第02話:変化
「そう。」
本人(本龍?)は大して気にしてない様子だ。
「さて、これからどうするかな。」
俺としては、独り言に他ならないのだが、シェノザがビクッと反応する。
「僕を、殺すのかい?」
ブッと吹き出したのは、もちろん俺だ。
「殺す?何故?」
少し笑いながら問う。
が、当のシェノザは俺が何故笑っているのか理解できないようで。
「力が、欲しいんじゃないの?」
力?という事は……。少し首を捻る。
伝説が本当だったということなのか?
どちらにしても、
「俺はお前を殺したりはしない。例えそれが、俺が喉から手が出るほどに欲しい物だとしても、だ。」
そういう彼の目は、どこか遠くを見ているように、哀愁の類で溢れていたのだが、当の本人は何もなかったかのように我に返り、
「さて、町に行こうかと思うんだけど……。」
とジーッとシェノザを見つめている。
「この格好が気になる?」
そりゃそうだという風に相槌を打つ俺。
龍なんて連れて行ったらどうなるか分かったもんじゃない。
「あぁ、これ?新しく飼ったペットで『シェノザ』って、いうんですよぉ〜」
なんて悠長には言ってられるはずもなく……。
ふぅ〜とため息をついた(かどうかは怪しいが)シェノザが何かを思いついたように、
「さて、龍族に伝わる秘伝の魔法その2、行きますか。」
というと、シューッと光り始めた。もちろん当龍が。
気が付けば、瞬く間に背が伸び人の形をしていく。
「……。」
まぁ普通の人間の反応だろう。
呆然と効果音をつけるのなら「ポカーン」という風に口をあけているレイヴォル。
無理もないだろう。
彼の目の前には世界3大美女にでもなれそうな「女の子」が立っているのだから。
しかも彼女の目は紫、髪は黒でセミロング、と色に関しては自分とまったく同じである。
「なんで俺に似てるの?ってかなんで、女なの?ってかなんで?なんで……服着てないのおおおお!!!」
「なんでって……色合いが似てるのは目の前に良いモデルがいるからだし、女なのはなんとなくだし、服着てないのは、変化前が服着てないからで、もちろん服そのもの込みで変化することもできたんだけど、そうすると汚れても洗えないし、服斬られても痛いし、血が出るし、なんかドシャー!バシャー!ってなるからで……。」
と、鬼神の如き勢いですごい量の文章を言ってのけた彼女。ちなみにシェノザさん。
顔とかからして年は16ほど。
とりあえず美少女、うん。
「まぁ僕ならこんなこともやってのけるのですよ、オホホホホ。」
と声高らかに笑っているが……。
「困ったな、これじゃ町に行けねぇや。てかその姿で『僕』はやめとけ。」
「あぁ服着て欲しいの?着て欲しいんだ?あ、言葉遣いの件了解。」
「いや、べ、別に着て欲しいわけでは……。」
少し間が空いた後、「何言わせるんじゃぁぁぁ!」と盛大に突っ込むレイヴォル(18)なのであった。