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短編集

聖女ってこんなでしたっけ?!

 異世界転移した。私は聖女らしい。でも……。

 私、磯野海苔香はけっこう酷い事故にあって死んだと思うんだけど。

 なんか気付いたら森の中にいた。


 ちな、私の名前に突っ込んだら死ぬ。おもに私が殴り殺す。両親は大好きだけどこの名前だけは許せん。せめて貝類の名前なら……余計酷いか。


 それはさておき、ここが異世界だと気付くのに時間は要らなかった。なんか気味の悪いうねうね、いわゆる触手って奴が私を追いかけてきたからだ。

 当然逃げる。逃げる。逃げる。戦う? 死ぬ。つか触手速い。はええぇ。

 なので逃げに逃げて、そして森を抜けたところで馬車が。触手はお日様を嫌ったのか森から出てこなかった。

 ここで気付いた。あ、これ異世界転移テンプレって奴だ!

 私は召喚された勇者だったり聖女だったりするのに座標が違って森の中に出てきてしまうパターンね! テンプレテンプレ!

 ……って、事は私は勇者か聖女?!

 そんな風に考えていた時期が私にも有りました。


「迷い子?」

「それって聖女様?」


 なんだ、やっぱりテンプレじゃん。私聖女聖女。ふふん。


「私はノリカと言います。この森で魔物に襲われて記憶が不確かなのです。どうかお助けいただけませんか?」


 私は出来るだけテンプレに従って彼らに助けを求めた。世界が世界なら悪徳商人に捕まって奴隷にされて男性陣を喜ばせるパターンね! でも幸い彼らは家族連れだし、女の子もいる。非道は行われないと判断した。読んでて良かった小説家になうろーでぃんぐ。

 彼らについていく過程で魔物に襲われ、彼らが使った魔法からこの世界に魔法が有ることが分かった。良し、勝ちパターンね! 私魔力凄いんでしょう? 初めて彼らに会った時にそんなことは言われてたしね。

 それでこの世界の魔法の種類はどうやら「召喚魔法」に限られるらしい。皆鉄の槍やら火の玉を出すので聞いてみたところ、全ての人が一種類の物だけだけど召喚魔法を使えると言う事らしく。

 ステータスが見られると言う事で私もステータスオープン! すると、私の持っているスキルは「食材召喚」なのだと分かった。


 ……………………。おい。

 食材召喚ってなんだ! そんなんで異世界生き残れると思ってんのか! 異世界なめんなよ! 死ぬぞ! ぬるぬる触手とかに捕まったあげく死ぬぞ!

 そう思っていた時期が私にも有りました。醤油の海とか無敵やん。

 それに私は昔から、小学生の頃から料理をしていた。料理キッズと呼んでくれたまえ。そんな料理上手なお子様だった。なのである意味食材召喚はギリギリ異世界召喚勝ち組パターンね! と思えた。

 実際その私を助けてくれた馬車の人たちに料理を振る舞うとすさまじく喜ばれたのだ。

 皆が聖女様聖女様と私をおだてて来たんだけど。……? あれ? 聖女ってこんなでしたっけ?


 町に着いて私は定番の冒険者ギルドに。

 そこで私のスキルを明かすとやはり聖女聖女と騒がれた。食材召喚で聖女って、この世界は食糧難なんだなーと思ったが、良く考えれば中世なんてどの国も食うや食わずの食糧難だったわ。ちょうど小氷河期だったんだよね。世界各地が皆飢えていた。この世界もそうなんだろう。寒いし、皆飢えているんだ。

 なら私の能力が聖女なのも頷ける。

 そう思っていた時期が私にも有りました。


「貴様が新たなる聖女候補か」


 なんかマッチョな女性が現れて私に聖女の心得を教えるとか言い出しました。

 やあ、国王から言われたので仕方ないけど……知ってるか? 料理関係の下働きは元の世界でも一二を争うくらいのブラックだぞ? 朝は四時起きで仕込み、夜は十二時まで仕事だ。睡眠時間は三時間ない。私だって風呂に入ったり飯を食ったりするんだから一時間から二時間はそれに掛かる。ひでえブラックだ。


 そして、そのマッチョな人だが、現在の聖女で、ひたすら料理を作っているらしい。見た目は食堂のおばさん、オンマッスルだ。女将さんと呼ぶのが相応しい。聖女らしいが。

 もう一度言わせて欲しい。聖女ってこんなでしたっけ?!

 私はその女将さんの(もうこう呼ぶことにした)元で修行を積み、立派な料理人……あ、違った、聖女になった。

 聖女ってこんなでしたっけ?!


 その後も私はいろんなパーティーに誘われて冒険者的な事をしたんだけど、私が戦えるはずもなく。いや、醤油シーとか一味テンペストとか搦め手は使えるけど。本人が弱いし。

 でも。

 なんか私の料理を食べると様々なバフがかかったり、傷が癒えたり、欠損までも回復したりするらしく。

 はあ、これは確かに聖女かもね、と、思えた。

 でも。死者はご飯を食べられない。仏教なんかでは施餓鬼米みたいな死者に向けた? 料理? みたいなものもあるけれど……。

 私には死者を蘇らせる料理なんか作れなかったんだ。

 それでも私は料理を作った。私が死なせてしまった人の分も。

 聖女ってこんなでしたっけ? その思いは今もあるけれど、聖女ってこれでいいんだ、この世界では。

 皆を助けるための一年間継続するバフの料理なんかも編み出して、私はこの世界の聖女になる。私はこの世界の聖女になるんだよ。

 日々皆に不滅や無敵や万能や絶対なんかのスキルが付加される料理を格安で振舞い、この世界のダンジョンを、魔王を、私は倒す。

 だが一言言わせてもらおう。

 最後のダンジョン前でも料理を作らされている私にはそれを言う資格があるはずだ。


 聖女ってこんなでしたっけ?!






 長編にして欲しい人は一言お願いします!

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