第2話 愚者の神と暁の間
「!?っッつつつ。あれ?俺って男の子の代わりに車に轢かれなかったけ?」
体中が痛くて思わず起き上がり、そうつぶやく。
「_______。」
呆気にとられるとはこのことだろう。
自分の立っていたところはまるで空のように明るくて蒼い水の上だった。周囲を見果たしても何もない。唯一空に輝く暁が水の光を反射し、この蒼いキャンバスに色彩を加えていた。
確か南米の国の塩湖が、こんな雰囲気だったような。と思っていると、
「君が例の問題児くんかな?」
と、後ろで女性の声が聞こえた。
「__っ!?」
ありえない。ここには誰もいなかった。いや、何もなかった。だがそいつはそこにはじめから居たように自然にそこに居た。
見た感じ同い年くらいだろうか。シャツにズボンそこに上からロングコートを羽織り、広いつば付きの帽子をかぶっていた。胸元には何かが描かれた金属片をペンダントとしてかけていた。
その服装はその女性のスレンダーな体型によく似合っていた。
「こんにちは。そこまで警戒はしなくていいよ。別にとって食おうって訳でもないし。」
じっとその女性を見ていたらそんな言葉を返される。
手を上に上げて何も持っていないことをアピールする女性。警戒のレベルを少し下げる。
「…わかった。あと済まないが、今自分がどういう状況なのかがよくわかっていないんだけど、説明してもらってもいいか?」
「わかった。でもまずお互いの自己紹介から始めようか。私は22のアルカナのうち”愚者”を担当している神であるアフィスよろしくね。」
「あ、あぁ。俺の名前は、睦月灯夜で___え?ちょっと待って、今さらっと重大なこと言わなかった?」
神って単語が聞こえたような気がするんだけど、気のせいだろうか。
「気のせいではないよ。ここは灯夜のいた世界とはまた違い場所に存在する世界『アルカクライス』そこの管理をしている神の部屋それがこの『暁の間』。君がここにいる理由は、本来死ぬはずだった魂が君に延命されてしまって、替わりに君が死んでしまったから。君のいた世界『アース』では対応ができないということで、この世界を管理している私達に廻されたってわけ。」
「えっと、つまり男の子の代わりに俺が死んで、その俺の死がイレギュラーだったから管理ができないからここにいるってこと?」
「そういうこと」
...うん。あまり深くは考えないでおこう。神様たちの話に首を突っ込んだら藪蛇な気がするからな。心が読めるのもこの際そういうものと割り切ったほうがいいな。
「いやー大変だったんだよ?魂管理局に行って移魂手続きをして、保証人を探して、移魂した際の対象の魂の救済処置を行って...」
「...えっと、ありがとう俺なんかのために。」
「いやいいんだけどね。疲れたってだけで、特に何も失っていないし。
そろそろ本題に入るけど、灯夜には『アルカクライス』に行ってもらいたいと思う。より具体的に言えば、転生って形になるのかな。『アルカクライス』は一言で言うなら『剣と魔法の世界』。もちろん危険だから、一応向こうから救済処置としてもらったスキルカードが二枚、私からも一枚、合計三枚あるよ。基本的にスキルは決まった方法や家系でしか手に入れることはできないのだけれど、私達があげるこの三枚は灯夜のイメージしたとおりに顕れる。まさに神の恩恵ってやつだね。」
そう言うとアフィスは三色の札を渡してきた。ひとつは銀、ひとつは金、そしてもうひとつは黒のカードだった。
「これがスキルカード。銀が★5以上が確定。金が★6以上またはユニークスキルになる。そして黒はユニークスキル確定。」
「ゲームのガシャみたいなものか。というより、★〇って何なの?」
「そういえば説明していなかったよね。まずだけど、スキルには等級があって、一番低いのが★1最上位が★10そして、どこに入るかはそのスキルの効果次第のユニーク。この11種類から成り立っているんだ。そしてその階級が低ければ低いほどスキルは入手しやすく、階級が高ければ高いほど入手は困難になるよ。」
「なるほど」
誤字脱字があれば教えてください。
2020/8/11 数字をすべて半角に変更しました。