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夜明け。
『夏ノ国』の朝は多種多様の鳥たちの囀ずりからはじまる。
その囀ずる鳥たちに囲まれ、目を覚ましたのは鮮やかな青色の髪をした一人の少年・・・。
少年は灰色の瞳を僅かに開くとぼんやりとした眼差しのまま大きなベッドの上を見回し、小さなその手をそろそろと布団に這わせ、手を這わせたその布団に温かさがないことに気が付くと全開になりつつあった灰色の瞳を不愉快そうに細めて大きな溜め息を吐き出した。
「・・・また勝手にどっかに行きやがった」
少年は苛立ちの籠った口調でそう言うとベッドから飛び起きて、カツカツと微かな爪音を響かせつつ宮内を歩き回り、その『また勝手にどっかに行った』モノを見つけるとまた大きな溜め息を吐き出した。
「・・・シバッ!」
少年のその突然の大声に数羽の鳥たちが蒼天に飛び去った。
少年は飛び去って行ってしまった鳥たちに内心、謝りつつ、宮内の中庭で女中たちと戯れている『夏ノ国』の王にして自らの主であるシバを睨め付け見ていた。