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イノセン・ト・ラブ

作者: 津浦あゆ

一応続かせたいとは思っていますが、途中でぐだぐだになってしまうのも嫌なので短編として出します。文章力もぐだぐだなので、途中見苦しいところがあるかとも思いますが、そういうときは意見としてお知らせくださるとありがたいです!

  

 ある日の夜道、街灯のない奥まった住宅街で、それは起こった。




 夜陰に紛れるように暗い藍のミニバンが小さく遠慮がちにタイヤをならして美姫の歩く少し前に止まった。っという間もなくドアが開き中から手が伸びてきて美姫の左手首をつかみ、とても強い力で美姫はミニバンに引っ張り込まれてしまった。


 ってゆうか犯罪だ。


 ドアの閉められた車内は暗く、周りが暗いのと後部座席のカーテンが閉まっているのとが相乗されて美姫の眼前に居るはずの人の顔さえ判別がつかなかい。


 「えっと…あの?」


 混乱のなかで振り絞った声は完全に近く無視され、その上相手は美姫を後部座席に力任せに放り込もうとする。美姫の混乱は完全に恐怖に変わった。女であることは時に便利であり武器にもなるが、肝心な時になると圧倒的に不利だ。しかしだからこそ、頭を回転させることが上手くなる。

美姫は大きく息を吸った。今は肩に担がれているものの、幸い口は塞がれていない。大きく口を開けると、


 「誰か助けふごっ!!」


 美姫の『悲鳴で誰か気づいて』作戦は失敗した。しかし今ので相手はかなり焦っったらしい。焦燥が美姫の口を塞いだ手から伝わってきていい気味だ。少し肝が据わった美姫が、こうなったら!と相手の指を噛もうと大きく口を開けた刹那、相手がやっと沈黙を諦めた。  


 「あー、ごめんごめん、叫ばないで&噛まないで。あちゃー、またやってしまった。しかもナニ、とうとう学校の生徒にまで手をだしちゃったみたいナ?」


 うぁー、最悪。と呟く声はどこか聞き覚えのある…。


 「ごめんね、有栖川サン。ほんっとゴメン!お願いだからこのことは内緒にしといてくんないかなぁ」


 美姫の口を拘束していた手はもう離され、その手はピストルを向けられた時なんかにやるポーズで頭の両横に上げられていた。


 「なんで…せんせ?」


 真っ黒な雲間から顔を覗かせた月が、助手席の窓から入って相手の顔を照らす。美姫は抱き担がれた体勢のまま首から上をその顔に向けた。幾度も廊下ですれ違ったこの顔は。体育館で初めて見たとき、友達同士が手を取り合って喜んでいたこの顔は。


 「井野沢先生?!」


 「はいコンバンワー」


 市立美影高等学校数学科教師、井野沢響。23歳。独身。


 「こんばんわぁぁぁぁもがっ!!!」


 美姫の口は再び閉塞された。しかし井野沢が器用に腕を捻りながらも、美姫を助手席に座らせてくれたので、とりあえず大人しくしていることにする。


 「挨拶と思わせて叫ばないで!俺が不審者扱いされちゃう」


 「実際そうじゃないですか」


 そもそも何で…と続けようとする美姫の言葉を遮るほどの勢いで、井野沢が落ち込みオーラを漂わせ出した。こうも隣で沈まれては何も言うに言えまい。ので仕方なく先を促す美姫。


 「何か用でもあったんですか?」


 「聞いてくれるか聞いてくれるかっ!?俺の言い訳と生い立ちと秘密の悩みを!!」


 「嫌です」

 

 美姫は即答だった。普段から軽く、ノリの良い先生だとは思っていたが、それが自分に絡んでくるとなると話は別である。面倒事は嫌い且つ苦手な美姫にとって、なんだかよく分からないけれど厄介であろう事に巻き込まれなんて事はさらさら御免だった。


 「今日はなにも起こらなかった事にしておきますから、どうぞ私にお構いなく行ってください。ではさようなら」


 「いやいやいやいやいや、待って、ねえ待って?!」


 井野沢は、ドアを開け片足を外に出した美姫の今度は右手首を掴み、またも車内に引っ張り込んだ。

 美姫は大きく口をあけ、めいっぱい息を吸う。


 「助けむごっ!」


 「わァー!ストップ、ちょっとタンマ!落ち着いて!」


 「先生こそ落ち着かれたら如何ですか」

 

 「無理だっ!有栖川さん、絶対俺のこと勘違いしてるもん」


 「してません。先生は、ただちょっと魔がさして都合良く夜中に歩いていたセーラー服の女子高生に欲情してしまい手をだしてしまうかどうかの瀬戸際に正気を取り戻し危ういところで女子高生は許し立ち去っていってもらえたのにそれをさらにまた車内に連れ込んで今度こそ暴行を振ろうと目をワキワキ輝かせている変態の数学教師です」


 美姫は一文字も噛まずに言い切った。


 「うぅっ、有栖川さん、ホント誤解なんだよー」


 「兎に角もう遅いのでいい加減帰らせていただきます。さようなら」


 「まった!」


 井野沢は今度こそ美姫を担ぎ後部座席に放り込み、ドアを静かに閉めた。そして本人も後部座席に背もたれをまたいで入り込むと、美姫を押し倒して覆い被さる。


 「それなら、聞いてくれるまでホントに襲っちゃおっか?」


 しかしその言葉にも平然とした美姫。


 「どうぞお構いなく。相手には不自由してませんので」


 「うそっ」


 「嘘です」

 

 「有栖川のばかー」


 「馬鹿で結構」


 「ねぇ、すぐ終わらせるからさー」


 「Hですか」


 「違うしっ!!俺の話きいてくんない?」


 「嫌です」


 「ナンデっ?!先生ないちゃうよ?!」


 「もう8時ですよ。居残りで遅くなっただけなんです、早く帰らないと怒られます」


 「うぅ〜。じゃあさ、明日でいいから俺の教師室きてよ」


 「嫌です。明日はピアノがあるので」


 「いいじゃんか〜!何時から?」


 「あまり押しが強いと嫌われますよ」


「うっ…美姫ちゃんのイジワル」


 「美姫ちゃんゆうなこの変態教師」


 「いーもーんだ、俺変態だから、この場で美姫ちゃん襲っちゃおっかな」


 「そうですか」


 「そうですかって!そうですかってそんな!!」


 「とにかく、帰ります」


 「明後日!明後日でもいいから!お願いしますー!」


 「……分かりました」


 「…え?」


 思わず井野沢が問い返すと、美姫は心なしか頬を赤らめて横を向きながら答えた。    


 「だから、そんなに言うなら行ってあげます!」


 「ほ…んと?やた、やったぁ!!」

   

 「だからっ!上から退いてください!」


 あぁ、ごめんごめんと井野沢があわてて退くと美姫は素早く起きあがり、乱れた制服を直してドアを開けた。


 「明後日放課後数学室だからねっ!ちゃんときてねっ!」


 「分かりましたっ!ではおやすみなさいっ!」


 力一杯ドアを叩き閉めてから足早に去っていく美姫の姿をながめ、井野沢は嬉しそうに切なそうに微笑むのだった。 

 


  




 

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