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王族の居館にルークも住んでいるからもっと頻繁に会えると思ったのに……なぜか会えない。セイズ王族となっていまだに自分の環境の変化に戸惑いどんな風にルークと接したらいいのか分からない状態だったから彼に会えずにほっとしている自分もいる。
滞在する部屋にラング国に置いていった自分の服や小物があった。リリーやリンダの部屋にも二人の物があった。
タイラさまとルークがセシルたちのためにセイズへ運ぶように命令したと聞いた。ルークは元からきちんとセシルたちを保護する予定だったんだ、と知りルークの元へ行ってお礼を伝えたかった。でも食事会の日から数日経つのに彼に会っていない。
宿の荷物も自分たちで取りに行けなかった。ジョニーたちにもちゃんと挨拶したかったのに許可がでなかった。ラングの箱庭にいた時より自由がなくなっている気がする。
舞踏会までなるべく王族居館から離れないように言われたけれど、そろそろこの軟禁状態にリリーが爆発しそう……もちろんセシルもだ。リンダはタイラさまの妃としとしてのマナーや行儀などの花嫁修行で一日中忙しくている。開いた時間にはタイラさまがリンダを独占していて、おしゃべりができない。
リリーが自分で料理をすると居館のキッチンへ行ったら、セイズ国の使用人たちに涙を流しながら止められた。ヤーリがセシルとリリーが料理できるように口添えしたけれど、セイズ国の使用人たちがセシルたちが火傷や怪我をしたら大変なことになると言われた。無理を言って料理をする気にもなれなく諦めた。
一ヶ月後の結婚式が終わればタイラさまのタウンハウスに引越したら料理できるようになるよ、とリリーを慰めた。
ヤーリはアリスイさんの所で料理の勉強をしている。昨日の晩ご飯はチキンファフィータだった。やっぱりヤーリは料理の天才だ。セイズ国ならではの伝統料理に上手に手を加えて、セシルが教えた前世の知識にあるメキシカン料理と合わせて新規な料理を作り出す。
もうメキシカンじゃなくてセイズカン? になったのだろうか……。
王族居館に軟禁されて? 五日後に、薬師学科に行った。諸国会議があり学園は休学で生徒がほとんどいないからと許可された。
紫の薔薇の苗木の一つを薬師学科にあげた。マイクさまから丁寧なカードのお礼をもらった。カードからほんのりと草木の匂いがした。
リリーと王族居館から学園まで小型な馬車に乗って行った。ディランはリンダの護衛をしている。同じ敷地内に学園があるのに、馬車で十五分かかった。途中でいくつかの門をくぐった時に検問があったけれど王族の馬車だったから止められなかった。
薬師学科は内壁の外れにあり、薬師学科の生徒以外は人がいない。
「セシル姫さま、リリー姫さま! お待ちしておりました」
マイクさまが薬師学科の建物の前で待っていた。マイクさまはルークのいとこだけれどあまり似ていない。セイズ国特色の褐色肌に茶色のウエーブがかった長髪を後ろで結んでいる。年齢は二十代後半くらいで、洗練された物腰が王子さまのようだ。
マイクさまが数人の助手たちを紹介した。セシルたちの身分については正式に発表していないので、セスさまの愛弟子と紹介された。
今回は他の教授たちや薬師学科の偉い人たちはいない。
セシルとリリーが挨拶をしても、助手の人たちはポカーンとした顔で二人を凝視して固まっている。
リリーが可愛いのもあるけれど、ラング国民が珍しいみたい。
マイクさまは腑抜けた助手たちに苦笑笑いをした後に建物を案内した。建物の中は日本の学校と同じだ。薬草を調合する部屋は化学室のようだった。
中庭には畑があり薬草を植えている。セイズ国はラング国より南にあるから、薬草の育ちがいい。
「やはりグリーンハウスはないのですね……」
とーさまはグリーンハウスを他国に教えなかったようだ。ラング国内でもガラスでできたグリーンハウスは高価で少ししかないと聞いた。
「グリーンハウスですか? セスさまに話に教えてもらいました。セイズ国にも取り入れようと思っていた所で、ラング国へグリーンハウスについて問い合わせていました。しかし今回のことで、いつグリーンハウスができるか分かりません。
セスさまにもセイズは比較的に温暖な地域だから急いで作る必要はないと言われました。
でもいくつか熱帯地域で栽培される植物の種がありますから、ぜひグリーンハウスは作りたいと思っています」
セスが何度もセイズ国に来ていた。今思えばとーさまの薬を探しに来ていたのだろう。
「セシル姫さまやリリー姫さまはセスさまより多くの植物の生態を知っていると、セスさまより聞いております。
ここには名前や生態の分からない種や植物があります。もしよければ、その生態について教えていただけないでしょうか?」
本来ならマイクさまの方が身分が上なのに、彼が頭を下げた。
セシルたちの後ろにいる助手たちは、マイクさまを見て慌てて頭を下げた。
「マイクさま、どうぞ頭をあげてください。わたくしたちでよければ力になります」
