自動車学校(違いが分かる女)
クルマには個性がある。
別の教官が担当になって、初めてわかったコト。
今日も、ツラいツラい半クラッチの修業。
とはいえ、エンストの回数はそれなりに減ってきた。
そんな中、
「明日、自分休みやき、別の教官につくごとなっちょーもんね。配車係行って指示受けてね。」
というコトになった。
固定の教官は、シフトの都合により休みなのである。
次の日。
配車係にて指示を受ける。
担当になったのは、鈍いくせにミッション初日からエンストしなかった友達の教官。
早速乗り込み、エンジンをかけようとすると、
「これ、ディーゼル車やき、焼いてかけてね。」
初めて聞く言葉。
「へ?『焼く』っち…何を焼くんですか?」
意味が分からない。
聞き返すと、
「あれ?ディーゼル車について、授業でまだ習ってない?」
「はい。」
「そっか。んじゃ、分からんでもしょーがないね。そしたら…まず、キーを刺して。」
「はい。」
「そして、ONまで回すとここらへんにね、クルクルっとした黄色い警告灯あるんよね。」
指さしながら説明。
「グローランプっちゆーっちゃけど、これが消えるまで待ってセルを回す。」
「はい。」
言われた通りに実行。
カチャカチャ
ONまで回すと、グローランプ点灯。
消えて、スタート。
キュキュキュカラカラカラ…
一発始動。
さらに説明。
「これを無視してセル回しても、かからんことはない。でも、かかりにくい。何回もやると、バッテリーの負担がデカいき、早目に寿命が来る。」
のだそうだ。
試しに一度エンジンを切って、無視してセルを回すと、
キュキュキュキュキュカラカラカラ…
たしかにかかりにくい。先程よりもセルモーターを長めに回さないと始動しないのだ。
エンジンの説明も終わり、
「んじゃ、行ってみよっか。」
クラッチを踏み、ギヤをローに入れ、サイドブレーキをおろし、クラッチをつないだ瞬間、
!!!
大きな力で一気に押し出される感じがした。
何これ?クラッチ、全然楽勝やん!
思わず感動。
教習中。
発進と停止を繰り返すワケだが、何度やってもエンストしない。
多少「あっ!」と思うことがあっても、エンジンは何事もなかったかの如く、回り続けてくれるのである。
結局、この日は一度もエンストせず、何もかもがうまくいった。
ここまでうまくいくと、
将来クルマ持つとき、このエンジンの載ったクルマなら、ミッションでもいーかな。
そんなことを考える余裕さえ出てくる。
運転している間に分かったコトがある。
それは、鈍いアイツのコト。
エンストなんかしないと言っていたので、不思議に思っていたのだが…。
上手いんやないで、このクルマに助けられちょったんやん。
やっと、その意味を理解した。
戻ってくると、今乗ったクルマで実技を受けている友達がいた。
早速、
「あんたの教習車、羨まし過ぎ!全然エンストせんやん!なんか、ウチの乗りよーのとは大違いやったばい。」
不満をタレると、
「マジで?そげ違うん?」
驚いた顔をする。
「違う違う。あんたもキャンセル待ちしよんやろ?そのうち別のに乗る機会あるやろーき、そん時は注意しとき。でったんエンストしやすいき。」
脅すような口調で言うと、
「それ、ヤベーね。ウチ、しきらんかもしれん。」
ちょっぴり引き攣っていた。
後日。
その友達が、キャンセル待ちしていると、ガス車に乗る機会がやってきた。
終了の時間。
待合室にいると、友達は半泣きで降りてきた。
聞くと、クラッチを全くつなぐことができず、心がボキボキに折れたのだそうだ。
次の日、自分の教習車の有難味を痛感したという。
それから数日。
キャンセル待ちして、もう一時間乗った時のこと。
当然、別の教官が担当となる。
その教官の教習車は数日前、クラッチ板を交換したばかりらしい。
「自分の、クラッチ変えたばっかで、変なクセ出ちょーもんね。だき、ちょっと乗りにくいかもやき。」
クルマに向かうとき、そのような説明をされたのだが、ガッツリ素人である。
言っている意味が、イマイチよく分からないでいた。
が、しかし…。
運転席に座り、クラッチを踏むと、
ん?
素人でも分かるほど、ハッキリとした違和感。
踏むときはそんなに変わらないが、戻す時、何かがおかしい。
この時点では、何がおかしいのか分からなかったのだけれど…。
いざ発進しようと、クラッチペダルを戻す時、半クラ手前で引っ掛かる感触。
一旦足から離れるような感じがして、直後、一気につながる。
乗りにくいとか、そんなレベルではなかった。
スムーズな発進ができなくて、完全に調子を崩す。
この日は、全くいいところが無く終わってしまい、評価も最悪だった。
卒業までに、色んな教官のクルマに乗ったのだが。
クラッチに関しては、浅い位置でつながるのや深い位置でつながるの、実にさまざまなクセがある。
その度に、調子を崩す。
見た目は同じなんに、何でこげ違うんかな?
ホント、謎である。
同じ部品で構成されているはずなのに…。
不思議でたまらない。
これ、友達の経験を思い出して作ったお話。




