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第二話

そんな日々を過ごしていたある日。


私は放課後、部活が急遽無くなり帰宅しようと昇降口へ向かっていた。するとピアノの音色が微かに聴こえてきたのだ。

聞き覚えのあるその音色に誘われるがまま向かうと、そこには一台のグランドピアノに向かう星が居た。



目を瞑り幸せそうな顔でピアノを弾いていた。



私は心臓をギュッと締められり感覚がした。美しいと目が釘付けとなると同時に胸の中でふつふつと黒い感情が湧き上がってきた。

そして幼い思い出が蘇る。




そうあれは幼い日一緒にピアノを習い出した頃だ。

最初は2人で楽しく練習をしていた。時折視線を合わせながらするレッスンは楽しかった。そこは2人だけの空間が広がるようで何より幸せな時間だった。

だが次第に星は私に視線すら合わせてくれなくなり、ピアノにのめり込んでいった。その音色は私より遥か先に行っていた。

そして私はピアノを辞めた。

最初は星の才能に自分が嫉妬していたのかと思っていた。だが違ったのだ。星の中にある私の存在が段々ピアノに奪われて行く気がして耐えられなかったのだ。



その後寂しさを誤魔化す為、部活動を始めた。内容なんて何でもいい。身体をがむしゃらに動かしていると寂しさを忘れられた。

そんな私を見て星なら追いかけて来てくれるかもしれないと、ほのかに期待していた。だって星はいつも私の後ろをくっついていたから。


でも星は追ってきてはくれなかった。

自分の事を話して気を引こうとしたけど星は全く興味がないような態度だった。



そしてやっと気付いた。

そう、、、私はピアノに嫉妬していたんだ。

いやピアノだけじゃない。星が私以外を見るのが許せない。

誰かと話す星。誰かを見る星。。。

全てに嫉妬していた。

いつも側にいて、私を私だけを見ていて欲しかった。

これは身勝手な独占欲。

ドロドロとした負の感情。


自分の中の黒い感情を自覚した瞬間、衝動的にピアノを弾いている星に近づき、強引にキスをした。


目の前には驚いた顔の星。

今は私だけを見ている。その視線に高揚感を感じていた。



しかし星の口が僅かに動いたのを目にした瞬間、我に返り息が止まった。

星に「なぜ?」と聞かれても答えられない。明確な答えはあっても言えない。こんな歪んだ感情を伝えるなんて出来ない。

焦った私は星が何か言葉を発する前にその場から走って逃げた。


答えは単純。

ただ我慢できなかったのだ、気付いて欲しかった、私だけを見て欲しかった。。。

そう私は、、、




その後、家に帰りベットに潜り込み自分の行動に後悔していた。

私がキスをしたことを星はどう思っただろう。気持ち悪いと思っただろう。もう近寄ってくれなくなるかもしれない。


心の奥底にこの感情を沈めて置けば良かった。友愛でも家族愛でもいい、気づかないフリをすればまだ側に居れただろう。

でももう駄目だ。



そう私は、、、、、




私は星が好きだ。



その気持ちは、独占欲は、、重すぎる。星を雁字搦めにしてしまい、不幸にしてしまう。めちゃくちゃにしてしまうだろう。

私は、、、もう星の側には居られない。




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