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 セシルと家族になれた……従妹になるが嬉しい。食事会後、ニヤニヤした顔をどうにかしてくれと、側近のレイに何度も注意をされる。

 次は従妹から夫婦になるように頑張らなければいけない。『セシルと夫婦』なんと素晴らしい響きだ。その前にしなくてはいけないことが多い。


 結婚の前にお付き合いなのだが、王族として育ち恋愛など興味がなく意識していなかったからどうすればいいか分からない。


 ……セシルの心を掴むと父上に立派に宣言したが途方に暮れている。一体なにからすればいいのか……ルークの側近たちも男と女のことになるとルーク並だ。てっきり女性なれをしていると思っていたレイさえも、「女性の心を掴むコツは、雲を掴むコツと同じです!」と言っている。不可能って宣言しているようなアドバイスをするレイには、きっちり多く仕事をまわした。


 父上に王宮内の、特にソフィアの父親キルディア侯爵の管轄の内務省について調べるように頼まれた。


 世渡り上手なレイはあっちこっちの協力者(女たち)からいろいろ情報を集めてくれている。


 キルディア侯爵は 閥族派の多くを内務省の重要な地位に着けていた。特に南の貴族が多い。父上もそのことに気がついていなかった。


 元々、庶民派の北の貴族たちは外務省に多く、中立派は軍に着く者が多かったが、以前は均等にそれぞれの派閥がそれぞれの部署にいた。

  閥族派は内務省の他にマリアンナの父親クレード伯爵を筆頭に軍隊の中でも大きな派閥になっている。


 この報告書を父上に渡した時の顔を忘れない。


 ソフィアの父親キルディア侯爵は一体なにをする気なのだろうか。


 セシルに会いに行きたいが、腑抜けな叔父上の代わりに仕事をしなければいけなかった。セシルたちが安全で暮らせるために、王宮内の掃除をしなければいけない。


 王族居館の使用人たちからセシルたちの様子を聞いている。

 

 舞踏会が終われば少しは余裕が取れるはずだ。その時は本気を出して雲(セシルの心)を掴まなければならない。


 今日セシルは学園の薬師館に行っている。従兄のマイクと会うと聞いた時に自分も一緒に行こうとしたが、レイに「束縛する男は嫌われます」と言われた。仕方なく叔父上の部下のミックに、しっかりと護衛を頼んだ。


「ルークさま。ノエール殿下とステファンさまが面会に来ています」


 ミックの報告を待っていたら、兄上たちが執務室に来た。


「ルーク。失礼する」


「兄上! ステファンもどうしたのですか?」


 兄上とステファンは難しい顔をしていた。


「さきほど、セシル姫とリリー姫に会った」


「兄上たちは学園へ行っていたのですか?」


「いや、王宮内にいた。学園から歩いて居館に戻ったそうだ」


「……はあ……」


 高貴な令嬢が30分もかかる距離を歩くなどない。セシルとリリーのことを少し知っているルークでさえも、普通の令嬢と違う二人のことをどう兄上たちに伝えればいいのか分からない。「セシルだから」とすべて納得してしまう台詞を言うべきなのだろうか。


「普通馬車があるのに徒歩する令嬢たちがいるとは……。ラング国では高貴な女性はセイズ国の令嬢と違うのだろうか……。


 まあ、それはいいとして、セシル姫とリリー姫がソフィアとスクイ殿下とアマンダ殿下が会話をしていた」


「はっ!! なんだと! どこだ。セシルはどこにいる? セシルは大丈夫か!?」


 ルークは椅子から立ち上がりドアの方へ行こうとしたが、兄上に腕をひっぱられた。


「セシル姫とリリー姫はきちんと部屋へ送ったよ。

 ルークはセシル姫のことが好きなんだな。そうか呼び捨てをする仲なのかあ」


 兄上がルークの顔を見て穏やかな顔をしている。ルークの顔が急に熱くなった。


「ち、違う! そ、それも違う! だから、そんなことよりセシルの様子を見に行かないと!」


 否定しようとしいたが、セシルを好きと言う気持ちを否定できないし、したくなかった。


「ルーク。私たちは王族だ。多くの者たちの意図で人生を翻弄されやすい。

 もし好きな人ができたら、その人の心をしっかり掴んでいないと周りに奪われてしまう」


「あ、兄上は好きな人の心を掴む方法を知っていますか?」


「ああ。きちんと相手に、好きと、愛している、と言葉にすることだ。何度でも何度でも相手の心に届くように言葉にしなければいけない。


 私は第一王子として、王位争いをなくすにはどうしたらいいかといろいろな人に聞いた。


 ルークと私は同じ母親を持つから他の国から見たら王位争いなどないように見られるが、歴史の仲で同腹の子どもたちで王位争いしている国もあった」


 セシルに「愛している」と伝えなければ、と兄上の言葉がストンと響いた。


 だがどうして王位争いなどと言う話になるのだろうか?


「次期王位に着くのは兄上です」


「ああ。そうだ。私はルークが弟でよかったよ。

 セス殿が『ラング王は誰に対しても言葉を伝えることを努力されていました』と言われた。王位争いについて聞いたら、そう言われたんだ。


 だから私はルークにもタイラ叔父上にも、常に大切だと言葉にして接してきた」


 兄上は兄上だ。


「他国で兄弟で王位争いがある。私は一度たりともルークやタイラ叔父上、ましてはマイクたちが王位を欲しがっていると思ったことがない。

 みんな、私以上に私を大切にしてくれる。


 だがソフィアは私を従兄で家族と言うより王子としての地位を見ている。ソフィアにとって家族より地位が大切なようだ。

 私はソフィアを可愛い従妹と接してきたが、残念だが彼女にはその気持ちが届かなかったようだ。


 ルーク。私たちは王族だ。セシル姫は国を失い家族を失ったばかりだ。彼女のことを本当に愛しているならきちんと言葉にして彼女を守らないといけない。


 もし彼女の心を捕まえることができなくても、愛した女性が安全でいられるように守るのが騎士だ。なによりセシル姫はもう私たちの従妹だよ」


 兄上はいつだって優しく立派な王子だ。ソフィアは兄上や自分のことを王子として見ていたことに気づいていた。ルークも兄上の言いたい言葉に気づいた。


 もうソフィアは家族としてルークたちが守る相手ではない。ソフィアがルークたちを身分でしか見ていないのなら、ルークたちも彼女を身分として見る。ソフィアよりセシルを守る。


「兄上は、どなたか好きな女性がいますか?」


 兄上がキョトンとした顔をした。


「弟と女性について話すのは楽しいな。今度酒を飲みながら恋について語りたいものだ。

 あいにくルークがセシル姫を思うような気持ちを持つ女性はいないよ。でも少し興味深い女性が最近できたかな。ルーク、安心していい。セシル姫ではない」


 ルークは恥ずかしくなって顔をしかめる。


「兄上、ありがとうございます。俺、セシルに会って来ます。他の者たちに自分の人生を翻弄される前にセシルの心を掴んできます」


 ルークは兄上に頭を下げて、セシルに自分の気持ちを伝えるために部屋を出た。

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