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第2話 王女による寝取られ発覚

「これはこれはヴェロニカ王女、本日もご機嫌(うるわ)しゅう」


 アンドレアスが芝居がかった態度で一礼すると、ヴェロニカ王女はアンドレアスの腕をわたしに見せつけるように抱きしめた。


 そしてヴェロニカ王女は、


「ねぇアンドレアス様ぁ、この庶民上がりの聖女との婚約は、無事に解消されたのかしら?」


 アンドレアスにしなだれかかりながら、甘ったるい猫なで声でそんなことを言ったのだ。

 なんかもう、あざとすぎて、背筋がゾゾッときそうな感じ。


 ヴェロニカ王女も、これまたアンドレアスに負けず劣らずの苦労知らずの我がまま娘として有名だった。


 花嫁修業や勉学に励むこともなく、毎週のように豪勢なパーティを開いては、ヴェロニカ・ボーイズと呼ばれる若手のイケメン貴族軍団を従えて遊びほうけているのだ。


「もちろんでございます」


「良かった! これでアンドレアス様とわたくしは晴れて、人目をはばかることなくお付き合いすることができますのね♪」


 さらにぎゅっと、胸に腕を埋もれさせるように抱きしめるヴェロニカ王女。


「長らくお待たせしてしまい、申し訳ありませんでした」


 そしてそれに対して、満更でもなさそうなアンドレアス。


 え、なにこれ……?

 もしかして――、


「ふふふっ、アンドレアス様は近い将来、わたくしの夫となる予定ですのよ?」


「もしかして、そのためにわたしとの婚約破棄を――」


 エルフの少女うんぬんは、全部そのための口実で。


 本当のところは、王女から好意を告げられたアンドレアスが、出世のために邪魔になった婚約者のわたしをポイするために立てた策略だったんだ――。


 ヴェロニカ王女と結婚して、自分が王族になるために――!


「まぁそういうことだ。ああ、安心しろ。命まではとらないよ。君が健気に貯めているなけなしの資産を没収したりもしない。ボクも元婚約者の君が、酷い目に合うのは悲しいからね」


「ああっ、アンドレアス様は、なんてお優しいのかしら!」


 くっ、このアマ……!

 自分たちで全部仕組んでおきながら、よくもまぁ抜け抜けと……!


「ただね? 元婚約者の君が近くにいると、ヴェロニカ王女が不愉快になるだろう? だから早いうちに王都から出ていってくれたまえ」


「そういうことですの♪ 元婚約者さんが近くでうろちょろしてると、わたくしすっごーく目障りですの♪ だからごめんね♪」


 し、信じられない……。

 わたしが婚約破棄されることは、100歩譲ってまぁ許せなくもない。


 ぶっちゃけアンドレアスの我がままで軽薄な性格は、あまり好みじゃないし。


 それに元はと言えば、『破邪の聖女』がただの庶民だと偉い人たち的に都合が悪いらしく、体裁を整えるために伯爵であるアンドレアスの婚約者になったってのが、本当のところだから。


 それでもイラッとはするけどね。

 人の男を寝取るとかありえないし。


 権力に目がくらんでホイホイ寝取られる男も、ありえないけど……!!


 だけど――。

 『破邪の聖女』なんていう国の根幹にも関わることを、自分の都合のためだけに捻じ曲げるだなんて。


 この国の王侯貴族は、民のことなんて本当に何も考えていないんだ……。


 国のためにと思って『破邪の聖女』の職務に尽力してきたわたしは、なんだかそれが無性に悲しかった。


 だけどヴェロニカ王女は、そんなわたしの切ない胸の内なんておかまいなしで、こんなことを言いやがったのだ。


「あ、そうだ♪ ねぇアンドレアス様、わたくし良いこと考えたんですけどぉ、わたくしが『破邪の聖女』になればいいんじゃないですかぁ?」


「え、いや、それは――」

 さすがのアンドレアスも、この無謀すぎる提案には言葉に詰まったみたいだった。


「ねぇアンドレアス様ぁ~♪ わたくし聖女になってみたいなぁ。おねがーい、だめぇ?」


 出たっ!

 ヴェロニカ王女お得意の上目づかいぶりっこ攻撃!!


 そして「王女との結婚」という千載一遇の大チャンスを、なんとしてでもモノにしたいであろうアンドレアスが、王女の機嫌を損なうようなことをするはずもないわけで――。


「うむ、そ、そうだな、うん。ではミレイユ、最後にヴェロニカ王女に『破邪の聖女』の仕事を引き継ぎしてから、王都を去るように」


「いや、あんたさっき必要もない『破邪の聖女』に金貨10枚も出すのは不要な支出だって言ってたじゃん。ヴェロニカ王女が代わりに聖女になったらプラマイゼロでしょ」


「う、うるさい黙れ!」


「っていうか、資質のない者が『破邪の聖女』になっても全く意味ないんだけど……」


 しかし既にただの庶民に逆戻りしたわたしの意見なんて、この2人が聞き入れるはずもなく――。


 わたしはやるせない気持ちで数日かけて、何の意味ももたない形だけの引き継ぎ業務を行うと、


「じゃあね元・聖女ミレイユさん♪ 末長くお元気で~♪ 2度と顔は見ないと思うけどぉ♪」


 ヴェロニカ王女の馬鹿にするような声と共に、わたしは荷物と一緒に王都の城門の前に放り出されたのだった。


「くっそー、わざわざわたしが追い出されるところを見物に来るとか、どこまで性根が腐ってんのよ? ヴェロニカ王女め、覚えてなさいよ!? 絶対に許さないリストの一番上にのっけたから、いつか絶対にぎゃふんと言わせてやるんだからね!」


 そう威勢よく吠えて見たものの、今のわたしは住所不定・無職。

 それに対してヴェロニカは王女さま。


 完全に負け犬の遠吠えだった……ぐすん、悔しい……。


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