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続きを投稿しました。
宜しくお願い致します。
腹部を襲う激しい痛みと吐き気、鼓動に合わせて全身を走る痛みとで、私の意識は途切れかけますが今ここで意識を失う訳にはいきません。その様な事をしてしまえば、狼の魔物の夕食?になってしまう事でしょう。
しかし、腹部を喰千切られて内臓が無いので先程食べた夕食も狼の魔獣の胃袋に収まったと思うのですが、それでも吐き気をもよおすとは人族の身体とは不思議な物ですね。
私は気力を振り絞り、意識を失わない様にして目の前に迫る狼の魔獣の顎を何とか避けます。しかし狼の魔獣も慣れた物なのでしょう、非捕食者が捕食者に抵抗をする事は当然の権利?だと思います。必死に抵抗する私を前足で押さえて、私の動きを封じた狼の魔獣の目がニヤリと笑った様に見えました。
嫌らしい笑みを浮かべた表情で、一気に私の頭部に喰らい付きました。私の視界は赤黒い腔内に塞がれ、私が流した血液でしょうか?生 臭い匂いで充満しています。私は抵抗を続けますが狼の魔獣の力が強すぎて、身動きが出来ません。
私の掌程も有る大きな牙が私の胸部に突き刺さり、更に食い込んで行きます。既に全身傷だらけですのでもう痛みは感じません。食い込んだ牙が次には私を喰千切ろうと、引っ張ります。
既に前足で私の身体を押さえているので、牙で私の上半身を引っ張り少しずつですが私の肉体が引き裂かれて行く嫌な音が聞こえて来て、今更ですが冷静さを取り戻しました。
今の肉体は仮初めの肉体ですので冷静になってしまえば、痛みや吐き気を感じますが無視する事も出来ますし、それらを感じなくする事も出来ます。一度黒い霞の状態に戻り、狼の魔獣の拘束から抜け出します。
私の姿が突然黒い霞に変わり、そして再びウサギの獣人族の女の姿で現れたのには、流石に狼の魔獣もびっくりしたのでしょう。呆けた様な表情で私を見ていましたが、正気に戻ったのでしょうか牙を剥き私を威嚇します。しかし何が起きたのか自分の理解の及ばない出来事に警戒しているのか、特に何かしらの行動を起こす様子は有りません。
私は狼の魔獣に食べられた身体の一部から、私が吸収した物の中で大きな物を中心に幾つか現しました。村人夫婦が使っていたロバの馬車、盗賊の塒に有った牢の格子やその他ベッドやテーブル等です。
狼の魔獣は突然自身の腹が膨れ、胃の中に自身の身体よりも大きく尚且つ大量に物が現れ、更にはそれらの重量で動けなくなった事で何が起きたのか理解が追い付かないのでしょう。
私の事を睨み付け警戒しながらも、逃げ出そうともがきますが、自身の体重が急激に増えた事で身動きが取れません。四本有る足で地面を必死に掻いていますが、腹が地面につっかえているので、ひたすらに地面を掻きむしるだけです。
暫くは地面を引っ掻いていましたが狼の魔獣は腹がつっかえて動けない事を理解したのか、足や牙で私を攻撃して来ますがそれらを全て私は避ける事で対処します。
狼の魔獣の最後の足掻きとも取れる攻撃を避けていると、次第に動きが鈍くなりそして遂には動かなくなりました。狼の魔獣は死んだ訳では有りません。自分ではどうしようも出来ない状況に陥ってしまった事に今更ながら気が付いた様です。
剥き出しにしていた牙を納め、威嚇も止めています。悲しそうに「クーン、クーン」と鳴き声を上げ、まるで私に媚を売っているみたいです。
何故今の様な状況に陥ったのかは理解はしていない様ですが、その原因を作ったのが私だと言う事は理解している様です。以外にも知恵は有る?いえ、頭が良いのでしょうか?野生の生き物で本能で生きていると思っていましたが、知恵は回る様です。
さて、この状況をどうした物でしょうか?今の私の目の前に居る狼の魔獣を殺すか吸収してしまえば、済む話ですが何故か勿体無い気がして成りません。何かもっとこの狼の魔獣を有効利用出来ないかと、そんな考えが私の中に芽生え初めています。
どうした物でしょうか?そんな事を考えていると、森の奥の方から此方へと向かって来る気配が多数有る事に気が付きました。私一人でしたら逃げる事は可能ですが、苦労して?折角捕らえた狼の魔獣を横取りされる事は堪忍出来ません。
私は何時も使っている剣を表そうとしましたが、現れません。そう言えば狼の魔獣との戦いの中で落としてしまい、何処で落としたのかも覚えてはいません。そう離れた所では無いとは思いますが、今は近付いて来る気配への対応が先決です。
私は別の剣を二本表し、所謂二刀流になります。そして狼の魔獣の胃袋の中で表したロバの馬車や家具類を、狼の魔獣の胃袋の中に居る私の分体が吸収して回収しました。
しかし自らが喰千切った私の分体が自分の身体の中に居る事を理解しているのかは解りませんが、狼の魔獣は暴れたり逃げ出したりはしません。大人しく私の隣で座っています。
別に逃げても良いとは思いますが、私の分体が身体の中に居るので私には何処に居ても探し出せる気がしますので…。
少しずつですが近付いて来る者達の気配が強く感じられて来て、足音も聞こえて来ました。そう言えば何と言えばよいのでしょうか?この感覚と言いますかこの状況と言いますか、以前似た様な事を経験?体験?した記憶が有ります。
そうです、あれは盗賊の塒から町に向かっている時の事です。自分の戦闘技術の確認の為に野獣や魔獣や魔物を手当たり次第に狩っていた時、血の匂いに引着付けられて付近に居た野獣や魔獣や魔物が襲い掛かって来た時の事です。その時の状況と何故か似ていると思いました。
そう言えば、あの時もウサギの獣人族の女の姿でした。血の匂い以外に、雌の匂いと言いますか何かを引き寄せる物が有るのでしょうか?
気配は更に近付き足音も強く聞こえて来ます。十匹?十頭は居るでしょうか?
四つ目の狼
前足が四本有る熊
二本の角が生え鋭い牙を持つ馬
二つの頭と四本の腕と二本の尻尾を持った猿
鋭い牙と二本の尻尾を持つ大きな猫?豹?虎?
頭が二つ有る大蛇
人族の身長程も体高の有る大きな蜘蛛
人族程の大きさの蜂
猪の獣人族でしょうか?しかし体内の魔素<オド>量が多く存在感が人族では有りえません。
そして鳥の獣人の様に見えますが、此方も体内の魔素<オド>量が多く存在感も普通の人族では無い者がもう一匹?一頭?一人?
その他にも小さな気配が有りますので、多数の者が近付いて来ていました。
この状況はもしかして、いえ、もしかしなくても絶体絶命のピンチと言われる状況なのでは無いのでしょうか?
勢いと思い付きで書いております。
読んで頂いている皆様、内容の齟齬等はご都合主義と言う事でご容赦下さいませ。
感想やアドバイスを頂けると嬉しいです。




