〜始まりの合図〜
ダンディーなおじ様って、良いですよね
…キーン…コーン…カーン…コーン…
古くから伝わる伝統的な時間を区切る合図が鳴り響き、学校は終わりを告げる
「じゃあね、また明日」
「うん!また明日〜!ばいばーい!!!」
「ちょっと待ちなさいって…ちょ!!邪魔しないで!」
「はーい、リリカちゃんはこっちだよぉ〜」
「離しなさいよっ…て痛っ!ちょ、ホントに痛いから!!!」
「えへへへへへ」
「ひっ!!いっ、ちょ…っ!!いやあぁぁぁぁ!!!」
「…ワタシハナニモキイテナイ…」
マリナはリリカを捕らえている手とは反対の手で、吉田サラの姿が見えなくなるまで手を振り続ける
その姿は、何度見ても愛らしい柴犬のようである
…たとえ、掴まれた腕が悲鳴をあげ、叫んでいる同級生が隣に居ようとも
「…さて、じいちゃんちに向かうか」
吉田サラが通っている合気道道場は、吉田サラの祖父が開いており下は未就学児、上は社会人までが通っていて、人数は少ないがそこそこ人気のある教室であるが、学校と自宅からは数駅離れた場所に居を構えている
それは、住宅地から離れ、閑散とした通りにある『加藤合気道道場』と書かれた木彫りの看板が玄関に掛かっている古風な屋敷である
「…相変わらず、デカい家ね」
屋敷の門を通り、開け放ちっぱなしの玄関から家の奥に向かって大きな声を出す
「おーいじいちゃーん!来たわよー!」
しばらくして奥から大きな足音が近づき、道着に袴姿が良く似合っている白髪だが、逞しい体躯の老人が足早にやって来た
「…サラーー!!!久しぶりに来たか!!!待ってたぞ!!!」
「じいちゃん、私先週も来たよ?」
「先週ぶりじゃろう!!!毎日来てくれてもええんじゃぞ!むしろ一緒に住もう!」
「だからー学校の近くのが良いから今の家で良いって何度も言ってるでしょ?」
「何度聞かれてもワシの不屈の精神は同じ事を言うぞい!!!」
「…そう」
白髪ではあるものの鍛えられた身体に、良く通る声で年齢よりも若く見られることが多い祖父である
「じいちゃん、ばあちゃんは?」
「婆さんはご友人方と出掛けておるぞ!」
「そっか、ばあちゃんとも手合わせしたかったんだけどな〜」
吉田サラの祖母は合気道ではなく柔道をしていた
その為合気道では足りない、実践で使えそうな技を吉田サラに教えていたりもする
「じいちゃん、少し組もうよ」
「ん?良いぞ!今なら誰も居ないからゆっくり使えるぞ!」
「ほんと?すぐ着替えて来るね!」
「ああ!先に言っておるぞ!」
「うん!」
そう言って吉田サラは部屋の奥へと消えていった
ただし、常識人に限る




