「ふぅ。やっとひとりになれました。静かですね」
アビトの体がぐわぁんと引っ張られて、ホログラムのような残像と「うわ」と残された声が消える。
「お気を付けて」
そう言ってピアスはかごの中から手を振る。
「ふぅ。やっとひとりになれました。静かですね」
最近は見張りが多くて困っていたところだった。ピアスがうーーんと体を伸ばすと隠していた角と背中からは黒い羽根がでてきた。羽の片方は歪な形をしている。ピアスはその痛々しい羽を擦る。
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「あの、消えるってどういうことですか」
男はくるりと向きを変える。そして指でちょいちょいとついておいでと合図をする。それに従い後を追っていく。
歩いても景色が変わるわけでもない。真っ白な空間を歩くに過ぎないが、男は何かを避けてみたり曲がってみたり、ひまりには見えない世界を歩いているように感じた。
「どこに行くんですか」
「もう少しで見えるよ」
本当に、少し行くと見えはじめた。そこにはあのかごの少女、ピアスがいた。
「ピアス!鳥かごから出られたんですね」
男は指を立てチッチッチッとする
「あの子は、かごの子ではないんだよ」
「え、でも・・」
「あの子は分身だよ。君がひまりの分身のようにね」
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「あのぉ、ひまりさん本当にいいんですか?凄く怒ってましたよ」
「いいのよ。それより協力してくれてありがとう」
「はい、ひまりさんの為なら何なりと。それに、これを機に本当にお付き合いして欲しい位です。どうですか?」
「その心だけ頂いておくわ。じゃあ」
うふふ、と笑みを浮かべ頬にお礼のキスをする。女の子はスキップをし、時々振り返っては手をふった。姿が見えなくなると、ひまりの無表情になり歩き始める。
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警察官がアビトの体に入り込もうとした瞬間、バッとアビトが起き上がる。警官は吹っ飛び、周りに群がっていた者達も一斉に後ずさりをする。
アビトは「はぁはぁはぁ」とマラソンでもしてきたように過呼吸している。埃を払い、立ち眩みでもしたのか、頭を押さえ深呼吸をひとつして立ち去って行った。
一人が堰を切る。
「あーーーーーちっくしょう!折角のチャンスを!逃した」
「お前が、ノロノロしているからだぞ!!!
「奪えなかったじゃないか、くそぉ」
「あれ?アイツは」
吹っ飛んだ警官はいつの間にかアビトの背後にピッタリくっついている。
「あ、あの警官、諦めきれないのか憑いていったぞ」
「うわ、警官のくせに往生際の悪い奴やん」
姿なき者は、帰ろ、帰ろ、と各々の死んだ場所へと帰っていった。
そのころアビトはブルブルと身震いをする。
「なんか、体重いし、怠いし、風邪ひいたのかな?」
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