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 舞踏会の翌日。リリーがミチル国王女で第一王位継承者と、セイズ国は発表した。もちろんスクイ殿下は反対宣言を出した。今後ミチル国にセイズ国役人たちを派遣すると、リリーはセイズ国で政治について勉強すると、ミチル国の意志を発表した。


 ルークの婚姻について正式な発表はなかった。



 お部屋大好き、ヌクヌクお布団大好き、引き篭もり万歳! 前世も現世も立派な引き篭もり住人になれる……のに、部屋にこもって三日目にとうとうリンダが切れた。

 セシルの知っている中でリンダが一番気が弱いと思ったけれど、彼女が一番したたかだった。


「姫さま! いいえ、セーちゃん! 母親として言います! こんなにウジウジして布団に包まっている芋虫なんて、陛下やルネンさまに恥ずかしくないのですか!」


 リンダの言う陛下はとーさまのことだ。


「体がダルいの……」


「そうでしょ! 三日もダラダラ生活すれば誰でも体の調子を崩します。もう姫さまが、セーちゃんが大人とずっと思っていたけれど、一番子どもだったのね。


 ほら起きて、お父さまもセーちゃんに会いに、そろそろ来ますわ。早く支度をしてください。

 久しぶりにみんなでクッキーでも焼くことになったの。私も今朝は公務は休みにしてもらいました」


 じーじが来るんだ!


 みんなでお菓子を作るなんて久しぶり。もしルークのことがなかったら一目散でこのベットから出るのだが、どうしても出たくない。


「もうセーちゃんはいろいろ恋について話をしてくれたから、恋愛について詳しいと思っていたのに……」


 リンダがセシルのベットに腰かけて、セシルの髪をやさしく撫でた。


「昨日言った通り、ルークさまとソフィアさんの婚約話は、しばらく様子見で正式な婚約ではないと発表があったの。

 いくら王妃さまが病気でも発言を否定することができないらしいわ。


 正式じゃないから二人の婚約話も自然と消えるとタイラさまがおっしゃっていたわ。だからもうウジウジしないの」


 王妃は病気の治療のためにしばらく公務に出席しないと発表された。いまは王族居館から出ないように軟禁状態とリンダに昨日聞いた。


「ほんと、セーちゃんはルークさまのことが好きなのね」


「なっ、!!」


(ちがう!)


 ルークのことを否定しようと体を起こす。でも、ルークが好きと言う気持ちを否定できなかった。


「ラングにいた時、三人で過ごした時間は、単調で穏やかで幸せだった。でも私はもうあの場所に戻ろうと思わないわ。

 陛下は私たちを暖かい布団で包んで守ってくれた。

 でもいまはタイラさまが私を守ってくれるの。リリーがミチル国王女と正式に発表されて私は今後のことで恐怖でどうしたらいいか分からなかったけれど、タイラさまは私の側にいて私とセーちゃんとリリーを守ってくれると言ったの」


 リンダが柔らかく微笑んだ。


「セーちゃん、私、タイラさまに出会えて幸せよ。リリーは自分の人生を受け入れようとしているわ。ノエールさまとお付き合いをすると言っていたけれど、リリーが本当にノエールさまのことが好きなのか分からないの。でもリリーを信じているから彼女の意志を尊重するつもりよ。


 リリーと反対でセーちゃんはルークさまのことが好きと分かるのに、どうしてその恋を拒否しているの。セーちゃんが語ってくれた恋愛の主人公は相手に振り向いてもらえるように努力していたわ」


 リンダたちに話したBL恋愛話は前世の二次元の話だ。


「セーちゃん。私はタイラさまに惹かれている。

 運よくタイラさまに好きになってもらえたけれど、私自身、結婚しても彼をもっと好きになるように頑張るわ。

 だからセーちゃんも、頑張ろう。陛下もルネンさまも恋愛に真剣に頑張っていたわ……。


 ルークさま、諸国会議の合間にセーちゃんに会いに何度も来ているのよ」


 この三日間、朝と夜にルークが来たけれど、セシルは仮病を使って会わなかった。


(最低だ……)


 ルークの告白の返事をきちんとしていないで、彼が他の人と結婚すると知って傷ついて勝手に彼を無視した。


 セシルは自分が醜いと思った。


 とーさまもかーさまも、リンダもリリーも、セシルの周りにいる人たちはみんな自分の人生を受け入れて頑張って生きているのに、セシルはグチグチ頭で考えて自分の気持ちを守ることしか考えていなかった。


