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とある悪魔さんの最恐伝説(になるかも知れないお話)  作者: きすぎ あゆみ
悪魔さん、初めての召喚
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続きです。

宜しくお願い致します。

「ありがとうございます。取り敢えず状況は理解できました」


「どういたしまして?」


 私に起こった事ですので私自身のみが状況を理解したのですが、ルブさんからすると何の事なのか理解できなかったのでしょう、人族の一般的な美醜の基準で美人と称される部類の女の困り顔と言うのも、見ていて飽きないですね。


 さてそれよりも、今夜この森に来た目的を先に片付けてしまいましょう。


 若い村人夫婦の具現化させた肉体に、私の根源とも言える存在から取り外した魂を戻します。夫の肉体には夫の魂を、妻の肉体には妻とお腹に宿った小さな魂も戻す事にします。


 村人夫婦二人とお腹に宿った魂を具現化させます。二つの魂と小さな魂の三つが現れました。小さな魂は大きな二つの魂の周りを、グルグルと落ち着き無く回っています。未だ産まれて来てはいないのですが、二つの魂が自分を守ってくれる存在と言う事を認識しているのでしょうか?それとも二つの大きな魂の周りを回っても何もされないので、自分に取って無害な存在と思っているのでしょうか?


 まあ、それは私には余り関係は有りませんね。


 具現化した三つの魂は自然と自分達の居るべき場所、帰る所が解るのでしょうか?それぞれが、それぞれの肉体へと自然と向かって行き、そして肉体の中へと戻って行きます。胸の中心と言えば良いのか、鳩尾の上の辺りに魂が吸収される様に肉体へと入って行きます。小さな魂は、妻…母親のお腹の中へと入って行きました。


 青白く生気が感じられなかった肉体には少しずつ赤みが戻り、紫色に変色していた唇にも朱が指し始めました。濁って何も写す事が無かった瞳は、徐々に濁りが無くなり光を取り戻し、そして何よりも呼吸をし始めた事により胸の辺りも、一定の間隔で上下に動き出しました。


「……」


「……?」


 魂が身体に戻った事で意識を取り戻した二人でしたが、自分達の身体に一体何が起きたのか理解出来なかったのでしょう。


「ポーリー」


「リョーク」


 しばらく呆然と立ち尽くして居たのですが、自分自身そしてお互いの無事な姿を見た事で現実として受け入れられたのか、二人は抱き合ってお互いの無事を確め合っています。


「「でも俺(私)達は…盗賊に襲われて…」」


 しかし記憶を無くす直前、そしてその後に起こった事を思い出したのでしょう。一気に顔から血の気が引いていき顔色が蒼くなってしまいました。


「殺されて…」


「死んで…」


 その後は言葉を続ける事が出来なくなり、二人とも黙り込んでしまいました。


「あのーお取り込み中申し訳有りませんが、宜しいでしょうか?」


「えっ…!」


「はいっ?」


 私が声を掛けたのですが、私が声を掛けるまで私の存在に気が付いて居なかったみたいです。と言う事は、当然私の後ろに居るルブさんの存在にも気が付いて居ない事でしょう。


 二人は抱き合っていたのですが、夫リョークが妻のポーリーを庇う様に少し前に出て、私を警戒しています。数日前、盗賊に呆気なく殺された筈なのですが、リョークにはポーリーを守るだけの気概が未だに残っている様です。


 これは鍛えれば、私の役に立つかも知れませんね。そんな事を思うとつい顔がにやけてしまいますが、今はそんな顔を見せる訳にはいきませんので私も気を引き締めなければいけません。


「コホン。…何から話せば良いのか…」


 取り敢えず表情を繕うために二人に声を掛けてはみましたが、何を何処まで話せば良いのでしょうか?本当の事を話してしまっても、二人は信じてくれるのでしょうか?それとも頭のおかしい狂人として扱われるのでしょうか?


