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「申し訳ありません!」


 物思いにふけているとルークがソファーから立ち上がり頭を下げた。謝罪の理由を立て続けに言った。

 帰国の途中で、クレード伯爵令嬢がセシル姫に剣を向けた報告をした。神殿騎士たちと乱闘になりかけたと言う報告を聞きながら頭が痛くなる。

 タイラからはその事件以降、リンダ嬢たちがタイラたちを怯えて隠れていることについて憤慨している。


「わしの命令は、セシル姫の安全保護だったはずだ! 命令をまともに聞けないのか!」


「この命、いまはリンダのためにありますからあげられませんが、今後命にかけてもリンダを守ります」


 タイラの言葉についイラついた気持ちが消えた。


「タイラはリンダだけか? で、セシル姫とリンダは誰が守るのか?」


「もちろんリンダの愛する二人も私が守ります!」


「そうか期待しておる」「俺が守ります!」


 タイラの言葉に反応しルークが「はっ」とした顔をして言った。


「お前たちの失態の罰を受けなければ示しがつかない。王の勅令を真っ当できなかった故、タイラ将軍は三カ月の減給。今回遠征に参加した騎士や兵には再度教育をしなおせ。ルーク及びクレード隊員においての研修得点は『可』。


 そしてルーク、クレード隊員、いやクレード嬢をお前の側近にすることをわしは許さない。分かったか? どんな理由があれ、クレード伯爵家は最近いろいろ国の中心、筆頭になろうと策略しておる。子どもたちを権力者たちと婚姻を結ぼうとしておる。それは貴族皆しておることだが、わざわざ女騎士を第二王子の側近にする理由がない。別にわしが女性の側近を否定するわけではない。

 文官で秀でる優秀な女性がいれば側近にすればいい。だがクレード嬢が優秀と言う噂を聞いたことなどない」


 セイズ国内の派閥は落ち着いている方だと思っている。

 いまの国内の権力バランスを崩したくない。

 まだ学園を卒業していないルークには、実際の政治の細かい様子は理解できないだろうが、クレード嬢の側近を認めない理由を理解しただろう。


 今回ラング国が北領土に加わり、多くの北の領主が多い、国は民衆のたみにあると論する「民衆派」がさらに力をつけるだろう。南の領主たちが中心の国は貴族のためにある「閥族派」がタイラを勧誘しているが、弟は政治に関心がなかった。


 だが、ラング国伯爵令嬢のリンダと結婚をすれば、隣の領土のクレード伯が黙っておるわけがない。なるべくクレード伯の手駒を潰しておくために、ルークにクレード嬢と距離を置くように警告しておく。


 セイズ王自身民衆派だが、古き時代から国を守っている閥族派を抑えることもしない。もちろん用途により国を納める「中立派」で、セイズ国は国を運営している。


「「はっ。御意」」


 二人が立ち上がり左腕を胸元に寄せた。

 戦争において軍において一人の犯した罪により軍が滅び負けることもある。

 今回の遠征で「セシル姫と侍女たちの身の安全」を第一事項で命令した。その安全対象に剣を向けるなどあってはならない話だ。彼女たちに剣を向けるとは、命令に背く行為。セイズ王の命令が自軍に取るに足らない命令と侮辱されたことになる。


 ルークの報告を聞いて、クレード伯爵令嬢がルークに好意を持っていることが伝わった。その報告をしているルーク自身がそれに気づいていないようで滑稽だ。


 もちろんセイズ王は息子に余計なことを教えない。今回ルークは『可』の評価を取ったことで主席で学園を卒業できない。王族男子はいままで主席で学園を卒業している。


 ルークは跡取りとしてノエールより衰えていると評価を受けるだろう。


「今後、セシル姫たちを手厚くもてなせば、ラング国重臣たちも落ち着くだろう」


 セシル姫に剣を向けた情報がラング宰相の耳に届いていないことを祈りながら、それはないだろうと知っている。神殿も表だってセイズ国に牙を向けないだろう。第一騎士団に出した罰で、国の意志でセシル姫に害を与えようとしたのではないと分かることに望みを託す。

 結局、「だろう」と自分の希望の未来を予測する。


「セシル姫はわしの保護下にいるとあれほど言ったのに。どうして剣を向けるなどと言うことがあるのか?」


 つい愚痴をこぼす。


「発言をお許しください。それはセシル姫が罪人の娘で文無しで庶民と言う理由からです」


 ルークの側近のレイが言った。


「誰が罪人だと言うのか? わが親友を罪人と申すのか!! 第一セシル姫は文無しなどではない! 豊かなラング国王女が文無しなど、誰だそんなバカな噂をしているのは!!」


「そ、それは、ラング王がミチル王族を殺害したからです。国が滅びた故、セシル姫さまは庶民になり文無しと……」


 セイズ王の怒り声でレイが小声で返事をする。セイズ王の怒りの前にきちんと返事をし、ルークはなかなかよい者を側近にしている。


「敵国同士の国王の首をハネても、それで罪人にならない。ラング王は英雄だ!」


「はっ。おっしゃる通りです」


 親友の統治期、大きな戦争がなかった故世間は忘れがちだが、ラング国とミチル国は敵国だ。同盟を交わされたと言っても、それは表の顔。


 実際にラング王妃はミチル王女として、ラング王の血の入っていない子どもたちを使いラング国を乗っ取ろうしていた。


 前ミチル王弟がラング王の賠償金としてセシル姫を愛妾にすることで手を打つと言った時は、彼を殺したくなったのをいま思い出して腹が煮えたくる。

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