報せ
いろいろな騒動が一旦落ち着くと、いよいよ王との本格的な謁見が始まる。尚、例の少女は既に王の隣へ戻っている。
「さて……多少のいざこざはあったものの、こうして其方達と接見が出来ることは嬉しく思う」
そんな王の仰々しい挨拶に対し、さっさく噛みつく者がいた。
「オイオイ? 言っておくが、オレは別にアンタみたいなオッサンと話をしても嬉しくないからな?」
羽人だ。少女からあれだけコケにされたにも関わらず、まだ悪態がつけるとは、ある意味でなかなかの強靭だといえよう。
だが、いきる相手は仮にも一国の王。よって……
「き、貴様……王の御前だぞ! その場をわきまえぬ口の利き方は何だ!?」
それを許さぬと憤るのは、大勢で規則正しく整列している騎士達の団長だった。
「あっ? 立派な椅子でふんぞり返るだけのヤツに、どんな口の利き方をしようとオレの勝手だろうが!?」
注意した上でのますます悪態。当然、団長は立腹し、こめかみにはハッキリと青筋を浮かび上がらせる!
「ぐぐぐ、度重なる愚弄……もはや許せん! 今すぐそこに直れ!我が剣の錆にしてくれるわ!!」
言うと同時に、腰の剣は迷いなく抜かれる。
「オイオイ? 王とやらの御前でずいぶんと物騒な真似をしてくれるじゃねぇか? あっ!?」
「黙れ! 貴様の薄汚い首。即刻切り落として、王への供物にしてくれるわ!!」
もはや“売り言葉に買い言葉”という範疇を越えていく様は、一種触発の修羅場へと変わろうとしたところで……
「お止めアンタ達! あれだけバカみたいに暴れ回ったというのに、まだ遊び足りてないぞえかい!?」
「「うっ!」」
子を一喝する母親の如き四天の叱責。それは彼等に気恥ずかしい想いをさせ、黙らせるには十分な説得力があった。
「ハハハ、さすがは四天殿だな。相変わらず手厳しい……」
「ぞえ? そもそも、アンタがなかなか話を進めないからこうなってるぞえよ?」
「う、うむ……そ、それは申し訳ない」
さらに、愚鈍な王へ釘を刺すことも忘れない。
「ゴ、ゴホン! で、ではすぐに本題に入らせてもらおう。皆が知っての通り、現在の人類は魔族からによる長年に渡る侵略行為によって未曾有の危機を迎えている」
「「…………」」
王の発言に押し黙る場内。
「そこで我々は、ヤツ等に対抗するにあたって、再びあの“策”にすがることにする!」
「策にすがる? ずいぶんと切羽詰まった言い方をするぞえね?」
四天は王の深刻そうな言い回しを問う。
「切羽詰まるか……それは否定はせん。実際、それ程までに今の状況は危ういからな」
悲観的、危機的な要素をひしひしと感じさせる王の発言。それは四天をはじめ、この場にいる全員が理解している。
「なぁ王様、その策ってのはどういったものを考えてるんだ?」
今度は羽人が問う。
「うむ……策というのは“剣”のことだ」
「剣? ちょい待ち、それってもしや!?」
ひょうひょうとする彼の目の色が一瞬にして変わる!
「うむ、それは……」
バターーーーンッ!!
『伝令ーーーーー!!!』
突如、場内に響き渡る報せに場の全員が注目!!
「はぁ、はぁ……」
現れたのは息も絶え絶えの若い騎士であり、全身にはおびただしい数の傷を負っていた!!
「な、何事だ……いや、それよりも何があった!?」
騎士団長が只事ではないと判断して駆け寄ろうとするが……
「早く、早くその者をここへ!!」
他ならぬ王は、必死の形相でその騎士を自分の元へ呼び寄せようとする!!
「は……はい……」
見るからに重傷である騎士は、団長に支えられてどうにか王の前で跪く……
「さぁ、早く其方の報告を聞かせてくれ!!」
そして、興奮気味に玉座から立ち上がる王からの関心を察し、余計な前置きを抜きにして速やかに本題へ。
「け、今朝方……のことです。魔王軍からの奇襲により、北と西……双方の砦が……」
「と、砦が……ど、どうした……というのだ?」
王の声は震えてる。
「陥落しました!」
「な、何だと!?」
告げられる絶望的な報せ。それはこの国が……いや、人類の滅亡がより間近に差し迫った現実を突きつけた!!




