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とある悪魔さんの最恐伝説(になるかも知れないお話)  作者: きすぎ あゆみ
悪魔さん、初めての召喚
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続きです。

宜しくお願い致します。

皆様に楽しんで頂けましたら幸いです。

 私が泊まっている宿≪レッグとマーサのかまど亭≫で何時もの様に朝食を摂り、簡単な探索者の依頼を受け余った時間は町の中を歩きながら買い食いをしたりして一日を過ごしました。夕方には宿に戻り、そしてまた今晩も美味しい夕食を頂きました。


 夜になると日課?である森へとやって来ましたが、今夜は何時もと少し様子が違います。


「…?…何やら騒がしいですね…」


 何と言えば良いのでしょう、森全体がざわついていると言えば良いのか何時もの静けさが何処かに行ってしまったみたいです。


「ご主人、何か、変、有る!」


 森に入ったばかりの浅い場所なのですが夜行性の野獣や魔獣が何やら興奮している様子です。森の浅い場所なので、普段は草食の小型の野獣や魔獣が多くそれ程驚異では有りませんが今夜は違いました。森に少し入った辺りを縄張りにしている中型の野獣や魔獣の気配や鳴き声が、森の浅い場所でもはっきりと解るくらいに感じられます。何かしらの異変なりが起こったのでしょうか?


「クンクン…これは血の臭いですね」


 私は森の中を駆け抜ける時には狼の姿か兎の獣人族のルブさんの姿に変わるのですが、今日は狼の姿で森の中に入る事にしたのですが、狼の姿に変わった途端に強い血の匂いに気付いたのです。


「クンクン…、そう、血、臭い、人族、若い、雌」


 流石は狼と言った所でしょうか。血の臭いを嗅いだだけでその血を流した種族や大体の年齢?と性別が解るとは…野生の勘では無いみたいです。


「人族の女の血の臭いですか…これだけの濃い血の臭いでしたら、血を流し過ぎてもう死んでいるかも知れませんね」


「…そう?かも?でも、知る、雌、臭い」


 その血の匂いに当てられてしまった森の野獣や魔獣が興奮している可能性も有りますが、それでも森に少し奥に入った所に住んでいる筈の中型の野獣や魔獣が森の浅い場所に居るのは解せませんね。


「知っている臭いですか?それは知り合いと言う意味ですか?」


「この、臭い、オレ、知る、ご主人、会った、有る」


 そう言うとキオさんは臭いのする方へと駆けて行きました。キオさんを一人?一匹?にしても問題は無いと思いますが、念のために私もその後を追って駆け出しました。


「私の会った事の有る人族の若い女ですか…会った事が有るだけなら沢山の人族と会っていますから心当たりが有り過ぎて、私の記憶に有る人物なのか解りませんね」


 しかしキオさんが向かっている場所に野獣や魔獣を引き付ける何かが有り、それがこの血の臭いなのかは解りません。それとも何かにこの場所まで連れられて来たのか又は追い立てられたのか…その何かを確認しない事には原因は解らないでしょう。


 私とキオさんで駆け出しましたがそれ程離れた場所では無かったので、直ぐに目的の場所に到着ししました。そこには野獣や魔獣が集まり何かを囲んでいます。匂いの元がその中心付近からしていますので、確認するためにはその輪の中に入らなければなりません。


「ご主人、あの中、入る!」


「ええ、解りました!」


 ですので私とキオさんは何の躊躇いも無く、その輪の中に入って行きます。私とキオさんは四本足で立っていても、人族の背丈ほどの大きさのとても大きな狼です。私が吸収している魔獣達の記憶では、これでも大型の狼種と比べると赤子程度みたいとの事なのですが…。狼とは一体どこまで大きな種類がいるのでしょうか?


