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第35話 ハーフエルフのジェイク

 視察から王宮へ戻ってきて。


 わたしとアンナとジェイクの3人で、尾頭付きの焼き鯛やお赤飯と言った、エルフィーナでは有名らしいちょっと豪勢なお祝いディナーを食べた後。


「近いうちに、ミレイユのことを父上と母上に紹介しようと思うんだが――」


 食後のお茶を飲みながら、ジェイクはわたしにそう切り出した。


「ジェイクのご両親って言うとつまり――」


「はい、エルフィーナ王国の国王夫妻ですね!」


 ってことだよね。

 なにせジェイクはポンコツに見えて一国の王子様なんだから。


「これまでは万が一にも感染させないよう、ヴァルスが流行ってる間はなるべく会わないでいたんだ。だけど無事に収束したし、婚約もしたし、聖女ミレイユを紹介するにはいい頃合いかな、って思ってさ」


「まぁいつかは来ると思ってたけど……国王夫妻かぁ……」


 しかも『破邪の聖女』だけではなく『ジェイクの婚約者』として紹介されるのだ。

 さすがのわたしも、緊張しないというわけにはいかないわけで。


「別に取って食われるわけじゃないし、そう気負わなくていいと思うぞ?」


「すごくお優しい人ですよ」


「っていっても、やっぱり緊張するなぁ……あれ? でも、ジェイクってハーフエルフよね? ってことは両親のどちからは人間ってこと?」


 わたしの何気ない質問に、


「あ、えっとそれは、あの――」

 なぜか、なんでもはきはき答えてくれるアンナが、急に口ごもってしまった。 


「あれ? なにか変なこと聞いたかしら?」


 そんなわたしの疑問に答えてくれたのは、ジェイク本人だった。


「まぁちょうどいい機会だし、その辺も説明しないとだよな……オレの両親はどちらもエルフなんだ」


「え? でもそれならなんでジェイクはハーフエルフなの?」


 だってエルフと人間の間に生まれるのが、ハーフエルフのはずだよね?


「ごくごくまれにエルフ同士の親からも、ハーフエルフの子供が生まれるんだよ」


「あら、そうなんだ。知らなかったわ」

 わたしはそんなもんかと思って、軽く流そうとしたんだけど――、


「だからオレは、つい最近まで王位継承権がなかったんだ」


「え――」


 ジェイクに王位継承権がなかった――?


「エルフィーナ王国の王家は代々、エルフが継いできたんだ。ハーフじゃないエルフがね。だからオレは1人目の弟が生まれるとすぐに、王位継承権を剥奪されたんだ」


「あ、うん……えっと……」


 な、なんだか急に話が重くなっちゃったんだけど……。


「ははっ、ミレイユそんな顔しないでくれ。それって裏返せば、王族のしがらみに縛られないってことでもあったんだからさ」


「う、うん……」


「オレは絵を描くことが好きだったんだ。だからいつも王宮を抜け出しては、街に出て色んな風景とか人を描いてたんだ。そういう意味では王位継承権がないってのはオレにとっては良いことだったし。かたっ苦しいことも言われず、自由にさせてもらえたからさ」


「それで、あんなに街の人と仲が良かったのね――」


「そういうこと。小さいころから街のみんなに面倒見てもらってたんだよ。絵のモデルになってもらったり、昼ごはんを食べさせてもらったり」


「だから魚にかぶりついたり、古語が読めなかったり、マナーが滅茶苦茶だったりしたのね……ちょっと納得できたわ」


 はじめてエルフィーナにきたときに、ジェイクは王族とは思えないくらいに、街の人たちからざっくばらんに声をかけられていた。


――――――――


『悪いが今はかなり立て込んでてな。一段落したら、時間を見つけて顔を出すよ』

『じゃあ今晩お願いしますね。夜の8時からです』

『ひどい無茶を言うな!? オレは今やらねばならぬことでいっぱいなんだぞ!?』

『おや、お勉強ですかい?』

『も、もちろんそれもあるぞ……うむ』

『おっと、その顔はまたサボってる顔ですな?』


――――――――


 あれもこれも、全部そういうことだったんだ。


 王族相手にこの会話はさすがに失礼じゃないのかなって心配したものだけど、


「そっか、そういう事情があったわけね……」


「それにさ。王位継承権がなくても、別にそれで父上や母上からひどい扱いを受けたってこともないしな。むしろ王位継承権がないぶんだけ、余計に可愛がってもらったっていうか」


「そうだったのね」


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