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「タイラもキディア卿も双方落ち着け」
セイズ王がため息を吐く。
「リンダをはじめリリーやセシル姫の身分はきちんとしている」
「しかし! リンダさまやセシル姫さまの身分はきちんとしておりますが、リリーさまの父親は誰か分かりません。どこの馬の骨の血の者をセイズ王族に籍を置くことはなりません」
キルディア侯爵の意見に賛同する声があちらこちらでした。
「分かった。みなが納得いくよういくつかの発表をここでしよう。本来なら会議で発表する予定であったが……」
「はあ」と陛下はまたため息をついてキルデイア卿をはじめとした異議を言った貴族たちを見た。
「まずはじめに。ミチル国のスクイ殿下の要望について、アリス姫、そちはラング国の次期王妃と主張するか?」
アリスお姉さまは一旦セイズ王へ礼をした後に返事をした。
「いいえ」
「なっ、アリス! なにを言っているんだ!」
アリス姫の隣にいるスクイ殿下の焦った声で怒鳴った。
「陛下、発言をよろしいですか?」
「ああ」
隣にいるスクイ殿下の声が聞こえないかのようにアリスお姉さまが言った。
「わたくしは母上を殺した故ラング王の娘ではありません。兄上もあの犯罪者と血がつながっていません」
「なにを言うか! アリス! 陛下、アリスは母親を亡くして気が触れているのです! アマンダ、アリスを連れて部屋へ戻れ」
スクイ殿下がアリスお姉さまの腕を乱暴に掴んだ。アリスお姉さまはスクイ殿下を一瞬睨んだ後に腕を振り払って、背丈を伸ばしまっすぐとセイズ王を見た。
「わたくしは理性を失っていません。このことはすべてのラング国民が知っていることです。わたくしと兄上はラング王妃の不義の子どもと言うことは公然の秘密です。
それゆえ、わたくしは遺産相続についてもなにも言いません。
そしてわたくしの母親は確かにミチル国の王女でしたが、わたくし自身ミチル王族ではありません。わたくしはすでに成人していますので、今後はセイズ国民として生きていきたいです」
以前会ったアリス姫といまの彼女は本当に同一人物なのだろうか……。
「アリス! お前はミチル国で王族として認められるのだ!」
「スクイ叔父さま。この一ヶ月、ミチル国を見ました。わたくしはセイズ国民として生きていきます」
「アリス姫。なぜ自分から前ラング王の娘ではないと告白するのだ?」
セイズ王が面白い物を見つけたようにアリスお姉さまに尋ねた。
「故ラング王妃、わたくしの母上は間男たちと贅沢な生活をしている悪女と知られています。
母上は政略結婚でしたが、美しいラング王と結婚を喜んでたそうです。母上はラング王に恋をしていました。
嫁いだ後に、母上は無理やり押し付けられた嫁で、敵のミチル王女と言う立場を、ラング国で生活するにつれて思い知らされました。
自分がラング王に嫌われていると知った後も、跡継ぎを産めば自分のことを愛してくれると思っていました。けれど、ラング王は母上に『お前は決して私の子どもを妊娠しない』と言ったそうです」
「そんなことがあるか! あいつはそんなことを兄上や私に一度も伝えたことはない!」
スクイ殿下が真っ赤な顔をして否定した。
「母上は前ミチル王から子どもを作れと頻繁な催促を受けて精神的疲労を感じていました。そんな中、ラング王にはすでに側室がいたと知ったのです。そしてラング王は彼女を愛していて、自分は一生憎まれると。
だから母上は本国の希望通りに子どもたちを妊娠しました。
兄上は自分がラング王家の血を継いでいないと言う事実を受け入れずに自分が将来ラング国王になると言っていました。なにより兄上が一番欲したのは、傾国の美女のルネンの娘だったのです。
兄上は本当にミチル王族の男たちにそっくりです。
わたくしはもう二度と母上のように、ミチル国の男たちの駒になりたくありません」
「そんな馬鹿な! アリスはラング王家の血を継いでいる! 正当なラング王家の姫だ! ラング王家の国宝を受ける権利がある!
戸籍でもアリスはラング王族となっているはずだ! 第一アリスの母親はラング王妃だ!」
「アリスお姉さま」
セシルはアリスお姉さまが泣いているように見えた。でも実際は彼女は泣いていない。
「セシル姫。わたくしはあなたの姉ではありません! わたくしは犯罪者の娘ではありません!」
ディランや数人の元ラング国貴族たちがアリスお姉さまに文句を言った。
「ラング王は妻を愛さずに苦しめて、最後に妻を殺した犯罪者よ! あなたに姉と呼ばれたくないわ。あなたはラング王から愛された女の娘だから……」
アリスお姉さまがセシルを見て言った。
「いいことを教えてあげますわ。
ラング王ははじめから母上の存在を存在しない者として接していました。
愛しい人から自分の存在がない者とされる苦しみが分かりますか?
無視されると嫌われた方がいい、憎い女と愛しい人の目に映りたい……。
母上は愛する男に愛されないなら、嫌いな女で一番になろうとしたのよ。ラング王の心にきちんと母上がいた。ラング王の心に母上は世界で一番嫌いな女と刻まれたのよ。最後にラング王に殺されて、母上は幸せだったに違わないわ。
だからわたくしはラング国で母上のために『悪女の娘』を演じていたわ。でも、もうわたくしはあなたに関わりたくない。わたくしはミチル国にも関わりない生き方をしたいの」
凛と話すアリスお姉さまは綺麗だった。
「だから陛下。わたくしは元ラング国民として、セイズ国民として生活をしていきます。お認めください」
アリスお姉さまが綺麗な礼をした。
「……わかった。アリス姫は、いやアリス令嬢は一代限りの侯爵の身分を与え、我がセイズ国貴族として認める。ラング国からの年金の他にセイズ国貴族の年金も支給される。その他、ラング国保有の王都屋敷の一つを与える。そして数人の使用人及び護衛を与える」
セイズ王の言葉で周りがざわめいた。
「アリス嬢。家名はそちの新たな門出にふさわしい名前を付けるといい」
「ありがたき幸せに存じます」
アリスお姉さまは頭を下げた。
「アリス! お前は叔父を裏切るのか!」
「スクイ殿下、アリス卿は我がセイズ国貴族だ。軽はずみな言葉を謹め。
次の苦情は、ああ、リンダたちがセイズ王族にふさわしくないと、だったな」
セイズ王がキルディア侯爵を見て言った。




