山畑 徹です。
「お嬢さん・・どちらにご用事ですか?」
「あ、この部屋なんですけど・・」
「あーー。偶然。僕もこの部屋なんですよ。今日個室からこの部屋に移ったんです。どうぞ、どうぞ」
「あ、す、すみません。間違えたかもしれないので・・後で来ます」
「そう。。あのね、僕、山畑、山畑 徹っていいます。今度きたら僕にも声をかけてくださいね」
「あ、は、はい。すみません。失礼します」
急に声を掛けられて驚いてしまった。メイは鞄をギュッと胸に抱き、来た道を戻る。
シャアーとカーテンを引く音が聞こえる。男同士は目が合う。
「あ、はじめまして。僕、今日からこの病室に移りました。山畑っていいます」
ベットで寝ている女性をみて
「彼女さんですか?」
「あ、ま、まぁそんなもんです」
「看護師さんに聞きました。昏睡状態なんですよね」
アビトはギュッと唇を噤む。
「いやぁ、実はね。僕もずっと昏睡状態だったんです。僕の場合、バイク事故、ですけどね。最近奇跡的に意識が戻って。だから、諦めないでくださいね。応援しています」
と、手を握ってきた。アビトは直感的にこの男が嫌だった。そう、目が、目が、嘘つきに見えて仕方がなかった。虫唾が走るそんな感情だ。男はアビトの瞳を放さなかった。まるで何かを伺っている。気味の悪さがあった。アビトは逃げるように視線を外した。
「心遣い、ありがとうございます」
「いいえ、何かあれば是非、声をかけてください」
「あ、はい。では・・」
アビトがカーテンを再び閉めようとすると遮る様に話を続けた。
「そういえば・・・もう一人、昏睡状態の女の子がいるんですよ」
アビトは視線を戻す。その視線を嬉しそうに山畑は笑う。アビトは自分がどんな表情をしているのか知らなかった。
「この病棟に。たしかぁ、あきちゃんって言ってたかな。一度はね、意識戻ったらしいんですけど。彼女さんと丁度、同じ日にまた寝ちゃったみたいですよ。あ、じゃ、また」
山畑はニヤリと笑いながら、自分のカーテンをサッと閉めた。




