SS アフィスのその後
「あー。やっと行った」
私は魔法で椅子を生み出し、座りながらつぶやく。
「いやー。向こうの神を説得するのがここまで疲れるなんて。『面白そうだから』って理由じゃ駄目だったから、プレゼンまでしてやっと納得してくれたんだよね」
何というか、向こうの神様って過保護なんだよね。まぁ、それに見合った面白そうな魂を渡してくれたから、良かったかな?
「『世界』はこんな事いつもしてたんだ…。意外と大変なんだね」
「そうでしょ?姉さんもそう思ってくれるよね?思ったより大変なんだよ。日本の人を送るのは」
「……ニルヴァ。いつもいつも、しっかり、連絡を、入れてから、来てね、って、言っていたと思うんだけど?」
私の後ろでニコニコと笑って近づいてくるのは、『世界』のアルカナの管理者で私の弟のニルヴァだ。ニルヴァは王国での勇者召喚の手伝いもしている。
「い、嫌だなぁ。姉さん。ほんの冗談じゃないか。あっ、いや、あの…。……すいません」
私が怒った顔で言うと、流れる様に土下座を決めた。
ニルヴァは私の着替え中に入ってきたことがあり、そのとき濃硫酸を顔にかけたことから、次からはしっかりと連絡を入れてから来るようになっていた。
「……わかった許してあげる。それで?今日もお茶しに来たの?」
「ありがとう。えっと、今回は違うんだよね。もうそろそろ召喚の時期だからみんなに伝えに回っているところ。」
「……え?」
勇者召喚ってもうそんな時期だっけ?
今度はニルヴァがジト目で私を見てきた。
「前の会合で伝えてたでしょ?覚えてないの?」
そんなことも言ってた気がする……。
「ごめんなさい。忘れてた。」
ニルヴァは頭に手を当てて『はぁ……』とため息をついて私の方に向き直って言った。
「みんなの前で言ってたんだから、ちゃんと覚えててよ。誕生年プレゼントとして、『天使の羽の触り心地の紙!超高級メモ帳』をプレゼントしたでしょ?なんでメモをとらないの?」
「いやー。あれ無くしちゃってさ。ごめん……。」
「はあ?まだ10年も経ってないんだよ!?もうなくしたの?」
さっきとは逆で、今度はニルヴァが私に向かって激怒する。私は何も言わず、ただもう一度『ごめんなさい』とニルヴァに向かって謝った。
「もう失くしちゃったものはしょうがないし、もういいよ。」
ニルヴァは髪をガシガシと掻くと言った。
「で?なにか問題があるの?その転生者君に?」
「ううん。ただ、厄介なことにならなければいいな。って思っただけ」
「そんな簡単に面倒なことにはならないと思うよ?」
「……うん。そうだよね。揉めることなんてそうそうないよね?」
「そうそう」
「「アハハハハハッ」」
起こらないといいなぁ……。
何も起こらないのかなー(棒)
2020/8/11 最終行「怒らない」を「起こらない」に変更しました。