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 食事は他国の王族を招いた時以上の、気合の入った料理だった。


 ニヤニヤした顔のヤーリが自ら食事を運んだ。セシルも不思議な顔をしてヤーリと会話を交わしていた。


「ルーク、今夜はどうしたの? なにこのフルコースは? デザートがアイスクリームなんて。氷をどこで手に入れたのよ、ってヤーリに聞いても『特別です』って返事ばっかり」


 またセシルが知らない言葉を話した。セシルの知っている人たちに、彼女の使う不思議な言葉について聞いたが、誰も知らなかった。


 ずっとセシルと一緒にいるリリーもリンダも知らない。

 ラング国の神殿長が言うには、神童と呼ばれる天才は自分の言語を作り出すらしい。


「氷は冬の間に地下室に保存しているんだ。まあ、氷はセイズ国の北で冬の間で集めて、王宮の地下室に保管している。

 この辺りはラング国より南だから、氷を保存している地下室はかなり深いところにある。


 料理もそうだが、このデザートはすごいな。はじめて食べたよ。さすがヤーリだ」


「アイスクリームです。ミルクと砂糖と氷でできているの。でも、まさかバニラもあったなんて。私は苺なんかの果物を混ぜたりするって教えたら、まさかバニラアイスを作るなんて天才すぎ! こうなったら、ヤーリよりチョコレートを先に見つけて、ギャフンとしなきゃ」


 この料理もセシルが考えた料理だった。目の前に座っている美しい女性は、ルークにはもったい過ぎる。


「セシル。さっきより顔色がよくなってよかった」


「えっ? 顔色、そんなに悪かった? 分かった。ルーク、ノエールさまから聞いて、私を心配したから、こんな素敵な食事に誘ってくれたんでしょ?」


 セシルは顔をしかめた後に、「ありがとう」とルークに笑った。


「セシル。セシルはもう俺たちの家族だ。だから、父上も兄上も、もちろん俺も、セシルたちのことを守っていく。だから周りの言う言葉に惑わさないでくれ」


「うん。ありがとう。それは分かっているけれど、あんな風に言葉にされると落ち込んでしまって」


 しっかりしているセシルだが、十六年間ずっと箱庭で育ったから対人関係は難しく悩むのは当たり前だ。


「あの者たちの相手は俺でも疲れる。

 食事に誘ったのは、もちろんセシルのことを心配したのもあるが、それよりもっと大切なことを伝えたかったんだ」


 セシルも食事にリリーを誘わないか尋ねてきた。今夜、リリーは兄上と食事をしている。ふと兄上の気になる人と言うのはリリーなのではと思ったが、舞踏会のパートナーとして親睦を深めるらしい。


「大事なこと?」


 ルークは席から立ち上がり、セシルの隣に片膝を着く。


 セシルは驚いて席を立とうとしたが、ルークはそれを止めさせて、自分の方を向くように座り直させた。


「セシル」


 戸惑っているセシルがなにか言おうとする前に言葉をつなげる。


「セシル。俺は、私はセシルが好きだ。愛している。結婚して私の妃になって欲しい」


 キャンドルライトでしっかりとセシルの顔が見える。ルークの言葉の意味をゆっくりと理解したようだ。意味を理解した途端、キャンドルライトの中なのに真っ赤になった顔がしっかり見える。


 どんな顔をしていても、セシルは綺麗で可愛い。自分の言葉でこんな可愛い顔をしてくれて、こんな顔を見れたのだから、告白してよかった。


「えっ! けっこん???」


(しまった! お付き合いの前に結婚って言った!)


「好きだ。愛している。結婚を前提で、お付き合いをしてください!」


 ごまかすために言葉を言ったせいで、語尾が上がってしまった。


「愛しているって言った? なに、この状況。腐女子のお一人さまにとってめちゃくちゃハードル高い。って、これってどう言うこと? BL恋愛で検証すべきだよねえ……」


 セシルがブツブツ空の方を見ながら言っている。


「……。セシル?」


「えっ? あっ、うん。はい。うん。私、も、ルークのこと、が、好き、です!」

 

(セシルと結婚!!)


 ルークは立ち上がりセシルを抱きしめようとした。


「でも、私、ルークのことを好きだけれど、ごめんなさい。結婚前提のお付き合いとか、今考える余裕なくて」


 ルークは立ったまま、固まった。


「そ、そうか。父親を亡くして、外国に住んで、いきなりセイズ国の王族になって大変な時期だしな。

 大体、後宮から出たばかりで、世間に慣れていない上に、人間関係など、とくに恋愛など……ごめん。

 いや、ごめんじゃない。

 俺は自分の気持ちをセシルに伝えたかったんだ。ゆっくりでいい。俺がセシルを好きで、いや、愛おしいと思っていると知っていて欲しかったんだ。


 返事は今じゃなくていい。何ヶ月先でも何年先でもいい。セシルが俺の気持ちに整理ができたら返事をしてくれ。例え、その返事が俺と一緒じゃない未来でも、俺はきちんとセシルの気持ちを受け入れる。


 どんな返事でもセシルは俺にとって大切な愛おしい人だ」


 セシルが隣にいない人生なんて嫌だ。だがルークは愛おしいセシルを困らせたくないし、彼女を守っていきたい。


「ルークは私のどこが好きになったの? 顔? 王女だから? お金?」


 セシルの顔は真剣だった。セシルの綺麗な顔に惹かれた。ずっと見ていたい。彼女が王女だったから、身分に悩まされないでいいと思ったのは確かだ。セシルの私財も、王子の自分と結婚する時に他の貴族たちにバカにされないですむと思ったのも事実だ。


 でも、セシルへの返信は、今後の二人の関係に深く関わると、本能が警告する。


「俺はセシルが好きで愛している。はじめて会った時に、リリーとリンダの命乞いした姿を見た時に、なにを勘違いしているのか驚いたけれど、それ以上に他の者のために自分の命を捨てる決心が王族の姿で惹きつけられた。


 そしたらいきなり庶民として生きて行く、って出て行こうとするし。


 俺はセシルのことが分からない。随分な大人と接している時もあったり、幼い子どもと話している気がすることもある。


 すごく教養があると思ったら、常識を知らないことがある。と言っても、後宮を出たことがないのに、庶民の生活に馴染んでいる。


 セシルの中に数人の人物がいるような気が何度もした」


 セシルが驚いた顔をして、ルークの言葉を一言も逃さないように見ている。


「セシルを見ていて目が離せない。でもどんなセシルでも、人に優しく、人を身分で見ずに平等に接して、おいしい物を食べる時に目を輝かしていて、どんなに辛くても前に進もうとする姿が愛おしい。


 そんなセシルに惚れた、愛している」


 セシルのアメジストの宝石から、水晶がポロポロ流れ落ちた。

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