親鳥と雛鳥。
「ああ・・・モア。おはよう」
そう言ってヘラりと微笑んだ自らの主に少年は・・・この『夏ノ国』の神獣・導のモアは心底、呆れていた。
「『おはよう』じゃねぇしっ!」
そう叫ぶように言ってカツカツと爪音を響かせながらやって来るモアをシバはニヤニヤしながら見つめ見ていた。
その一方でシバの回りを取り囲んでいた女中たちはモアの姿を認めるとそそくさとその身をシバから引き、まだ幼い姿をしているモアに深々と頭を下げ、紅の引かれた唇を優しく歪ませていた。
モアはそんな女中たちに『おはよう』と声を掛け、すぐに『下がって』と命じた。
モアのその命に女中たちは『はい』と応えると軽やかな足取りでその場を去って行き、その場には『夏ノ国』の王・主夏のシバと『夏ノ国』の神獣・導のモアだけとなった。
モアは女中たちの姿が完全に見えなくなると大きな溜め息を吐き出し、先ほどと変わらずニヤニヤしているシバをこれでもかと睨め付け見たがモアのその容姿は可愛らしく、身長も低いためそれは決して威圧的ではなかった。
「『おはよう』じゃないなら『こんばんは』ならいいか? ん?」
そう言ってからかってきた主のシバにモアはムッとした表情を向けたが何かを言い返すことはしなかった。
「よく寝ていたから起こすのは可哀想かと思って配慮したつもりだったが・・・どうやら逆効果だったか・・・」
シバはニヤニヤ笑いを苦笑いに変えるとモアをそっと手招いた。
シバのその手招きにモアは表情を柔らかくするとその可愛らしい頬を僅かに赤らめ、シバにそっとすり寄った。
まるでそれは雛鳥が親鳥に甘えるかのようにそっと・・・。