 ですが、私には彼等に対してこの世界に召喚して貰った事の恩義が有りますので、隠し事はしない方が良いのかも知れません。何処まで信じて貰えるのかは解りませんが、先ずは正直に話してみましょう。


「リョークさん、ポーリーさん先ず貴方達は何処まで覚えていらっしゃいますか?」


「…何処までとは?」


 リョークさんがポーリーさんを庇いながら、そして私を警戒しながらも私の話に耳を傾けてくれました。もしも相手にされなかったらと思っていたのですが、杞憂に終わり助かりました。


「そうですね…貴方方二人が盗賊に捕らえられてしまい、そして殺されてしまった事です」


「「………」」


 私が盗賊の件の話をすると二人は黙り込んでしまいました。しかし、リョークさんは怖い顔をして私を警戒したままで、ポーリーさんには指一本も触れさせないとその表情で語っています。


「…そっその…殺された筈の俺達が…何で生きているんだ…あんたが俺達を生き返らせたとでも言うの…か?」


 彼等も自分達に起こった事を、なんと無くですが覚えてはいるみたいです。しかし、本当に自分達が死んでしまったのかどうなのかは、確信が持てないのでしょう。


「そうだと言ったらどうしますか?」


 ですので、この質問の答えは一つしか有りませんし、事実私が彼等二人を生き返らせたも同然ですのでここは即答しました。別に誇る事でも有りませんし、事実を事実として言うだけの事です。


「「………」」


 事実を言ったつもりですが二人からの反応が有りません。もしかしたら私を誇大妄想の夢想者とでも思っているのでしょうか?これでは話が前に進みませんので、もう一度言った方が良いのでしょう?


「もう一度言いましょうか?私が貴方二人を生き返らせました!」


「「………」」


 二人からは相変わらず反応が有りません。常識では考えられない事なので事実を事実として受け止められないのか、それとも自分達の理解の範疇を越えてしまって理解が追い付かないのか、どうなのでしょうか?どちらもが正解の様に私には感じられます。


「…あ…の…。俺達を生き返らせたと言う事は…貴方は…貴方様は神様なのか…いや、ですか?…それとも…悪魔なのですか?」


 理解が追い付かないなりに、理解はしようとしているみたいですね。状況判断もそれなりに出来るみたいですし、使いようによっては化けるかも知れませんね。ですので、私も隠し事は無しで正直に話した方が良いでしょうね。初めから隠す気などは有りませんでしたが。


「そうですね、先ず私は貴方方人族で言うところの神と呼ばれる存在では有りません。はっきりと言いますが私は悪魔と呼ばれる存在になります」


 私がそう言った途端、リョークとポーリーからは激しい緊張感と凄まじい程の警戒感が感じられました。しかし彼等に何かをするつもりは有りませんし、今後彼等には私の手足となって働いて貰わねばなりません。ですので、真実を伝えて私を信用して貰わないといけませんが、果たして私の言う事を信じて貰えるのでしょうか?神のみぞ知ると言った所でしょうか?私には必要の無い存在では有りますが…。


「そして何よりも私と言う存在はポーリーさん、貴女が必要とした事でこの世界に召喚されたのです」


 先ずは一つずつ順を追って説明する事にしました。ですが彼等を騙すつもりは有りません、事実を説明するだけです。彼等をだます騙す様な事をして信用を失ってしまうと、信用を取り戻せなくなる可能性も有りますからね。


「…私がですか?」


 私をこの世界に召喚した者がポーリーさんだと告げたのですが、ポーリーさんにはそれが信じられないみたいです。これは少し手間取るかも知れません。今夜はただでさえ想定外の事態が有った事で時間に余裕が無いのですが、ここで時間を掛けてしまうと夜が明けてしまう可能性も有ります。


「そうです貴女は盗賊にリョークさんが殺され、そして自分も殺される事の絶望から悪魔に盗賊への復讐を願いませんでしたか?自分とリョークさんの魂と肉体を生け贄として!」


 一部表現を曖昧にしましたが思い出したく無い事を無理矢理思い出させる事も無いでしょう。いくら私が悪魔だからと言って、これから仲間になる予定の者を徹底的に絶望させて更に心を折ってしまう程鬼畜では有りません。


 私は最下級の悪魔ですが、悪魔で有るからには悪魔なりの最低限の矜持は持ち合わせているつもりですので…。

夜は少し涼しくなりましたね。

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