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「そ、それよりお米があったの! これで料理革命が起こせれるわ! とりあえずメキシカンから。でね、和食。そうそう醤油は上手く作れたかな?」


「お米とは? メキシカン? 和食? 姫さまのおっしゃる料理がなにか分かりませんが、醤油は実に素晴らしい物です! まだ改良が必要だそうですが、まさか大豆と小麦粉と塩であのような美味ができるなど、一体誰が想像できたのだろう! やはりセシルさましかいません!

 来週にタルードさまが醤油を持って来ます。ぜひ醤油を作った料理を教えてください」


 ヤーリは天才だ。彼がセシルのことを天才と思っているけれど、セシルのい料理は全部前世の記憶。食べたいと思った料理を曖昧にヤーリに伝えたら、彼がそれを実現してくれる。醤油も味噌もそうだった。一応料理番組を見て自宅で作ろうとした。結局は母親か家の誰かが作った記憶がある。臭かったと記憶で覚えていた。


「「おじーさまが来るの?」」「おとーさまが?」


「元々タルード卿は諸国会議に参加することになっていた。私とリンダの婚姻のことを知らせた早馬を既に出した。結婚式までここに滞在してもらいたいと思っている」


 タイラさまが言った。

 またおじーさまと会うことができると知り、リンダもリリーも、もちろんセシルも嬉しくなった。




「父上、来週の舞踏会でリンダさまたちの発表の時に、セシル姫のエスコートをわたくしがしてもよろしいですか?」


 ノエール殿下がセイズ王に尋ねた。


「俺がセシルをエスコートする!」


 さっきから機嫌悪そうにセシルを見ていたから、ルークになにか悪いことをしたかな、と考えていたから驚いて彼を見る。


「いや、その、セシル、姫、と俺、私は、面識があって、そうだ。面識がある者の方がセシル姫も安心するだろう。だから私がエスコートする」


「そうか、では私はリリー姫のエスコートをしよう」


 ノエールはにやけた顔でルークを向いて言った。


「ダメよ。ルークはソフィアのエスコートをする予定です。ここでみなさまにきちんと言っておきますが、ソフィアはわたくしが幼い頃から王妃になるために教育してきました。ソフィアをノエールの妃にと思っていたけれど、お互い性格が合わないようなので、ルークの嫁にします」


「はあ!!」


 王妃の言葉が胸を刺す。なぜか分からないけれど、心の一部が砂時計のように削られていく。


(ルーク……)


 セシルはルークになにを期待していたのだろうか……。友だち? 家族? 自分の気持ちが分からないけれど、ただ心が痛くて叫びそうになった。


「俺は絶対にソフィアと結婚しない! エスコートは約束だったからするが、結婚などしない!」


「子どもたちの結婚相手はそれぞれが好きな人を選ぶと話し合ったではないか。結婚はルークの好きなようにさせる」


 セシルの耳にセイズ王の言葉が聞こえていなかった。ただ目の前が真っ暗で、どうして自分はこんなところにいるのだろう、と考えていた。


 やっぱりセイズ国にいられないと言う気持ちが溢れ出す。


 リンダには悪いけれど、セシルは頃合いのいい時にセイズ国を離れる決意を決めた。リンダはタイラさまに愛されてセシルがいなくなっても大丈夫。リリーも新しい家族ができて、セシルの側にいなくても大丈夫。


 ルークは大国の王子。いつか誰かと結婚する。たとえそれがソフィアでもなくても。その時にセシルはルークの結婚相手を祝福なんてできない。


「嫌よ! ソフィアをルークの嫁にします! これは決定なのよ!」


「落ち着け」


「本当は人殺しをするような残酷な人の子どもをセイズ国王族に迎え入れたくなかったけれど受け入れるわ。それに子持ちでラング王の妾なんて、タイラさまの結婚相手になんてふさわしくないのに。本来なら反対だけれど、ここはわたくしは折れます。

 だからソフィアとルークの結婚は、そちらがきちんと受け入れてください」


 ルークのお母さんはおっとりした印象なのに、やはり王妃だと思った。


「言葉が過ぎるぞ。すまぬ、王妃は体調が優れないから退室する」


「ちょっ、と、あなた」


 ベルを鳴らして使用人たちが入室した。セイズ王の命令で王妃が部屋を出て行った。


「みなの者すまぬ。王妃はここ数年体調が悪いのを知っているだろう。最近は情緒不安定でかなりの睡眠薬の薬草を摂食している。睡眠薬だけのせいではないが、最近は王妃の妹のキルディア侯爵夫人とソフィアの言葉を鵜呑みにして他の者の意見を聞き入れなくなった。


 今、医師やサイールと治療法をあれこれと試しているところだ。今は無理しない程度に公務に出ているが、本格的に治療をする予定だ」


 セイズ王の顔が苦痛で歪んだ。


「セシル姫にリリー姫。知恵を薬草の知恵をサイールに貸してくれないか?」


「「はい……」」


「殿下? お二人の知恵とは?」


 セシルたちにひどいことを言った王妃だけれど、ルークの母親だ。セシルとリリーはセスに病気を治せるのなら、相手がどんな人でも助けないといけないと教えられた。


「ああ、セシル姫とリリー姫はセス薬師の愛弟子だ。二人には学園で淑女教育を受けてもらう。そして、薬師学科でまだ用途の分からない植物について教えてもらいたいと思っている」


「セスさまの愛弟子とは!! さぞ優秀なのですね! 教員として薬師科に受け入れましょう」


「いや、あくまでも生徒としてだ。もしくは研究者としておいてくれ。もちろんセシル姫とリリー姫の勤労の義務はない。二人の好きなようにしてもらう。

 学園入学も元々必要ないが、この国に慣れてもらうつもりですすめたに過ぎない。みなの者もそのつもりで」


 サイールさまとマイクさまがセシルとリリーがセスの弟子と知った途端、薬草についていろいろ質問しはじめた。

仕舞いには明日学園の薬草園を案内してくれると言う話になった。


 セシルはさっき感じたルークへのモヤモヤの気持ちを隠すようにまわりの人たちとの会話を楽しんだ。

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