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続きです。
申し訳有りませんが、私用により投稿が不定期になります。
宜しくお願い致します。
私は意識を集中して、私の存在の元で有る根源と若い村人夫婦の魂を見つめます。黒い靄の様な霞の様な塊が有りそれは歪で不定形に蠢いているのですが、その中には確かに私以外の存在、異物が見て取れます。自分自身を歪や不定形と表現するのは正しいのかどうかは解りませんが、私の語彙力ではこの様な言葉でしか表す事が出来ません。
黒い塊は私の意思や意識と同調しているみたいで、私が思い描いた事をある程度は実現?再現出来るみたいです。黒い塊も私ですが、黒い塊を見ている私も私です。さて、どちらが本当の私なのでしょうか?
黒い霞の様な塊の様な私を見ている私は先程の様に、存在の一部を人族の手に変化させます。私の存在のあらゆる場所から手が伸びているのは正にこの世ならざる存在に見えます。人族の感覚ですととても醜悪で邪悪な存在に見える事でしょう。
私の根源で有る存在から伸ばした手で、私の中に取り込まれてしまった三つの光を掬い取る様に自身の存在の中に伸ばした手を入れて行きます。伸ばした手からは抵抗感が感じられ、私自身には違和感が感じられます。生きたまま頭や身体の中に何かを入れられて、脳や内蔵を掻き回されるそんな感覚と言えば良いのでしょうか。しかもその行為を行っているのは自分自身のその手で行っているのです。
とても正気の沙汰とは思えませんね。しかし、その様な行為を冷静に行っている存在がいるのも事実ですので、私は正気では無いのかも知れませんね。
私の中に存在する光を黒い手で掴もうとしますが、私の意思とは違う動きをする手も有れば邪魔をする手も有ります。私の思い通りに動かせる手は全体の3分の1程でしょうか、それも常に私の思い通りに動く訳では無く別の手と入れ替わり立ち替わりと、私が動かせる手が他の手と入れ替わってしまいます。
後もう少しで光を捕まえる事が出来ると思った瞬間に、私が動かせる手が入れ替わってしまいます。これはかなり面倒ですね。後もう少しとなった所で振り出しへと戻ってしまうとは、私に対する嫌がらせとしか言い様が有りませんね。
しかし私も負けては居られません。折角こうして私の存在の根源と言える者を見付けたのです。私で有って私では無い存在ですが、それもやはり私なのです。私をこの世界に召喚した存在の魂を取り込んでいますので、私が私として存在するためには必要な存在なのでしょうか。
私の意思に従って動く手を使い私の中に存在している魂を掴もうとしていますが、それと同時に私の意思とは別の意思に従っている手の動きを妨害するために、私が動かせる手の半数で他の手を掴み動きを止めます。私が動かせる手が他の手と入れ替わってしまっても、同じ様に他の手を掴み動きを封じて行きます。
やはり私が動かせる手が光を掴もうとすると、直前で私の意思では動かせなくなってしまいます。やはり私の立場の方が私では無い私より不利と言う事が理解できます。私が動かせる手が全体の3分の1程ですので、相手との能力の差もそうなのでしょう。
手が私の意思では動かせなくなる事を解ってはいますが、私は手で手を掴む事を止めません。私の意思で動かせなくなっても、他の手で手を掴み続けます。その間に他の手で光を掴もうとしますが、上手く行きません。光を掴む直前に私の意思から離れてしまい、私の意思が通じる他の手の邪魔を初めてしまいます。
それでも私はひたすらに手で手を掴み続け、隙あらば光を掴みにいきます。自分で何故そこまで光を掴む事に拘ているのかは解りません。本当に光を掬い出し村人夫婦の魂を救うのが目的なのか、もしかするともう一人の私に負けるのが悔しいのかも知れません。ですが今更止める気にもなりませんし、もう少しで何かが掴めるような漠然とした予感の様な物が有ります。
…確かに現在進行形で手で手を掴んではいますが…何かを…手と光以外の何かを掴めそうな気がしています。…ですので諦めずに同じ作業を繰り返し行っています。
