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 王族と昼食など、一体どんな罰ゲームなの! と思いながら、隣で放心状態のリリーの手を繋ぎながら食堂に着いた。王族が住む館と聞いた時はどんな豪華な場所か、とビクビクしたが違った。


 館の中は落ち着いたクリーム色で壁が統一されていて、本館の壁に飾られた鎧や剣の代わりに風景画やタペストリーが飾ってある。建物のあちらこちらには、摘みたての花が飾ってありヨーロッパの洋館のようだ。

 落ち着いた部屋だったけれど、いまから大国の王族に会うと思うと肩に力が入りあまり周りの環境を楽しめない。


 タイラさまの横にいるリンダの足取りが悪くて、いまだけはタイラさまの支えに感謝する。きっとリンダもリリーも、セシルと同じで、どうして自分たちの境遇がいまの状態になったのか理解できていないのだろう。


 本当は今頃旅に出る準備をしていた頃だ。それか南へ行く馬車の中だったかもしれないのに。


 部屋の中に入った途端一斉の目がセシルたちを見た。大国の王族はみんな美しい人ばかりで……ビビった。隣にいるリリーも怖気づいて固まっている。前世のオタク本の二次元イケメンたちが三次元にして目の前にいる。美形は年を取っていても、味のある美形だった……。


(イケメンは二次元限定でいいよ。私を見てもなにもによ)


 ついつい美形たちに見られて、動物園のパンダになった気分で悪態をつく。

 キラキラの王族の中にルークを見つけてホッとする。でもルークも立派な王族だったんだ、と彼との距離の差を感じて寂しくなる。


 セイズ王がセシルたちの説明をしている間も、ほとんど話が耳に入らなかった。ただこれからどうしようと。内心焦っていた。


 陛下がベルを鳴らすと、部屋に次々と使用人たちが昼食を持って来た。



 セイズ王の台詞を思い出してでハッと現実に引き返された。セシルたちが城に滞在しないといけない!!??


『ッ!!』


 隣にいるリリーが今にも泣きそうな顔をしている。リリーにとってもラング王城はトラウマになっているらしい。もちろんリンダにとっても。

 セシルは決心してセイズ王へ話しかけた。


「あ、あの。陛下、少しお聞きしたいことがあります。発言をお許しください」


「セシル姫。そちはわしの家族になる。家族にするようにわしにいつでも気軽に話してけると嬉しい」


 セイズ王が目を細めてニコニコしている。


「わたくしたちは今までのように宿に滞在しますので、部屋の準備などお気を煩わさないでください」


 ミリエリーさんと仲直りしたから、セシルたちがしばらく滞在を伸ばしても大丈夫だと思う。


「……セシル姫は宿に滞在したいのか?」


「はい。王宮に滞在するより宿の方が何十倍安いと思います」


「「「「……」」」


 隣にいるリリーはセシルの意見に同意して頭を縦に動かしたけれど、セイズ国王族はポカンとセシルを見ている。リンダはまだ放心状態で、意識がまだあるだけでもましかもしれない。


「……おっほん。家族としてワシの城に滞在してもらうのだが……セシル姫は滞在費を払わないといけないと勘違いしているのだろうか?」


 家族として庇護が必要な子どもだったらまだしも、セシルは立派な成人した大人だ(もちろんセイズではまだ成人じゃないけれど)。薬師としての仕事がある立派な大人だ。


 前世でも畑仕事をして内職やアルバイトをして手に入った収入の一部を、母親にちゃんと生活費として入れていた。じゃないと、どんなに家族同士仲良しでも、私用(特にBL萌集め)にばかりお金を使って他の家族に養ってもらったら円満家族にヒビが入る。ましては家族と言っても即席名前だけの家族に、養ってもらうなんてできない。


「もちろんです。ラングではわたくしは成人しています。ちゃんと薬師として働きます。両親からの資産もありますので、きちんと生活費を払います。なによりセイズ国はいま経済的に大変な時期ですので、わたくしの生活費用をぜひ国民にお使いください」


「「「「ハッ!???」」セイズ国が経済的に大変とはどういう意味じゃあ?」


 部屋が沈黙に包まれた。唖然とした顔でセイズ王族たちがセシルを見ている中、やっと言葉を見つけたようにセイズ王が聞いた。


「パンが高いです」

「「「「「????」」」」」


(セイズ王族は一々主食のパンの値段を知らないんだ!!)


