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「ルーク。聞いて。ノエール兄さまはまたどこか行ってしまって。わたくしの無実を誰も証明してくれないのよ。ルークもセシル姫のせいで卒業研修評価が可で大変な思いをしたのに。どうしてルークは陛下に、叔父上にわたくしの無実を口添えしてくれないの」


 ノックもなしにルークの執務室に入ってきたソフィアが、挨拶もなしにいつもの台詞を言う。


「いまは忙しい出ていってくれ。別に今回のことはセシル姫の非ではない。俺たちの非だ。父上の判断は正しい」


 ルークの機嫌の悪い返事も気にせずにソフィアは次々に不満を言う。


 ソフィアはマリアンナを連れて何度もルークの執務室に来る。もちろん今回のことについて不平を言った後に、マリアンナをルークの側近にするようにお願いした。


 ソフィアは何度か兄上のところへも言ったみたいだが、成人をした王太子の兄は実務で多忙でなかなか面接できないみたいだ。


「ルークは全然分かっていないわ。わたくしだって両親を亡くしたセシル姫のことを可哀想に思い、力になりたいと思っているのよ。

 だからセシル姫がミチル国王族と鉢合わせにないように、傷つかないようにあえて遠い場所に滞在してもらおうと思ったから、セシル姫には静かな場所に滞在して貰って、と指示を出したの。なのに女官の誰かがひどい場所に滞在するように指示を出したのよ。

 まさかその場所があんなところとは知らなかったわ。きっとわたくしのことが嫌いな誰かが勝手に手配したんだわ。

 わたくしのことを罠にかけようとしてしたのよ」


 母上にソフィアを家族として大切に接するように言われて育ったが鬱陶しい。

 以前は兄上がソフィアの相手をしていてくれたが、最近は兄上に相手にされなくなった途端ルークに付き纏う。

 兄上も数年前からソフィアの求婚に嫌気がさし、積極的に外務の仕事をしていて王城にいない方が多い。いたとしても兄上を捕まえるのは困難だ。

 最近はソフィアが王族の居館に入館できなくなり、前より兄上と会うようになった。


 昔から兄上は表面上はソフィアに紳士的に接しているが、それは決して家族としてでなく王太子としてだ。

 

 兄上はセシルに会うのを楽しみにしているようだ。次々報告されるセシルの行った内政に興味を持っているようだ。兄上がこんなに女性に興味を持つことはいままでななかった。

 兄上がセシルを好きになったらどうしようと不安な気持ちになる。なるべく兄上とセシルやラングの会話をしないようにしている。

 

「ルークさま。ソフィアさまはいままで王妃さまのためにいろいろ勤しんできました。せめて陛下に王妃さまにいつでも自由に会えるように王族居館の自由立ち入りの許可をお願いします。

  血のつながった叔母に自由に会えないなど可哀想です。


 わたくしもいままで以上にルークさまにお仕えしようと思っています。

 でもどうしてまだわたくしを側近に選んでくださらないのですか?」


 今日のマリアンナは令嬢の服を着ている。夏服だが相変わらずソフィアは露出の多い恰好だ。なにより悪趣味な盛り上がった髪型につい目がいってしまう。

 最近の貴族たちの流行に呆れる。母上や上流階級の婦人たちも、ソフィアの取り巻きたちの髪型に思うところがあるようだ。

 ルークは別に女性のファッションに興味は全然ないが、さすがに目の前の不自然な髪型は行き過ぎだと思う。

 

「マリアンナを側近に選ぶ気はない、と先日も言ったではないか。仕事の邪魔だ。出ていってくれ。レイ、この報告書について質問がある。

 ソフィア、仕事中だ、席を外してくれ。これ以上毎回仕事の邪魔をするのなら、ソフィアの入室を拒否する。母上に言っても無駄だ」


 この一ヶ月勝手に入り喋っているソフィアたちを無視して仕事をしてた。一ヶ月もセシルの居場所が分からずイライラしていたが女性の対して親切に接する騎士道を守ってきた。だがもうそろそろ我慢も限界にきている。


「ちょっと、ルーク。ルークも仕事のし過ぎよ。少し息抜きが必要なのよ。マリアンナのことも、少し余裕ができてゆっくり決めればいいわ。

 そうだわ。今週末にあるマリアンナの家の夜会に一緒に行きましょう?」


 ソフィアはルークの言葉など全然聞いていない。いとこだと言っても、ルークは王子だ。ソフィアも母上に言えばすべて自分の思い通りになると思っていて、ルークの意見も全然聞かない。