あれからどのくらいの時間、同じ作業を繰り返しているのでしょうか。何故こんな事をしているのかを思い出せない程長かった様な気もしますし、あっと言う間の一瞬の様にも感じられます。私の意識は私を俯瞰して見る事と、私の意思に従う存在を操る事に集中していますので他の事を気に止める事は出来ませんでした。ですが私が同じ作業を繰り返していた事による成果は、徐々に結果として表れて来ています。
それは私の意思では動いていない筈の手も、気が付くと他の手を掴み出したからです。私の意思で動かせる手も他の手を掴んでいます。全ての手が他の手を掴むべく動いていて、近くに有る手に向かって掴みかかっているのです。一体何故なのでしょうか?しかしこれは私に取って、良い意味での誤算です。
何も打開策等が思い付かなかった為に半ば自棄ぎみになって居て、何かを思い付かなければと思い作業として行っていた行為がまさかこの様な形で結果として表れるとは…。私に取って都合が良すぎるのでは無いでしょうか。もしかすると私を騙す為に敢えて私がしていた事を真似していて、隙有らば反撃に出るのではとも考えられますね。
この様な時にこそ慎重さが求められると言えますね。私は状況の変化に気が付きながらも、今はもう少し静観する事にしました。私の意思に従う手で他の手を掴み、隙有らば光を掴みに向かいます。ですが、やはり光を掴みに行く手はたちまち、私では操れなくなってしまいます。
更にどのくらいの時間が経過したのでしょうか?手で手を掴む事は変わりませんが、次第に光を掴みに行く手を操れる時間が長くなって気がします。初めの頃には光を掴みに行くと直ぐ様私では操れなくなっていた手が、少しずつですが光に近付く事が出来る様になって来ました。
そして更に粘り強く同じ様に続けていると、遂には私の根源と言える黒い靄の様な塊に手を触れるまで邪魔をされる事無く到達出来たのです。しかし、これで終わりでは有りません。私の根源の中に取り込まれている、光、若い村人夫婦の魂と妻に宿った小さな魂を掴み出すまでが、私の目標です。目標にかなり近付きましたので、引き続き継続して行いましょう。
私の根源に手が届く様になってから又どのくらいの時間が経過したのでしょうか、私の意思で動かせる手が少しずつ根源の中にまで入る事が可能になりましたが、根源の中に入った途端に私では動かせなくなってしまいます。ですが後もう少しで村人夫婦の魂に手が届きそうです。そうです、後もう少しなのです。
しかし後もう少しが遠いですね。私の根源や根源から伸びる手の大きさが解りませんが、掌一つ分の距離が届きそうで届かない何とももどかしいです。しかし、今更諦めるのも何故か負けた気になるので嫌ですね。もう少し、本当に後もう少しですので粘ってみようと思います。
そうして粘っていると更なる変化が起こりました。私の意思で動かせる手が根源の中に深く入る事が出来て、しかも魂に手が届く所まで来たのです。私は必死になって魂を手にしようとしますが私の根源の中には潮流とでも言いますか、流れが起こり手の横をすり抜けてしまいました。
流石は私の根源と言うべきでしょう、何と悪辣で性根が悪い嫌な奴ですね。正に悪魔的な存在ではないのでしょうか。
私の意思で動かせる手が何度も何度も、本当に何度も若い村人夫婦の魂を掴めそうですが中々上手く行きません。私の根源の中の流には規則性や法則は無くその都度変わっていますし中には渦の様な物も有り、渦に飲まれてしまい、魂が見えなくなってしまう事もしばしば有りました。
しかし何度目の挑戦になるのかは解りませんが、遂にその時がやって来ました。本当にとても長かった試行錯誤の末に魂を掴む事が出来たのです。根源から伸ばした手での感覚なのですが、柔らかすぎず固すぎずそれでいて強く握ってしまうと潰れてしまいそうなそんな儚い存在です。
けれども私が掴む事が出来たのは一つ目に過ぎません。まだ二つ有りますので、まだまだ先は長いのかも知れませんが少しずつ前進していますので、後は私の頑張り次第でしょう。
何故か忙しくなってしまいました。