 セシルは大国の一員になったけれど、この国のお偉いさんたちが抜けていると思い、この国の行く末を心配する。


「この国に一ヶ月生活していますが、パンが高くて毎日食べれませんでした。近所のおばさんやパン屋のおじさんに聞いたら、この二ヶ月小麦粉の値段が二倍になったそうです。

 セイズ国は小麦粉は主食で、小麦粉が第一輸出品なのに、二ヶ月で二倍の値段になるなど経済の崩壊になります!


 小麦粉の値段が跳ね上がったから、他の食物も値段が上がり、物の値段も上がって貨幣の価値も下がって。インフレになったらどうするにですか!


 盛り頭に小麦粉を振りまいている場合ではないのですよ! 第一、あの盛り頭、ダサいです。肩凝りになります。あんな頭の人に出会ったら頭に目がいって顔なんて見ないのに。まあわたくしのようにブスだったらいいけれど……(前世の自分だった……)

 話が脱線してしまった。そうそう小麦粉を頭にふったら不潔です。えっと、それじゃなくて、小麦粉は食べ物です。国民が食べ物に困っているのに、頭に振りまくなんて最低です。


 違った。えっと、別にセイズ国に喧嘩を売っているんじゃなくて。米一揆、違った、小麦粉一揆? そんな単語あった? つまり、セイズ国を心配しているのです。


 主食を食べられない国民の不満が王族や貴族にきます! 決して『パンが食べられなければお菓子を食べたらいいわ』なんて言ってはなりません!


 また脱線した。つまりこの経済不況の中、お金を取れるところで取らないとどうするのですか!!


 でもわたくしも今後のために賢く節約をするために、宿に滞在したいです!!」


「「「「「……………」」」」


 辺がしーんとしていた。


(しまった!!)


 ついつい雄弁で毒舌になった。どうしよう。どうしよう。どーーーーしよーーーー。


「わ、わたくしもセーちゃん、セシル姫さまに賛成です。宿に滞在します。


 えっと、それで、その。小麦粉は食べ物です……。頭にふりかけるなんて、セイズ国は不衛生な文化なんですね」


「「「「……」」」


 全然フォローになっていないリリーの発言。リリーは箱入り娘だったことを改めて思い知った。頭で身分制度を知っているけれど、生まれてずっと箱庭で育ったから仕方ないけれど……。


 リリーのためにも、また不敬な言葉を言わないためにも宿に滞在しよう。

 リンダが結婚したら、タイラさまのタウンハウスで生活すると言っていたから、リンダは大丈夫だ。もちろんセシルたちはリンダの新婚生活を邪魔したくないから、近くの借家でも探そうと思う。


「ところでセーちゃん。ダサいってなあに? セーちゃんはブスじゃないよ。小麦粉一揆ってなあに? インフレって?」


 空気を読んでいないリリーが小さい声で尋ねたけれど、部屋が静まり返っていたので響いた。


「リリー、後で宿に戻ったら教えるね」


「「「「…………」」」


「そ、そうなのか。パンの値段が高くなり国民が不満を抱いておるのか。セシル姫、貴重な情報を教えて、感謝する。

 まだ小麦粉の収穫時期ではないのに、地価が変動しておるなどおかしいことだ。じっくりこの件については調べて見る。

 だがセイズ国の経済不況を心配する必要などない。セシル姫たちは経済のことなど心配せずに王宮に滞在しなさい。護衛問題が一番の理由だ。いいな」


 最後の言葉は命令。護衛は緑闇がいるから大丈夫なのに。セシルもこれ以上セイズ王に反対して宿泊まりにするなどできないと、危険探知機(前世いじめられてたからマスターしたスキル)が教えてくれた。


「ワシも最近令嬢たちの髪型については疑問があったのだが、まさか小麦粉を使っていたのか……。それに誤解を解くためではないがセイズ国は決して不潔な民ではない……」


「陛下、わたくしもあの若い方々の最近の髪型に驚いていました」


「わたくしも王都に来てから、今の流行りと言われて目を疑いましたわ」


 公爵夫人と辺境伯爵夫人が盛り頭について話はじめたのをきっかけに、あっちこっちで会話の声が聞こえた。セシルはなるべく変なことを言わないように下を向いている。

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