜けた会話を交わしてる最中にも関わらず、剣は猛スピードでこちらへ突っ込んで来る!
「また来るぞ!」
「わかってる!」
「あのおかしな蛇にも気をつけろ!」
「そっちこそね!」
互いに注意喚起し合ってから、それぞれに剣の攻撃を躱す!
『ギャギッ!?』
すると躱された剣は、勢いのままに大理石の壁へ突き刺さる……かと思いきや?
ガリュガリュガリューーーー!!
「な、何よあれ! ドリルみたいに回転して、どんどん壁にめり込んでるんだけど!?」
めり込む? いや、あれは……
「違う!潜ってるんだ! ヤツは壁の中に潜り込もうとしているんだ!!」
「潜る!?」
言葉通りに壁の中へ潜り込んでいく剣。その数秒後には……
「ねぇ、完全に姿が見えなくなったんだけど?」
「しっ! 黙ってろ!」
ズガガ……
壁の中から僅かに聞こえる掘削音。それが意味することはおそらく……
「気をつけろ! ヤツは壁の中を移動してるぞ!」
「え、それってどういう……」
「ヤツがどこから飛び出して来るかわからないから、警戒しろってことだ!!」
「ええ!?」
驚く彼女に忠告しつつ、私達は背中合わせになって広間全体を見張る!
ズガガガガ……ガッ!
「今の音は!?」
「ああ、お前の正面の壁で止まった。気を引き締めろ!」
今にも飛び出すかもとする剣に備える……っが、ここではあることを思い出す。
「そういえば、お前……丸腰のままじゃないのか?」
「そうよ。アタシが持参した剣は、アンタに折られちゃったから……」
「ちっ、仕方ない。これを使え」
私は自分が使っている槍を彼女へ手渡す。
「かつて、地上の全てを蹂躙し尽くそうとした者が使った槍だ。人間のお前に託すのは勿体ないが、この際やむ得ん」
言われて受け取った彼女は、少し複雑そうな表情で……
「色々と言いたいことはあるけど……取り敢えず感謝はするわ。けど、あなたの方は大丈夫なの?」
「問題ない。この魔王紋の力さえあれば、私は無尽蔵に魔法が使えるからな」
まぁ、その魔法があの剣に対してどこまで通じるかは未知数だが……
「ところで本気であの剣を倒すつもりなら、今度は私の策に乗ってみる気はないか?」
「アナタの策?」
「ヤツが再び姿を表す時、今までと同様に猛スピードでこちらへ向かって飛んで来るはずだ」
「それはだいたい想像してる……っで?」
「その瞬間を狙って、私が強力な魔法をヤツへ叩き込む。だから……」
「アタシがその隙を狙って、この槍で攻撃を……ってこと?」
「そういうことだ。さっきのお前が考えた作戦と同じで単純な策ではあるが、やり方としてはそれが一番成功率が高い気がする」
まぁ仮に複雑な策を立てたとしても、付け焼き刃で上手くいくとは限らんしな。
「……了解したわ。それじゃ、お互いにがんばりましょ!」
「ああ、健闘を祈る」
こうして反撃の準備が整った私達は、剣が姿を表すのを今か今かと待ち構える。




