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続きです。
宜しくお願い致します。
しかし、物事とは中々思い通りにいかない物ですね。殆どの理由は私に責任が有るのですが…。相手の方が私よりも一枚も二枚も上手だったと言う他有りません。
そうなると先程と同様、文字通りに手数で対応するのが良いのでしょう。今の私に思い付く方法はこれしか有りません。手の数を増やすと、私の意思では制御出来ない手も出てきますが、それは少しずつ手の数を増やして行けば対応出来る様にも思えます。
それに小さな魂が消えてから再び現れるまでの時間や、位置などの法則性などを調べる必要も有るでしょう。
もう一つ追加で小さな手を出現させます。二つの手で小さな魂を捕まえるために別々の方向から、魂に向かって行きます。魂から離れすぎず近付きすぎず、お互いに一定の距離を置いて根源の外側に向かって小さな魂を追い立てます。
二方向から迫る黒い手から逃れるために小さな魂は、黒い手が居ない方に逃げて行きます。追い掛けられているので、必然的に追手の居ない方に逃げるのが当然の選択です。しかし、黒い手が居ない方となると、根源の外側に近付く事になります。このまま追い立てられて自身から根源の外に出る事になれば楽なのですが…こんな事を考えたのがいけなかったのでしょうか?
小さな魂は根源の外側に追い立てられたのですが、勢いをそのままに根源の外側の膜の様な物に衝突すると、その勢いのままに大きく引っ張り限界まで引っ張られたその勢いで次の瞬間には反対方向に弾き飛ばされてしまいました。
「…えっ…?」
まさに今の私の状態が絶句と言うのかも知れませんね。
弾き飛ばされた小さな魂は、根源の反対の外側近くまで一瞬にして移動してしまいました。これはこれで全くの予想外です。私の予想では先程見せた様に、一度消えて再び離れた場所に現れると思っていたのですが…ことごとく私の予想を外してくれます。
私の考えが短絡的で単純だからなのでしょうか?だから私の予想の斜め上を行くのでは…?
考えれば考える程解らなくなってきます。
この様な状況では考えるよりも動いた方が良いのかも知れません。一応幾つか作戦を考えていましたが出し惜しみをしても仕方が有りませんし、そろそろ現実での時間も気になって来ました。
人族の町で人族として生活していますので、突然居なくなってしまうと今まで私と関わりを持った人族に心配をかけるかもしれません。何故か解りませんが私からは人族と関わろうとはしていないのですが、人族の方から何かと関わってきます。私に人族の常識が無いからなのか、何か私の行動に不審な点が有るのか?
それに、人族の宿屋に泊まっていますので突然居なくなってしまうと宿屋の人族の一家にも心配をかけてしまいますね。それに…美味しい人族の食事を知ってしまいましたので、それを食べられなくなるのも何故か癪ですね。
私が人族として生活するためにも、こんなこんな所で立ち止まっては居られません。
そう言う事ですので、ここは踏ん張りどころです。大きな魂の方が手強いと思い、小さな魂を最後に残した私の失敗ですが今更その事を気にしても仕方が有りませんし、どちらにしてもこの小さな魂には翻弄されていた事でしょう。
先程の失敗も有りますが敢えてここは先程同様、二つの手で小さな魂を追い掛けます。黒い手同士を適度に距離を保って小さな魂を追い立てます。しかし、今小さな魂が居るのは根源の外側に近い場所です。このまま根源の膜の様な物に体当たりをしてその勢いで移動しようにも、勢いが足りない気がします。では小さな魂はどうするのか?