「リンダおかあさん……ごめんなさい……」


 前世の記憶があるから、人より多くの経験があるから大人と思っていた。でもセシルは恋愛経験未熟者だ。


「頑張る……」


 セシルは前世の彼女じゃない。恋を諦めない。


「うん。じゃあ、支度して朝食にしましょう。その後にリリーとディランとお父さまとクッキーを焼きましょう。もちろんクッキーはルークさまに渡すのよ」


「ディーもじーじもクッキー作るの?」


「もちろん」


 リンダがにっこり笑った。



 やっぱりみんなでするお菓子作りは楽しい。じーじにとっては、はじめての料理だったみたい。本人は筋がよくて、そろそろ隠居してヤーリに弟子入りをしようと言っていた。


 一ヶ月ぶりにじーじに会ったけれど、じーじはじーじだった。リンダの結婚式の後は、ミチル国の王都に購入した屋敷に住むらしい。


 リンダとリリーの新婚生活の邪魔にならないように、一緒に暮らさないかと言われた。リリーはミチル国のルディア伯爵からも同じように言われたらしい。


 リンダは実家やルディア伯爵のことと今後関わりたくないと言っていた。

 リリーもミチル国に関わりたくないと言っている。タイラさまもミチル王も二人にミチル国のことは心配しないように言った。


 リンダが結婚した後にリリーとセシルは、タイラさまの屋敷に住むつもりでいたけれど、じーじの言う通りだと思った。このまま王族居館に住むつもりはない。ここはセシルの家ではない。セイズ王がセシルたちの部屋を用意してくれたけれど、ラング国の後宮、箱庭のように自分の家ではなかった。


 「じーじと暮らしたい」とリリーが言ったようにセシルもじーじと暮らすのが一番いい気がする。「すぐに決めなくていいからゆっくり考えてください」とじーじが言った。


 じーじの購入した城下の屋敷は王城に近く、タイラさまの屋敷にも近いらしい。大きなキッチンと、グリーンハウスなどの住宅改築しているらしい。


 今度リリーとセシル、ディランの部屋のリフォームの相談にじーじの屋敷に行くことになった。


 なぜかリンダもじーじの屋敷に自分の部屋が欲しいと駄々をこねた。じーじがほっほっほっ、と笑って旦那と喧嘩したらいつでも実家に戻っておいで、と慰めた。


 キッチンにタイラさまがいなくてよかった。


 じーじはセシルたちが帰れる場所を作ってくれたんだ。リンダが小麦粉の手で涙を拭いたからすごい顔になっていた。


 ディランが濡れたタオルでリンダの顔を拭いてあげた。


「もうディーって、ときどきおかあさんより大人の感じがするーー」


「しかたないよ。手のかかるリリーとセーちゃんがいたら、大人にならないと自然にそうなったんだよ」


 ディランがリリーに返事をした途端に、リリーがブスッとした顔をした。

 

「異議あり! どうして私の名前が出てくるの?」


「セーちゃんはかねて大人ぶっていても、すねたら一番手がかかる」


 セシルもリリーを真似てブスッとした顔をしてディランを睨んだ途端、みんな笑い出した。



 オーブンから甘い香りがする。大好きな人たちの笑い声と、甘くて優しい時間。


 セシルはきちんとルークに気持ちを伝えよう決めた。緑の民だから、とか、王族だから、とか、言い訳はいらない。


 


 料理の後にみんなで一緒に昼食を食べた。


 午後は久しぶりに王族居屋敷にある庭園をリリーと散歩した。もちろん二人の後ろにディラン以外の護衛兵たちがついて来る。


 一ヶ月後のリンダの結婚式の一ヶ月後に、王都学園の卒業式があるらしい。ルークも卒業するとリリーが教えてくれた。新学期は卒業式から二週間後だ。

 リリーとセシルの今後のスケジュールは、午前中にセイズ国の歴史と仕来りマナーの勉強、午後はお茶会など自由な時間を過ごしていいらしい。


 セシルは薬師学科に行ってマイクさまの手伝いをするつもりだ。

 リリーもなるべくセシルと一緒にいたいと言った。


 夕食はセシルとリリー以外誰も食堂にいなかった。それぞれ諸国会議で来ている他国の人たちと会合らしい。


 リンダもタイラさまと同伴でいなかった。


「セシル!!」


 食後のお茶を飲んでいる時に、ルークが食堂に入ってきた。


「具合はどうだ?」

「だ、大丈夫……です」


「そうか? よかった……」


 ルークはセシルの顔をじーっと見て、ほっとした顔をした。


「セシル、庭を散歩、しよう。一緒にして、くれ、ください」


 ちょっと困った顔のルークが可愛かった。


「はい」


 ルークの左腕にセシルも右腕を絡めた。

 ニヤニヤ顔のリリーと、最初一緒について来ようとしたディランにおやすみの挨拶をして別れた。セシルたちの後ろには、もちろんルークの護衛たちと側近がいる。


 最近、レイさんを見ていないから彼がどうしているか尋ねたら、「レイは女たらしだから、リリーとセシルに会わないようにしている」とぼそっと呟いた。

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