き、キスすれば、向こうの世界に行けるって事なんでしょ
「え?本気?」
「き、キスすれば、向こうの世界に行けるって事なんでしょ」
「たぶん・・でも、どうして?」
「ピアスにどうしてももう一度会って話がしたいの」
ひまりはある感情を拭い去りたかった。それがピアスを助けたい感情なのか、それとも悪魔という名の好奇心なのか、自分でも分からなかった。会えば何かが変わる。変な自信もあった。そして何よりあれ以来、出てこないもう一人のひまりの存在も気になっていた。
「お願いします」
アビトは、頭を下げる姿に、少し胸が痛む。もう一人のひまりに会う為には目の前のひまりが消える必要がある。それを望む感情に罪悪感を抱く
「頭をあげなよ」
ひまりはゆっくりと姿勢を正し、
「じゃあ、お願いします」
そう言って目を瞑る
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メイはずっとアビトに対しての苛立ちが消えなかった。
(なんで?どうして?ひまりとキスなんて!!)
二人のキスシーンが脳裏から離れない。それどころか、ひまりは何にも覚えていないの一点張り
「あーーもう!腹が立つ」
気晴らしに街に出てきたが、まわりのカップルをみれば余計に腹が立つだけだった。
そんな中、あの黒服の男を見かける。あの日以来連絡が取れずにいたのだ。
「まって」
走って追いかけるが不思議と距離が縮まらない。それどころか角を曲がったところで見失ってしまった。
「あー最悪ぅ」
あちらこちら見回すが、どこにもいない。「もう!」声を張り上げる。あまりの可愛いさに周りの男性、女性が振り返る。そこに唯一、振り返らない人がいる。
それは本当に会いたい人。
「ひまり!」
ひまりが、一つ向こうの路地を横断している。メイは慌ててひまりを追いかける。
「ひまり・・」
メイは立ち止まる。その視点の先には知らない女の子がひまりに駆け寄り、自然に腕を組み笑顔で見つめあう姿があった。
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アビトはひまりの肩に手をやる。ひまりが緊張しているのが伝わる。アビトにも緊張が移る。思わず「いくよ」と声を掛けてしまった。ひまりは照れながらコクリと頷く。そしてそっと互いの唇を重ねた。それは、少し火照るような甘いキスだった。
アビトが目を開ける。
ひまりはニッコリと微笑み。そして
「ご褒美よ」
と、首に手を回し唇に熱いキスをする。アビトはそのとろけるキスに溺れてしまう。離れるのが嫌なのに、ひまりは簡単に離れてしまう。
「よくやったわ。アビト」
それを言い残すと、ひまりの姿が消えた。
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ドキドキと恥ずかしさを抑えながらひまりが目を開ける。
唇は無いものの、感覚だけが口に残る。思わず唇に手を当てる。
その、同じ空間の中に、あの黒服の男が立っていた。
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