役目(ある姫様の場合)
「この城が魔王軍からの奇襲を受けてるですって!?」
デッドスケルトンとの一戦が片付いた後、お父様から告げられる事実にアタシは驚愕する!
「うむ……どうやら我々の剣へ対する動きが魔王軍に察知されていたらしく、それを阻止せんがために秘密裏に城下へ魔物を潜伏させていたようなのだ」
「そ、そんな……じゃあ、例の砦が落とされたのは……?」
「おそらくは囮だろう。万が一にもこちらの作戦を悟らせぬための……な」
「くっ、まさか魔王軍がそんな絡め手を使ってくるなんて!」
出し抜かれた腹立たしさから、アタシは近くの壁を拳で殴りつける!
「……それともう一つだが、この城は長くは持たない」
「ええ!? それなら早くみんなで撤退を……!」
しかし、この悲観的な提案にお父様は首を左右に振って答える。
「いや、諦めるにはまだ早い!」
「え?」
「お前は急いで羽人殿と四天殿を連れて、地下にあるゲートから剣を手に入れにいくんだ!」
「そ、そんなの無茶に決まってるわ! それに、例え剣を手に入れたとしても、そこまで劇的に現状が変えられるなんて到底思えないわ!」
この否定的な意見に、お父様は一片の迷いもなく反論する!
「変えられる!!」
「!?」
「剣に魔王を倒せる力がある以上、そうなる可能性は十分にあるはずだ!!」
「か、可能性って……」
「正直、ワシ自身だってとんでもない無茶を言っているのは自覚しておるつもりだ……っが、今はそんな無茶に縋るしか我々には道がないんだ!!」
縋る……そうか、父も追い詰められているんだ。
「ただな、もし許されるなら……」
「え?」
「……許されるなら、愛する娘のお前だけでも逃げて欲しい。そして、危険とは無縁などこか安全な場所で幸せに暮らして欲しい……」
静かに語る父の想い。それが本心からであることはひしひしと伝わる……だけど!
「なぁ娘よ? いっそ、本当に……」
ダ、ダメだ。これ以上、王である父に言わせてはいけない!
「やります!」
「な……に……?」
人には役目がある。
「この国を……人類を救うため、アタシはゲートへ向かい、剣を手に入れます!!」
「…………!!」
父には王としての役目がある。
「ほんのちょっと……ほんのちょっとだけでいいから待っていてください。必ず……必ずや剣を持って帰りますから!」
そして、アタシにはアタシの役目がある。そう理解すると、さっそく踵を返してゲートへ向うとするが……?
「待て! ゲートへ向かう前に、これをあの二人に渡してくれないか」
手渡されたものは、少し厚めの封筒と十センチ四方くらいある小箱だ。
「これは?」
「封筒は羽人殿に、箱は四天殿だ。“先払い”とでも言って渡せばそれで通じるはずだ」
「先払い? よくわからないど、とにかく渡しておくわ!」
「頼んだぞ」
「ハイ。では、いってきます」
「……気をつけてな」
会話を終えたアタシは、今度こそゲートへ向かう!
――――途中、中庭付近で合流した羽人と四天には、今からゲートへ向かう旨を簡潔に伝える。急な予定変更には多少の戸惑いを見せていたものの、状況を鑑みてすんなりと了承してくれた。
「急ぎましょう! オジサマ、オネエサマ、事態は一刻を争います!」
「おう!」
「ぞえ!」
アタシ達は速やかにゲートへ向かう。人類の……みんなの“素敵な未来”を守るために!!
これにて第二章が終了です! 次回からは第三章をお楽しみ下さい!
ブクマ、評価、感想をいただけると嬉しく思います!




