声(ある姫様の場合)
「やあぁぁぁーーーー!!」
剣を手にした途端、魔王は今までとは明らかに違う鬼気迫る勢いで、アタシの喉、胸、腹を確実に貫こうと槍を繰り出す!
「は、早い!」
そのあまりのスピードに気後れするも、身体の方が無意識に反応してくれるおかげで全ての攻撃を受け流す!
「よし、いける!」
まるで自分の身体じゃないみたいに洗練された動きに調子づくアタシは、攻撃の終わりを狙って魔王の顔面へ容赦なく拳を打ち込む!
「そこだ!」
「がはっ!」
クリーンヒットが決まってヨロヨロと後退する魔王を見て、さらに追撃しようと頭上から手に入れたばかりの剣を両手に持ち替えて振り下ろす……っが、残念ながらこの攻撃は間一髪で相手の槍によって防がれる!
「こ、こんなもの……!」
ただ早い決着を望むアタシは、そのまま防がれた剣に力を込めて強引に押し込んで圧力をかける!!
「ぐ、ぐぐ……何だ、この力は……?」
攻められる魔王が徐々に体勢を屈し、ついには片膝を着くまでに追い詰める!
「魔王よ……これで終わりに……」
勝利まであと一歩。そう考えた直後、防戦一方だった魔王が突如息を吹き返す!
「しまっ……!」
「うおぉぉぉーーーー!!」
勢いのまま押し返されると、先程のお返しとばかりに槍の柄で顔面を殴られて……ゴスッ!
鈍い音がしたが、それは自らが額を突き出して攻撃を受け止めたものだ。
「ちっ、距離を詰めて威力を殺したか!」
反撃をやりそこねた魔王は、その場から四、五回のトンボを切って距離を取る。
「一旦、仕切り直しか?」
なんてホッとしたのも束の間!
「甘い!」
魔王は間を置くことなく、一気に距離を詰める!
「嘘っ!?」
慌てて剣を構え直すも、それよりも早く槍の先がアタシの心臓へ伸びる!!
ダ、ダメだ! ま、間に合わな……!
『左に避けるんだよ』
「え!?」
突然頭の中に響いた不可思議な声に従い、左へ避ける!
ブォン!!
直後、槍の一撃はアタシの心臓があった場所の空間を貫く。
「今のは……一体……?」
謎の声に当惑していると、またもや!
『そんなに怖がらなくていい。ボクはキミの味方さ……邪悪な魔王を倒すべき心強い味方だよ』
「味方?」
アタシは声に耳を傾ける。
『そうさ。さぁ、勝利のためにその剣を構えるんだ。そして、素敵な未来を勝ち取ろう!』
「素敵な……未来……」
それは、あの日あの人がアタシに言った……
「――――素敵な未来……」
『そうさ。そのためにも魔王を倒すんだ!』
「魔王を……倒す……魔王を……ハッ!」
一瞬深い夢の中に陥りそうになったが、頭を振って無理矢理に意識を覚醒させる!
「な、何、今の感覚は? まるで自分の意思が何かに持っていかれるような?」
声はさらに続く。
『魔王を倒すんだ。そうすれば、素敵な未来はキミのモノになる!』
魔王を倒すか……まぁ、この際声の主が誰なのかはどうでもいい。今やるべきことはたった一つ。
「……ええ、もちろん倒すわよ。素敵な未来を手に入れるためにね!!」