黒い手は勢いを落とす事無く、小さな魂に肉薄していきます。小さな魂も黒い手と反対方向に逃げて行きますが直ぐそこには根源の外側近くですので、根源の外側に膜の様な物に弾き飛ばされるか一度姿を消すかのどちらかでしょう。
そこで三つ目の黒い手を、小さな魂が衝突するで有ろう根源の外側の膜の様な物に出現させます。これで小さな魂が取れる行動の内の一つの対策が出来ました。今の勢いの無い小さな魂なら、掴む事は容易でしょう。勢いも無く真っ直ぐに突っ込んで来る物を掴むのです、余程の事が無い限りは掴めないとは思えません。
小さな魂は新たに出現した三つ目の黒い手には、気が付いていないのでしょう。先に出現させていた二つの黒い手に追い立てられる様に、根源の外側に向かって行きます。そして小さな魂が向かう先には、黒い手が待ち構えています。
小さな魂は黒い手に向かって行きます。まるで黒い手に吸い込まれているかの様です。小さな魂が黒い手に接触するその瞬間に、黒い手は小さな魂を掴む様に指を閉じますが、小さな魂は掌の手首側に突如として方向を変えてしまいました。真っ直ぐに飛んでいた物が突然曲がったのです。
何と言ったでしょうか?物理法則でしたか?を明らかに無視した動きです。私の根源の中ででも物理法則が有効ならですが。そもそも私の存在自体が色々と例外の様な気がしますので、それを他者に当て嵌めるのも可笑しな話なのかも知れません。
私の思い付いた対応の先を行く小さな魂、この小さな存在は私よりも異質な存在なのではないでしょうか。私も自我を持って10日ほどの存在ですが、多くの存在を吸収した事でそれなりに知識や経験も身に付けましたが、この小さな魂はそもそも産まれてさえ居ないのに明らかに私よりも、数手先を行っています。
適応力が高いのか前もって対策を練っているのかは解りませんが、明らかに今まで関わった存在の中でも特異な存在なのは間違い有りません。
私の打つ手の先を行かれていますので、どうした物でしょうか。今も三つに増やした黒い手で小さな魂を追っていますが、追い付けそうで追い付けない、追い付いたかと思うと加速したり姿を消してしまったりと良い様に遊ばれています。
ここまで来ると悔しさは無く、しかしかと言って諦めも有りません。どちらかと言うと意地でも捕まえてやろうと発奮でしょうか、負けたくはないと言う感情の方が強く意識されます。
この試練?を乗り越える事で私の何が変わるのかは解りませんが、何か成長出来るようなそんな予感の様な物も有ったり無かったりします。
兎に角目の前の事に集中しましょう。
更に黒い手を三つ増やして、六方向から小さな魂を追い立てます。それでも捕まえる事が出来ないので、更に六つ黒い手を出現させて十二方向から小さな魂に近付きますが、捕まえる事は出来ません。
更に十二の黒い手を出現させて、追い込む側と待ち構えて捕まえる側とに別れて小さな魂を追い立てます。それでも捕まえられないので更に倍、それで捕まえられなければ更に倍とどんどん黒い手を増やして行きます。そうすると私の意思では操作出来ない手も現れますが、それでも関係無く黒い手を更に増やして行きます。
何かに取り憑かれた様に黒い手を増やしていましたが、気が付くと私の根源の中は隙間無く黒い手が溢れ返り身動きが取れなくなってしまっていました。これでは流石に小さな魂も身動きが取れないでしょう。しかし、根源の中には無数の黒い手が溢れ返っていますので小さな魂を見付ける事が出来ません。
いくら明かりを宿していると言っても、闇の靄の様な中でしかも黒い手が無数に溢れ返っているのです、小さな魂の光は闇に閉ざされてしまい見付ける事が出来ません。
これでは本末転倒です。探し物も探し出せない状況です。私は一体何がしたかったのでしょうか?いくらムキになっていたとしても、これでは小さな魂を押し潰してしまった可能性も有ります。
その事を思うと幾らか冷静さを取り戻しましたが、今更な気がしてなりませんがそれよりも小さな魂の事が気になって仕方が有りません。
私は小さな魂を探しながら少しずつ、黒い手を消していくのでした。
早い梅雨明けや台風接近で、色々と大変です。




