表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/7

第三話


次の日から星を避けた。


ピアノレッスンの日も会わないよう遅く帰宅した。

学校の廊下ですれ違う時、星は何か言いたげにこちらを見ていたが気づかないフリをした。



そんな日々を過ごす内に二年生になった。

そして転機が訪れる。

私を好きだと同じ部活の一つ上の先輩が言ってきたのだ。

最初はもちろん断った。

(好きな人)が忘れられないからと。

でも先輩はそれでも良いと言った。いつかその人を忘れて僕を好きになってくれるように頑張ると。


何で私なんかをと先輩に聞く。


がむしゃらに、一途に部活をする姿に目が離せなくなった、支えたくなった。と優しい顔で教えてくれた。


そんな優しい先輩を私は身勝手にも利用することにした。

先輩の”好きだ”と言う言葉は今の私にとって都合が良かった。

先輩と一緒にいれば星を忘れることが出来るかもしれない。


そんな不純な動機で私は先輩と付き合う事となった。



先輩はとにかく優しかった。

飽きさせないようさまざまな所へデートに行き、その都度楽しませてくれ甘く囁いてもくれた。

そんな先輩に途方も無い罪悪感が湧きだした。私は先輩の素敵な所を探しては好きになる努力をした。



でも星を忘れることが出来なかった。

どんな場所へ行っても、キスをしても、想うのは星の事ばかり。

少しでも姿を見てしまえば目で追ってしまう。


これ以上先輩を利用することは出来なかった。私の所為で大事な先輩の時間を無駄にしてしまったのだ。優しい先輩に甘えすぎていた。


だから先輩の卒業式の時に正直に話した。

やはり好きな人を忘れられないと。もう偽って付き合う事は出来ないと。


すると先輩は『忘れさせる事が出来なくてごめんね。』と言って私の頭をポンっと優しく触れ去って行った。

先輩の時間を拘束してしまった私に最後まで優しかった。優し過ぎた。

恨み言を言ってくれた方が良かった。いやこれも私の我が儘だ。救われたいが為に(けな)して欲しかったのだ。



『もう変なのに捕まっちゃダメですよ。お元気で。』と私は笑顔でその後ろ姿を見送った。

当然泣く資格は一ミリも無い。悲劇のヒロインぶるなんて先輩に失礼過ぎる。



これからは誰もこんな私に巻き込まれ無いよう、迷惑を掛け無いよう、自分を律していこうと心に決めた。




だがその頭の片隅にはいつも星が居る。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