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とある悪魔さんの最恐伝説(になるかも知れないお話)  作者: きすぎ あゆみ
悪魔さん、初めての召喚
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続きです。

宜しくお願い致します。

 リョークさんとポーリーさんを説得出来たのかは解りませんが、二人の背後から気配と足音を消したキオさんが近付いて来ています。二人とキオさんは初対面ですので、キオさんも一応は警戒しているのでしょう。キオさんは野生の勘それとも腹時計とでも言えば良いのか、時間に正確ですのでキオさんが私の所に戻って来たと言う事は、夜明けが近いと言う事なのでしょう。


「キオさん戻りましたか」


 私はキオさんの存在を二人に知らせるために、声に出して二人の後方に視線を向けます。


「えっ?」


「…!」


 二人は驚いて後ろを振り返りました。普通の狼でさえここまで接近され襲い掛かられてしまうとどちらか一人は助からないか、それとも大怪我を負ってしまう可能性が有るのですが、そこに居たのは人族の背丈程の大きさの白い狼です。


「…!」


「えっ?」


 自分達の背後に音も無く大きな狼が迫って居る事を知った時には、それはもう恐怖と絶望しか無いでしょう。


「ご主人、戻った、朝、なる」


 ですが、キオさんはそんな二人の人族の感情や内心など我感ぜずで、全く気にしていません。人族の町に居る時には鳴き声で答えるのですが、今は町の中では無いのでキオさんは人族の言葉で答えました。


「…なんて大きさだ…」


「狼が言葉を?」


 リョークさんとポーリーさんはさぞ驚いた事でしょう。まあ、謝罪はしませんが。突然背後に現れた大きな狼、しかもその狼が人族の言葉を話す事が出来る。人族で言う常識と言う物では理解が出来ないでしょうが、話すのは別としても大きな狼は実際にこの森に生息しているので、彼らが知らなかっただけなのでしょう。


「そうですね…リョークさんポーリーさん、あちらの白い狼は私の眷属のキオさんです。キオさんこちらの人族の男の方がリョークさんで、女の方がポーリーさんです」


 一応お互いを紹介した方が良いでしょうね。キオさんが二人を襲う事は無いと思いますが、一応念のためと言うのも必要でしょう。


 ですがリョークさんとポーリーさんは、驚きの余り固まってしまっています。しかし、キオさんはその様な事は気にしません、鼻をひくつかせ匂いを確認しているのでしょう、ゆっくりと二人に近付いて行きます。


 リョークさんとポーリーさんからすると、恐怖以外の何物でも無かったのかも知れませんがキオさんに匂いを覚えて貰わなければ、仲間とは認識して貰えないでしょう。キオさんは二人の回りを匂いを嗅ぎながら何度か回ると私の方を向きました。


「ご主人、クサイ、臭い、する」


 キオさんがそんな事を言いましたが、何の事なのでしょう?私の人族を模した身体もリョークさんもポーリーさんも、姿を具現化させてからそれ程時間は経過していませんし、暑く無いので汗もかいてはいません。


「可怪しいですね?私では気が付かない臭いですね」


 それなのにクサイとは?何故なのでしょう?


「ご主人、鼻が、ツーン、する、クサイ」


 何かが引っ掛かります。何と無くですが思い出せそうで思い出せない、そんなモヤモヤした感覚が妙に気持ち悪いですね。


「鼻にツーンと来るニオイですか?」


 私もキオさんの真似をして、鼻をひくつかせながらニオイを嗅いでみました。そうすると、やはり何かを思い出せそうで思い出せない、でも私に何か原因が有る様な不思議な感覚にとらわれます。


「ご主人、コレ、ウサギ、女、シッコ、お漏らし」


 そう言ってキオさんが顔を向けた先には、水溜まりの中に涙と涎と鼻水を流しながら踞るウサギの獣人族の若い女でした。あっ…そう言えばルブさんの存在をすっかり忘れていましたね…。


「…そうでした、貴女も具現化させていたのを忘れていました」


 リョークさんとポーリーさんの事に気を取られていて、完全に彼女の存在を忘れてしまっていました。若い女が色々と垂れ流している姿は、あまり人様にお見せ出来ませんが原因が私にも有りますので仕方が無い事でしょう。