 輪を作っていた野獣や魔獣達は森に少し入った辺りを縄張りにしていてある程度は強い者達なのですが、キオさん相手では全く歯が立たないみたいです。勢い良くキオさんが向かって来る姿を目にするなり、一目散に逃げ出してしまいました。


「ご主人、追い、払った、オレ、役に、たった?」


「キオさんありがとうございます。無駄な戦いが避けられたので助かりました」


 私が褒めるとキオさんは鼻を鳴らして、ご機嫌みたいですね。


 野獣や魔獣が輪を作っていたそこには若い男の姿をした人族が、木の根本に仰向けで倒れていました。そのお腹の部分には激しい裂傷が見られ、そこからは濃い赤い血が流れて地面を赤く染めています。赤い血の合間からは何か内蔵でしょうか?ピンク色っぽい物も見えています。


「見た目は人族の若い男ですね」


「でも、匂い、若い、雌」


 姿は若い男ですが先程キオさんは若い雌と言ったと記憶しています。雌と言う事は女と言う事になるのですが、姿は若い男です。女が若い男の姿をする事に何の意味が有るのでしょうか?謎ですね。…ですが、何か引っ掛かる、何か思い出せそうで思い出せないそんなモヤモヤした気持ちも有ります。


「いえ、キオさんの嗅覚を疑ってはいませんから、あくまでも見た目が男と言う事です」


「ご主人、解った」


 ですが、彼女の状況を見ると余りにも血を大量に流してしまっているからなのか顔色…いえ身体からも血の気が失せてしまい、青みががっています。私には断言は出来ませんが多分彼女はもう助からないでしょう。


「しかし、彼女はもう助かりそうに無いですね」


「雌、死ぬ?」


 私は彼女が助からないと言うと、直ぐ様吸収する事にしました。彼女はここで生を終えますが、彼女の記憶や経験は私の糧になる事でしょう。成人したての人族の女です、私と比べるとそれなりに知識や経験が有る筈ですのでそれを私が引き継ぐのです。


「今からでは何をしても手遅れでしょうね、それこそ大怪我を一瞬で治療出来る薬か魔法でも無ければ、このまま死を待つだけになりますね、それか一思いに死なせるかですね」


「ご主人、薬、無い?」


「流石に瀕死の大怪我を一瞬で治療出来る薬は持っていませんね」


「雌、残念」


 私は彼女に狼の前足を向けると一瞬で吸収しました。その時に私に彼女の記憶の一部が私に入って来たのですが、その時にキオさんが言っていた「知る、匂い」の意味が解りました。


 それは数日前の事です。探索者ギルドで依頼を探している時に、偶然にも同じ依頼書に手を伸ばした若い人族の男がいました。私が「レグナ」として人族の姿をしていますが、その姿と同じくらいの成人したての年齢です。私の背丈よりも握り拳二つ分は低く、赤い頭髪は短く刈られ、薄い緑の大きな瞳は意志の強さを表す様に少し釣り気味です。成人にしては幼く見えるので、パッと見では男か女かは解りません。しかし服装は男の物を身に付けて居ますし、胸の膨らみも無さそうですので男いえ少年なのでしょうか?と、その時の記憶が甦りました。


「ああ、あの時の彼が彼女だった訳ですね!」


「ご主人、会った、有る」


 しかし、人生…いえ生き物の生き死にとは解らない物ですね、つい先程まで元気だった者達が突然死んでしまう事も少なくは無いですし、その中には私達が死なしてしまった者達もいます。


「そうでしたね…確か…どこか切羽詰まった様な追い詰められて余裕の無さそうな感じでしたね」


「こいつ、生意気、した」


 彼女と会ったのは一度きりですが、探索者ギルドで会った時には追い詰められた様子でした。何故彼女がその様に追い詰められなければいけなかったのか、そして死ななければならなかったのか?


「けれど死んでしまったらそれまでですけどね…成る程…この人はエリアさんと言って、ジレアさんとシシリーさんの知り合いみたいですね」


「ジレア、シシリー、知り合い?」


 エリアさんはキオさんを特に構って可愛がってくれる二人の知り合い、いえ友人それとも幼馴染みと言った所でしょうか。


「そうですね少し彼女の記憶を探って見たのですが、ジレアさんとシシリーさんの幼い頃からの知り合いみたいですね…」


「ジレア、シシリー、知り合い、死んだ、悲しい?」


 二人の知り合いと言う事が解ると、キオさんも何処かしら悲しそうに見えます。


「そうでしょうね、成人したての若さで知り合いが死んでしまうとは、彼女達はとても悲しむでしょうね」


「ご主人、二人、悲しい、オレ、悲しい」


 キオさんも私同様人族の中で生活していく内に、少しずつ感情や考え方に影響を受けているのかも知れません。それが良い事なのかは今の段階では解りませんが、それが決して悪い影響だとはどうしても思えません。

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