75
「あの……。すみません。私の父親は一体誰なんですか? 私の父親は……おじーさまは、私のおじーさまじゃんないの……。おじーさまの息子、タルード伯爵家と、私と血縁関係にないって知っていたわ……。
違うの!! 私、知っていたの。お母さんを責めているんじゃないよ。
お母さんが、私のことを愛しているって知っているよ。で、でも、私の本当のお父さんのことを嫌いって知っているの」
「リリー」
リンダが立ち上がって、セシルの反対に座っているリリーの横に座って彼女を抱きしめる。
「っく、ひっく。お母さん。私の本当の父親が誰でもいいの。お母さんがいればいいの。ねえ、私のお父さんのせいで、お母さんは男の人が怖くなったのでしょう?
いいの? タイラさまと結婚して、本当にいいの? 怖くないの? お願い。もう私のためにお母さんが苦しまないで」
リリーの気持ちが痛い。セシルもセシルの安全のためとリンダが犠牲になるなんて嫌だ。大国セイズ王に反対してもリンダの気持ちを大切にするべきだったと、罪悪感で心が埋め尽くされる。
「リリー。私もリリーが娘で幸せよ。愛しているわ。いまはセシル姫さまとディランも私をお母さんと思って慕ってくれて本当に幸せよ。
ラングの後宮の生活は穏やかで楽しい日々だったわ」
「うん。いまのようにいろんな人に逢ったり、好きな所へ行ったりできなかったけれど。毎日、同じ日が続いたけれど、お母さんがいて、セーちゃんがいて、ルネンさまがいて、たまにおーさまがいて。
私も幸せだったよ」
16年、箱庭で閉ざされた場所で生きて可哀想と言う人もいると思う。でもセシルたちは幸せだった。単調な毎日で自由に外の世界に出ることもなかったけれど。毎日楽しかった。
「陛下に。ラング王にセシル姫とリリーが成人したら、後宮から出ることを聞いていたの」
「「え!!??」」
「私はずっとルネンさまの侍女として生きるつもりでいたの。でも、ルネンさまと陛下の様子を何年も見ていて、羨ましいと思っていたの。姫さまが語ってくれるお話の中にある恋愛模様の人物たちのことも羨ましいと思っていたの」
箱庭で記憶を思い出したらカップリングをメモしていた。リンダたちには恋愛物語と話てあげていた。もちろん元ネタはBLだったけれど、二人には男女の恋愛模様と話した。
「セシル姫とリリーも結婚して可愛い子どもたちを産むんだろう、と思って。そんな想像して幸せな気持ちになって。でも私もリリーの他に子どもが欲しいって言う気持ちが出て……」
「リンダ! いますぐにリンダそっくりのかわいい女の子をつくろう!!」
「スットーーーープ!!!! 野獣、歩く18禁、はんざーーーーい!! 警察はどこ!! 痴漢、お巡りさんはどこーーー!!」
ソファーから立ち上がって叫ぶ。
「「「……」」「緑の民はなにか呪いができるのか?」
「緑の民?」
セイズ王がボソッと呟いた言葉をタイラさまは聞き逃さずにきちんと聞いていた。
「兄上。どうしてこんな時におとぎ話の話をされているのですか? それよりリンダとの婚姻の紙に署名をしましょう。
ノブさまの許可の元、私とリンダの結婚を認めてくだい。もう一日たりとも一時間、いいや一秒とも待てません(我慢できん)ボソッ」
「「「!!!!」」」
ちゃんと聞こえた!! なにが嬉しくて野獣に極上のご馳走をただであげないといけないのだ!!
「おっほん。えっと。ちゃんとアシール神殿で豪華な結婚式をあげてください!! リンダとこっそり結婚したら周りになんて言われるか分かりません。
子作りはきちんとした結婚式をあげるまでダメです。
そうね。結婚式の準備やドレスなどに一年あればいいですか?」
「一年!! 一週間で十分だ」
「仕方ないわ。じゃあ、一ヶ月で。あっ、でも、ちゃんとリンダの意見を聞いてからね」
リンダとリリーが呆気ない顔でセシルとタイラさまを交互に見比べてくる。
「リンダ?」
「あ、はっ、はい。私は姫さまの意見に同意します。私はいつも姫さまの意見に従います」
すごくツッコミの入れたくなる台詞だった。
「いやあーー。ここまでわしの存在を忘れられると思わなかった。
タイラとリンダの婚姻の書類とセシル姫とリリーの養子縁組の書類の署名を今からするということで。
二人の結婚式は一ヶ月後にする。
二人の結婚とセシル姫たちのことは、来週ある諸国会議謁見の場でする。
リリーの父親は先月亡くなったミチル王だ。庶子だがリリーはミチル王国の王位第一継承権を持っている」
部屋の中は真夜中の墓のようにしーんと静まり返っていた。
驚異で誰も声を出せない。ただ一人、セイズ王が一旦全員の顔を見回した後に言葉を発した。
「いまミチル国はアマンダ王女が仮王とし、先ミチル王の弟のスクイ殿下が王代理となっている。アマンダ王女はまだ成人していないからな。
先ミチル王とスクイ殿下は双子のように似ていた。だからリンダは先日城で見たスクイ殿下を故ミチル王と間違えたのだろう。
ミチル国王権継承は男女嫡出を問わずに直系の第一子優先となっている。よって次はリリーが女王になる」
「そんな!!」
リンダとリリーの顔から血の気が引いた。二人は放心している。
「私はラング人です。セシル姫の侍女です。私はミチル国なんて知りません。私には女王なんてできません。私はずっとセシル姫と一緒にいたいです」
やっとの思いでリリーが言った。
「ミチル国は今荒れている。国が乱れはじめ、難民が多くなっている。 国家、社会という公を忘れ、王族が私利私欲に走り出した結果だ。王族の取り巻きや政治に関与した者たちが私利私欲に走り、国は崩壊寸前だ」
ミチル国についてはよい噂を聞いたことがなかった。ラングにいた時も、ミチル国についての情報は、とーさんが禁止したからか分からないけれど、手に入らなかった。
「ミチル国先王はラング国を乗っ取ることで国を立て直すつもりでいたようだ。
手始めとして、ラング国王太子、及びアリス王女はラング王の血が入っていない」
「!!!???」
義兄と義姉はセシルの兄妹じゃなかった。ノブさんもタイラさまもセイズ王からなにも聞かされていなかったみたいで吃驚してなにも言えない状態だ。
「不義の子たちだ。
ミチル先王はセシル姫を第二王妃に求めた」
「そ、そんな!! ラング国はミチル国より国力が強いはずです。だから、とーさまはそんな要求など簡単に拒否できたはずです」
たくさんの情報が一度に入ってきて、何がなんだか分からなくなってきた。
いつも読んでくださり、ありがとうございます。リアルが忙しいのでしばらく落ち着くまで更新が不定期になります。本当に申し訳ありません。完結しますので、最後までお付き合いしていただけると幸いです。