 女の子どもの欲しがっていた母上に甘やかされたお姫さまだ。


「失礼します」


 兵士が一人入室してレイに耳打ちをした後に出て行った。その後にレイがルークに寄り耳元で小声で囁いた。


「セシル姫さまたちが見つかりました。いまからタイラさまが迎かえに出るそうです」


「!!」


「レイ、出かける支度をしろ。他の者たちはそのまま仕事をつづけてくれ」


「ちょっとルーク。まだわたくしたちの会話は終わっていないわ。今週末の夜会のパートナーを引き受けてくれるのでしょう?」


 席を立ち部屋を出ようとしたルークの前にソフィアが立ちはだかる。


「どいてくれ。こっちは急用なんだ」


「わたくしの返事をもらうまで、ここをどかないわ」


「週末は忙しい。ソフィアのエスコートはしない。そこをどいてくれ」


 ソフィアがキッっとルークを睨む。


「どうしてよ!? じゃあ、今度ルークが出る舞踏会か式典にわたくしのパートナーになってよ! じゃないと、わたくし、ここからどかないわ」


 本当にイラつく女だ。もし従姉じゃなかったら、一生顔を合わせたくない。

 

「どけ」


 目の前に立っているソフィアの肩を軽く触り、道を開けようとした。


「キャアー」


 ソフィアがいきなりヨロけて叫びながら倒れた。


「キャアアアーーーー。だ、誰かーー」


(なんでいまので倒れるんだ?)


 呆気になり倒れているソフィアを見ていたら、マリアンナが廊下に出て叫び出した。


 叫びを聞いた兵士たちや女官たちがルークの部屋に集まる。ソフィアは床に倒れて泣いており、マリアンナがルークがソフィアに暴力をふるったと説明した。

 レイたち側近がソフィアとマリアンナの嘘を否定したが、泣きつづけているソフィアを見てまわりはルークを攻め立てるように見ている。


 このままだと周りはソフィアたちの意見を受けてしまう。兵士の一人にソフィアは抱かれて医務室へ行く。もちろんルークもこれ以上ソフィアが何か言うと困るから後に付いていった。


 ソフィアは足の捻挫を訴えたが、足の腫れは見えずに医者は困った顔でルークを見た。

 

「いい加減にしろ! そんな嘘を言うなら、今後いっさいお前たちに会わない!」


「ルーク!」「ひどい! 嘘じゃないわ。本当に足をひねって痛いのに。ヒック」

 憤慨した母上が医務室に入ってきた。


「女の子にはやさしくしないといけないとあれほど言っているのに。ましては大切ないとこにそんなことを言って。あやまりなさい!」


「母上!? お体の具合はいいのですか?」


 最近はベットに横になっていることの多い母がいて、驚き尋ねる。


「いまはわたくしの体調のことより、ソフィアのことよ」


「叔母さま、ルークが意地悪するの。わたくしはルークには息抜きが必要と思って、夜会に誘っただけなのに。ヒック。仕事の邪魔と言って、話も聞いてくださらずにわたくしを押して、ヒック」


「おい、そんな話じゃないだろ? 俺は仕事で忙しいから執務室から出て行ってと言ったが、ソフィアが出ていかなかったんだろう。

 俺が部屋から出ようとしたら、道を塞いだから肩に手を置いて道を開けるように促したら、ソフィアが勝手に倒れただけだろ」


 顔色の悪い母上に、医師が椅子をすすめた。母は椅子に座ってため息をして、ルークに言った。


「ルーク。あなたは一応王族です。その言葉使いをどうにかしなさい。俺ではなく、私といいなさい。それより、どんな理由にあれソフィアは嘘を言うはずがないわ。ソフィアの言うように最近のルークは心の余裕がないわ。イラついていて、力加減を間違えたのかもしれないわ。

 ソフィアの言うように息抜きが必要よ。ソフィアの足が治ったら、舞踏会でも式典でも謝罪をかねてソフィアをエスコートしなさい。

 あなたたちはいとこ同士なんだから、仲良くしないといけないわ。

 ルーク、分かったわね」


 反論も言わさないように母上がルークに言った。体調の悪い母上にこれ以上反論する気はなかった。ソフィアがそのままエスコートの件を忘れてくれるといいが。


 結局医務室を出てタイラ叔父上のところにすぐ行ったが、叔父上はいなかった。タイラ叔父上の側近にセシルの居場所を聞いたが教えてもらえなかった。

 さすが叔父上の側近。守秘義務が徹底している。滅多に使わないがルークは王族権力を使ってセシルの居場所を聞いた。

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