「あんた、大丈夫か?」


「可哀想に、立てる?」


 リョークさんとポーリーさんが、ルブさんに駆け寄ります。二人もキオさんに恐怖していた筈なのですが、私の眷属と知ったので襲われる心配が無いと理解したのでしょう。 


 ウサギの天敵とも言える狼、それもとても大きな狼が目の前に居るのです。それで腰を抜かさないウサギの獣人族が居るのなら、会ってみたいですね。


 キオさんはと言うと、ルブさんの粗相の鼻を突くニオイが無理なのでしょう。ルブさんに近寄ろうともしませんし、今の状況から近付かない方が良いと理解しているのかも知れませんね。私には解りませんが…。


「…は…い…」


 ルブさんは恐怖からか何も考えられなくなっているのでしょう。言われるがままリョークさんとポーリーさんに両脇から支えて貰いながら立ち上がろうとしていますが、足に力が入らないのか上手く立ち上がる事が出来ません。


「ゆっくりで良いから」


「急がなくても大丈夫だがらね」


 ルブさんは二人に助けて貰いながら、何とか立ち上がる事が出来ました。しかし、目の焦点は合っていませんし、身体の震えも止まる事が有りません。あまりの恐怖で、精神的に参ってしまったのかも知れませんね。


 これは参りました。私が吸収した者達の中では身体能力だけで言うと、人族や獣人族の中では一番の存在でしたが争い事に向かない性格と種族なのが禍していたのですが、まさかこの様な形で弱点が露見してしまうとは…全くの予想外でした。


 二人に支えられて何とか立ち上がったルブさんですが、全身の震えとそして何よりも体毛も逆立ってしまっています。ここで彼女が戦力として使えなくなるのは、私に取っては大きな損失です。それでは彼女を立ち直らせる方法は?


 私は検証してみたかった事の一つを試してみる事にしました。


 リョークさんとポーリーさんがルブさんを介抱していますが、私の用事を優先させて貰いましょう。


「リョークさん、ポーリーさん、私に任せて下さい」


 私は自分の利益のためには、何でも出来る悪魔です。それがたとえ味方で有っても、騙したりする事に何の後ろめたさも有りません。ですから私のやろうとしている事は、優先させて貰います。


「あんたなら何とか出来るのか?」


「助けてあげて下さい」


 リョークさんとポーリーさんは優しい人族ですね。初対面の見ず知らずの赤の他人も何の躊躇いも無く助ける事が出来る所は、尊敬に値します。私の利益を損なわない範囲でしたらですけど…。


「ルブさん済みません、すっかり貴女の存在を忘れていました」


 私は三人に近付くと、ルブさんに優しく語りかけます。人族には詐欺師などと言った人を騙して金品を騙し取る職業?が有るそうですが、今の私はそれに近い存在なのかも知れませんね。


「ご主人…様…」


 目の焦点が合って無くどこか疲れた様に虚ろな表情ですが、私の声には反応が有ります。素早く私の用事を済ませてしまいましょう。


 私はルブさんに掌を向けると、彼女を吸収しました。


「……!」


「…何を?」


 それにはリョークさんとポーリーさんも驚いてしまいました。それはそうでしょう。目の前の人族が突然消えてしまったら、誰だって驚愕してしまうのが当然の反応でしょう。それがたとえ私が悪魔と解っている彼等で有ってもです。


「あんたは、何て事をするんだ!」


「いくら悪魔でも、仲間を消してしまうだなんて…」


 初めてこの状況を見てしまうと、そうなるでしょう。まるで私がルブさんを捕食してしまったかの様に…。


「ですので、こうします」


 ですので直ぐ様ルブさんを再度、具現化させます。つい先程まで彼女が立って居た場所に、再び彼女が現れました。


「ご主人様、ありがとうございます」


 色々と垂れ流していた物は全て無くなり、衣服も綺麗な状態に戻っています。キオさんに対する恐怖まで無くなってしまっていれば良いのですが…。


「人が消えて…」


「…また、現れた?」


 今度はリョークさんとポーリーさんが、再度固まってしまいました。何故か不思議と物事が上手く行きませんね。私には幸運とかツキとかには縁が無いのかも知れませんね。

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