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続きを投稿しました。
宜しくお願い致します。
一階の食堂に降りるとマーサさんが私に気が付きカウンターの向こうで手を振っています。私がカウンターに向かうとカウンター席に食事の用意がして有りました。
「レグナさんこの席で良いかい?」
「私は何処でも構いません」
「うちの飯時は何時もこうだからさ、一人のお客はカウンターに座って貰ってるんだ。うちの自慢の料理だから冷めないうちにどうぞ!」
「はい、ありがとうございます。いただきます」
「どうぞ、召し上がれ」
食堂で出された料理は、肉と野菜が沢山入ったスープと豆と野菜を煮込んだ物と、私の顔程も有る固く少し厚みの有る丸パン、それに拳より大きい赤い果実が丸々一つでした。
木製の匙でスープを掬うと、煮込まれた野菜の甘い匂いと肉から出た油と旨味の匂いが混ざり食欲を刺激します。そして口に含むと野菜の甘さと肉の脂と少しの塩味と、素材その物の旨さを生かしたスープでした。
次に豆と野菜の煮込みを一匙掬います。赤く染まった豆と野菜は、塩味、酸味そして匂いのきつい小さな野菜の味と豆と野菜の甘味で、煮込みだけですと少し味が濃く感じました。
次にパンを食べようと思いましたが、大きさが私の顔程も有ります。どうした物かと思っていると、少し離れた席で食事をしている人族がナイフでパンを切り分け、豆と野菜の煮込みを乗せて口に運んでいました。
豆と野菜の煮込みが濃い味付けになっているのはパンに乗せて食べる為だったのでしょうか?早速私はその人族の真似をする事にしましたが、先ずはナイフ準備しなくてはいけません。
何気無く辺りを見回します。すると別の人族がパンをスープに浸して食べています。固いパンなのでスープに浸したり、煮込み料理を乗せたりすると乗せたりすると柔らかくなり食べ易くなるのでしょう。私は固いパンでも気にはなりませんが、人族の真似をして食べてみたいと言う好奇心が、芽生えて来ました。
何気無く辺りを見回し私を気にしている人族が居ない事を確認すると、カウンターの下に手を入れます。そして以前盗賊の一件で吸収したナイフを現しました。何気無い動作で手にしたナイフをカウンターの上に出しても、誰も私の事など見てはいません。
ナイフでパンを切り分け、パンに豆と野菜の煮込みを乗せて食べてみます。先程感じた濃い味付けは、パンの甘さと穀物の香りで和らぎ、食べ易い濃さになりました。これでしたら飽きる事無く食べる事が出来ます。
そして先程見た別の人族の様に、パンをスープに浸して食べてみます。固かったパンが野菜と肉のエキスと脂を吸って、美味しいのですがパンが柔らかくなりすぎて私としてはあまり好きでは有りません。
それではと思い、パンにスープの具を乗せて食べてみると先程より味が濃く感じられ、食べごたえも満足出来る物になりました。
私が夢中になって食べていると小柄な男の人族がカウンター越しに話しかけて来ました。
「そんなに慌てて食べなくても誰も取りはしないよ!」
「いえ、余りにも美味しくて夢中になっていました」
「そう言って貰えると作った甲斐が有るってもんだね」
「作った甲斐が有るとは、貴方は?」
「俺はレッグだ料理人をやっている」
奥さん?のマーサさんは大柄で体格も良い人族の女ですが、ご主人のレッグさんは小柄で身体も華奢な感じのする人族の男です。白髪が、少し混じった黒髪で、瞳は茶色で、口髭を生やしていますが口髭にも白い物が少し混じっています。
「ああ、この宿レッグとマーサのかまど亭のレッグさんですか?」
「そうだよ、レッグとマーサのかまど亭のレッグだ!」
「そうですか、初めまして新人探索者のレグナと申します、今の所十日程お世話になる予定です」
「こちらこそ宜しくレグナさん」
「しかし貴方の作られた料理は面白いですね」
基本的にレッグさんは厨房?台所に居て料理を作る担当ですが、店を覗いた時に私が夢中になって食事をしていたのが気になったみたいです。
「面白い?」
「はい、料理のみでも勿論美味しいのですが、パンと組み合わせると更に美味しくなります」
自分の仕事を褒められて嫌な顔をする人族は居ません。現にレッグさんも嬉しそうに顔を綻ばせて居ます。それとも、料理の話が好きなのでしょうか?
「そうかい、それは良かった!」
「今までは簡単な食事しか食べた事が無かったのですが、この町に来てからは色々な物を食べられて毎日が驚きの連続です!」
「うちは煮込み料理がメインだから出来るだけ、飽きなくなるように頑張るよ」
かまど亭と言うだけ有って、竈を使って煮込む料理がメインみたいですね。竈だからと言って煮込むだけでは有りませんが、それなりにお客の多い店なのでその他の料理も色々と有るのでしょう?
「煮込み料理ですか」
「まあ、それ以外にも色々有るけど宿代には含まれないから、別料金にはなるけど、気になったらこちらも食べて貰えると嬉しいよ」
「色んな料理が有るのですね、今度頼んでみます」
「材料の仕入れ次第にはなるけど、味には自信が有るから、期待してくれ」
「はい宜しくお願い致します」
今日は満足の行く夕食でした。フィスロー氏宅の少し豪華な食事も大変美味しく満足出来ましたが、此処レッグとマーサのかまど亭の料理も庶民的と言えば良いのでしょうか?素朴で有り元々はどちらかと言うとお腹を膨らませる為の料理だったのかも知れませんが、それなのに手間をかけて美味しく仕上げ更に食堂としてお客が満足出来る料理にまで昇華させたその腕前には、今まで食事を必要としてこなかった悪魔の私が人族の中で生きて行く事に、食事と言う楽しみ又は娯楽?的な要素が出来ましたので、日々の生活に目的が出来たと言えるのでは無いでしょうか?
勢いと思い付きで書いております。
読んで頂いている皆様、内容の齟齬等はご都合主義と言う事でご容赦下さいませ。
感想やアドバイスを頂けると嬉しいです。




