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続きです。
宜しくお願い致します。
≪レッグとマーサのかまど亭≫で夕食を済ませた私達は、いつもの方法で森に向かいます。森に入り私は狼の魔獣の姿で、キオさんは元の大きさに戻り森の奥に向かって駆けて行きます。走りながらもキオさんは周りの匂いを嗅いでいるのでしょうか、頻りに周りを気にしています。
「クーン(ご主人、旨い、肉、匂い、無い)」
「…そうですか…」
≪レッグとマーサのかまど亭≫の夕食で食べた生肉の匂いで、牛の魔獣が居るかどうかが解るという事でしょうか?流石にそれは無いと思いたいのですが、もし本当に生肉の匂いでその元となる魔獣や魔物の匂いを嗅ぎ分ける事が出来るので有れば、キオさんの嗅覚は一体どうなっているのでしょうね?生肉の匂いで、肉の元である魔物の有無が解るとは…恐ろしいまでの食い意地と言えば良いのでしょうか…。
私も狼の魔獣の姿をしていますので、魔獣や魔物の匂いで大体の位置や、どの様な存在が居るのかは解ります。しかし、夕食で食べた生肉の匂いで元となった存在を嗅ぎ分ける事は出来ないでしょう。私も匂いを気にしながら森を駆けてはいますが、そもそも生肉の匂いを覚えてはいませんのでとても私には牛の魔獣を探し出すことは出来ないでしょう。
森の中をしばらく駆けて行くと、少し開けた場所に出ました。ここはこの数日間私が吸収した存在の能力を確認するために使っている場所です。私が吸収した存在の事を調べている間はキオさんには自由にして貰っています。キオさんは早速森の中に消えて行きました。
キオさんはこの森で生まれ育った狼の魔獣ですので、森の中で自由に走り回る事が大好きですので私が色々と調べている間には自由時間です。森の中を好きなだけ走り回るも良し、自由に狩りをするも良し。この時間はキオさん本来の姿や生態を取り戻せる時間と言って良いでしょう。
キオさんが森で過ごしている間に、私は私のするべき事をしなくてはいけません。先ずは昨晩キオさんが狩ってきた魔獣や魔物達を調べる事です。キオさんの昨晩の狩りの成果はと言うと…
人族の背丈程は有る大きな百足の魔物。
人族の腰の高さ程の大きさの栗鼠の魔獣。
人族の腰の高さ程の大きさの頭に角が有り足の爪が鋭い兎。
人族の背丈より少し小さい蝙蝠。
人族の背丈程の大きさで鎌足が四本有る蟷螂。
体長が人族の腰程の大きさで全身に鋭いトゲを持つ八本足の蜥蜴。
人族の背丈程の体高が有る頭が固い瘤になり鋭い牙を持つ猪。
人族の胸程の体高が有る刃物の様に鋭利な角を持つ鹿。
全体的に筋肉質で角も大きく立派な物を備えた小鬼族、ゴブリン族の上位種。
犬の獣人族にも見えるが二足歩行の出来る犬の姿をしたコボルト族。
キオさんと同じくらいの大きさの明るい茶色い毛をした尻尾が二本になっている狐の魔獣。
の十一体になります。
私は魔獣や魔物の姿に変わると、森の中で彼らの動きを確認していきます。昨晩も同じ事をしていたので幾らかは慣れたので、次々に魔獣や魔物の達を調べて行きます。
そこでふと私は、何処かに何かが引っ掛かかる感じがすることに気が付きました。
毎回、吸収した魔獣や魔物が増える度に一体一体調べていては中々先には進めませんね。昨夜は新たに吸収した存在の能力を確認をしていると夜が明けて来ましたので、宿へと戻りました。そして今夜も、新たに吸収した存在の能力の確認をしようとしている私がいます。
今夜もキオさんが今私が吸収していない魔獣や魔物を狩って来るとしたら、明日も新たに吸収した存在の能力の確認をしなければいけないでしょう。それではその他に確認したいことが全く出来ない可能性に思い当たりました。
…我ながら鈍感と言いますか何も考えていないと言いますか…目の前の事に流されているのでしょうね…。