「マイクさま! 私、あっ、いえ、わたくしはセーちゃんほど詳しく分からないけれどお手伝いさせてください!」
リリーはずっと暇だったみたいで仕事ができるのを喜んでいる。
未知な植物の生態を知っているのは、緑の民のセシルしかいない。
前にセスが、セシルがセイズ国学園で薬草について調べて欲しい、と言っていた。とーさまにセシルをセイズ国へ連れて行きたいと言ったが断れた。
とーさまもセスが病気を治す薬草を探していると知っていたけれど、セシルの安全を選んだのだろう。
一通り建物を見た後に、マイクさまの研究室でお茶を飲んだ。
マイクさまの部屋はゴミ一つないくらいにきちんと整理整頓されていた。研究室はもっと汚れたイメージがあったから返って驚いた。部屋には本がきちんと本棚にあり、窓辺にはいくつもの植木はあった。
マイクさま付きの執事がお茶を入れてくれた。ハチミツ入りのユッパ茶だった。
「まあ、マイクさまもユッパ茶を飲むのですか?」
「ええ、紅茶のように香りがないですが安いので好んで飲みます」
マイクさまがにっこり微笑んだ。
「マイクさまは王族で偉いのに、お金を気にするの?」
リリーが聞いた。
「ええ、貴族らしくないと言われますが、おいしいのなら値段の安いものを選びます」
優雅にティーカップを持っている姿が貴公子だけに、ギャプ萌をしてしまう。
「まあ、マイクさまは私、えっとわたくしたちと同じですね」
リリーもマイクさまの株がいっきに上昇したみたい。
「そうですか。セシル姫さまとリリー姫さまと同じですか? それはうれしいです。
でも本音は、珍しい植物を他国から仕入れているので、自分に動かせる資金の節約をしているのです」
マイクさまは公爵家のお金を使いたくなく自腹で植物を集めていた。
「セシル姫さまのように自分で資金を稼ぐ能力がないので、節約できることをしています。
多くの植物や薬草を集めて、この国の人たちを助けれればいいと思っています」
マイクさまはどこかとーさまに似ている。一緒にいて落ち着く。
「マイクさま、ラングからいくつかの種を持ってきました。マイクさまにいくつか譲ります」
「えっ、いえ、いいのですか? 代金はきちんと払います」
「代金は気にしないでくさい。それではマイクさまの所持している植物と交換していただけませんか?」
「もちろんです」
マイクさまが優しい眼差しで微笑んだ。
かーさまが創造した薬草の種はセイズ王へ渡した。お土産をセイズ王へ渡した時は不思議な顔をした後に笑って受けった。
貢ぎ物じゃなくて、お世話になるからお土産と伝えたのがいけなかったのかもしれない。
王妃さまに香水のサンプルのボトルをあげようとしたら、匂いは頭痛がするからいりません、とそっけなく言われた。隣にいた陛下が慌てて香水のサンプルの箱を受け取り、「ラングの香水は高価でなかなか手に入らないのだ。これを城に働く女官たちに、セシル姫たちからと配っていいか?」と言われた。
次の日にすれ違う女官たちからいい香りがした。その度にお礼を言われた。王族居館にいる女性の使用人たちがさらに優しくなったのを気のせいだろうか。
もちろんマイクさまのお母さまのサイーズ公爵夫人やテイーズ辺境伯夫人にもサンプルをお土産にあげた。二人共、大変喜んでくれた。
マイクさまとのお茶会はあっという間に過ぎた。
薬師学科からの帰りは歩くことにした。ここ数日運動不足で太ってしいまうと、リリーと一緒にわがままを言ったら、護衛についていたミックさんがシブシブ承諾してくれた。
護衛はタイラさまの部下のミックさん以外になぜか近衛兵が三人もいる。
近衛兵たちには、セシルたちについて王族の大切な客人と説明された。もちろんリンダがタイラさまと結婚することを正式な発表まで他言無言で伝え教えた。
それで自然とリンダの娘のリリーと、そのおまけのセシルを王族並の護衛対象に認定したみたい。
それにしても同じ敷地内にある学園に行くのに護衛が四人なんて多すぎる。
これでも外出すると今朝女官長に伝えた後に十人の近衛兵たちが護衛をすると入り口にいた時は驚いた。近衛兵は暇な仕事なのかと思ったけれど、なぜか勤務時間じゃない近衛兵たちもいた。
どうやらセイズ国の兵隊たちは仕事熱心のようだ。
でもそれにしては、ぼーっとリリーやセシルの顔を見ている。
馬車に乗らないのなら、王宮内でもサリーを被り目立たないようにとミックさん言われた。
「まったく自分たちの容姿について疎すぎだ。もう下手に問題を起さないでくださいね」と言われた。リリーが「セーちゃん。ミックさん、なんて言っているの?」と耳元で聞かれたけれど、セシルも意味を理解できなかった。
「きっとラング人が珍しくて、えっと、つまり外人を見かけて『ヘロ~ グッドモーニングー グッドバーイ』って英会話の練習する人たちが多くて対応が大変になるって言うことなのかな……」
「もっと分かんなくなった」
と、リリーがため息を吐いた。
相変わらずセイズ王宮は全部同じ建物に見えてしまう。一人で歩くと絶対に迷子になってしまうだろう。




