〜降ってきたのは?〜
吉田サラ初恋物語
今日は入学式である、その為今は昼過ぎだが下校途中である
「マリナが一緒のクラスで良かったよ〜!」
「あたしもサラと一緒のクラスになれて嬉しいよ〜!今年もよろしくね!!!」
和気あいあいとした帰り道、とても平和である
「あっ!もう別れ道…じゃあね、また明日〜!」
「うん、また明日〜」
ヒラヒラと手を振りながら藤田マリナと別れ、人気のない道を歩く
「…たしか…こっちの道…」
吉田サラはその見た目のせいでガラの悪い輩に絡まれる事が多かった
その日もそんな嫌な日に起こった、とても大切な、思い出の日でもある
ーーー中学二年生のある日ーーー
「ヤダっ!離してよ!!!」
「なんだよ、ここまで来てそれは無いんじゃねえの?」
ニヤニヤと嫌な笑いを浮かべた男に手を捕まれ、無理矢理歩かされている吉田サラ
どう見ても婦女子暴行現場である
「イヤって言ってるでしょ!警察呼ぶわよ!!!」
「チッ!うるせえな!!!てめえが誘ってきたんだろこのビッチが!!!」
「ヒッ…っ!」
逆恨みからビッチという噂を流され、そのせいで見知らぬ男から危害を加えられようとしていた、そんな時…
「なっ…何をしてるんだ!!!」
強く、ハッキリとその場に響き渡る勇ましい…とは言えないが大きな声なのにとても優しそうな声が聞こえ…
「…たっ…たすけて!!!」
「その子を離せ!」
「おいおい、ヒーロー気取りかよ!アッハッhゴフッ!?!!」
「よしっ!逃げるよ!!!」
「はあ!!??!」
男が笑っている隙に持っていたカバンをフルスイングで顔に叩きつけ、手が離された瞬間男は吉田サラの手を握りその場から脱出した
「えっ!?卑怯過ぎない!?!!」
「こうゆう場合は正当防衛だから良いの!!!勝てば正義だ!!!!」
「いっその事清い!!!???」
しばらく走り続け、ようやく立ち止まり…
「大丈夫かい?お嬢さん!」
「ハァ…はっ…息が…」
「お嬢さあーーーん!?!!」
見知らぬ男は落ち着いて話ができるまで傍にいてくれた…つかず離れずの、嫌じゃないちょうど良い距離で…その距離にとても安心している吉田サラがいた
「あ…あのっ…なんで助けてくれたんです…か…」
「え?…そんなの…困っている人を助けるのは当たり前じゃないか!!!」
「…っ!!そんなこと言って何が目的なんですか…!」
「えっ!!!目的???…良い決め台詞だと思ったんだけどなあ…んん〜〜そうだな〜目的と言われたら〜…うん!」
「助けたお礼に笑顔が見たいかな」
何の下心も見えない純粋な笑顔でそう言われ、荒みきっていた吉田サラの心に芽生えたものが、小さいが確かに存在した
「ッ!!!……ありが…とう…」
「…!!!うん!うんうん!!!人の笑顔はやっぱりいいね!…じゃあ次は気を付けるんだよ?」
「あぅ…」
そう言いながら人通りの多い道まで連れてこられ、少し頭を撫でてからその男は去っていった
「…田中…ユウトさん…」
幸いにもその男の人の制服は見た事があり、カバンに掛かっていた名札で地元の高校の1年生という事だけは分かった
「初めて、男の人に…助けてもらった…」
その日から吉田サラの世界に”田中ユウト”という新しい色が付いた
吉田サラは病弱です