そんな事ではいけませんね。私にはこの人族の世界で生き抜いて、悪魔界に帰るという目標が有ります。こんな事では何時までも足踏み状態になるのではないのでしょうか?それではいけません。どうにかして、今の状況を変えなくては…。
そこでふと思い付いた事が有りました。そもそもの原因を作ったのはキオさんなのではないのでしょうか?私の為と言うのは理解出来ますが、今まで私が吸収していない魔獣や魔物を狩って来てくれましたし、今夜も森の奥で狩りをしている事でしょう。
そうです、キオさんです。キオさんは私の存在の一部を吸収したことにより、自我を保っています。例えるのなら私の眷属的な存在になってしまっています。一応若干の制限は有りますが、己の意思で行動が可能です。その事を踏まえて私の今の状況を考察してみると、自と答え?らしき物が私の頭の片隅に閃きました…と思います。
それは新たに吸収した存在に、私の存在の一部を仮に吸収させて自らの能力を確認させる事です。その後私が彼等を再度吸収すれば彼等の能力の確認と私の存在の一部も回収出来るのではと思いました。そのためには彼ら自身の魂を憑依させる必要が有りますが、既に彼らの肉体も魂も私の存在の一部になっていますので逃走や反抗の恐れは無いと思われます。
…絶対とは言えない所が、私の自身の無さの表れなのですが…。
では、早速試してみようと思います。
昨夜キオさんが狩って来た、魔獣や魔物の中から一番御し易そうな者を選びます。魔獣や魔物ですので御し易いかは解りませんが、何か問題が起きても直ぐに狩れる存在が良いでしょう。
人族の腰の高さ程の大きさの栗鼠の魔獣を選びました。魔獣ですので動物の栗鼠とは全く別の存在ですが、素早い動きと身を隠す術に長けた魔獣ですので、もしもの場合でも対応は可能でしょう。
先ずは栗鼠の魔獣の肉体を具現化させます。人族の腰の高さ程の体高なのですが、魔獣ということも有り死体なのですが存在感が有ります。
次に私本来の姿である黒い霞の状態に戻ります。以前と比べると霞の密度と言えば良いのでしょうか?黒く濃く濃密になった様な気がします。私自身の存在感、気配でしょうか、も以前にも増して強く感じられます。
私は私自身の存在である黒い霞の一部を切り離します。特に何か行動する訳でも無く、私が思い浮かべると自然と私の存在が切り離されました。今の私は黒い霞の状態ですので、手を使う事が出来ません。思い浮かべるだけで思い通りに私の体が?動きますので便利ですね。
切り離した私の存在の一部に、栗鼠の魔獣の魂を重ねます。すると私の存在に包み込まれる様に、栗鼠の魔獣の魂が黒い霞の中に埋没してしまいました。しかし、黒い霞の中からでは有りますが、確かに栗鼠の魔獣の魂の存在を感じられます。その私の存在に包まれた栗鼠の魔獣の魂を、本来の器である栗鼠の魔獣の身体に戻しました。
すると栗鼠の魔獣の身体は、始はピクピクと痙攣していたのですが突然目を開いたかと思うと突然立ち上がりました。栗鼠の魔獣が生きていた時を見ていませんので私には解りませんが、仮の生命を付与することに成功したように思えます。
一昨夜魔獣や魔物に囲まれた時に具現化させた身体だけの存在達とは違い、その目には意思の光が宿り心臓の鼓動が感じられ呼吸しているために胸が小さく上下しています。
例え仮初めとはいえ生命の力を感じられます。実験と言って良いのかは解りませんが、一応は成功したということでしょう。一度は死んでしまった者を生き返らせてしまうとは、生命を弄んでいる又は軽んじている悪魔の如き所業ですが、私は悪魔ですのでこの様な行いは咎められる事も無いでしょうね。
まさに悪魔らしい行いだと言えますね。
これで吸収した存在の能力の確認や、新たに試してみたい事の確認の作業が捗れば良いのですが。先ずは栗鼠の魔獣です確認してみたいと思います。
急に暑くなりましたね。
とろけそうです(T-T)




