表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/116

「ちょっと待って。まだ話が終わってないわ……」

「姫さま……」


「リンダ、リリー、いまの見た!? にやって笑ったよね!? な、なにが『おとなしく』ここにいてくださいよ!!  ここから出たことないのに! な、なんであんな俺さまなのよ!!」


(くっ、私はおてんば娘じゃないって!! なんであいつに上目線されないといけないの! 何さまなの! もう絶対、調教系M王子総受けにするからね!)


「俺さまとはどういう意味だ?」


 王子が出て行った入り口を睨みつけて悪態をついてたら、笑い声をかみ殺しながら、ルーク王子が顔を出した。


「ちょっと、なに盗み聞きしているの! なんで戻ってくるのよ!?」

「はっはっっは。お前、何枚猫をかぶっているんだ?」


 むかっ!!

「殿下ほどではありません!!」

「ルークでいい」

「はっ?」

 なにをいきなり言うんだろう。


「だから俺の名前は、ルークでいい。俺もお前のことをセシルと呼ぶ」

「ちょ、ちょっとかってに呼び捨てしないでよ! はっきり言って、わたくし、今後あなたと交流する予定ありませんから。すぐに市井で生活する予定だから、王子のことを呼び捨てなんてできません!」

「……はあ? 巷で生活する?」


 ルークが飽きれた顔をしている。出会ってからずっとそんな顔されているのは気のせいだろうか……。

「殿下。急いでください。セシル姫さまのことは陛下が決めます」


「ああ、そうだな。レイ。セシル。明日の昼すぎに神殿で、ラング王の告別式を行うから準備をしておくように」


「!!? と、とーさまの葬式をしてくださるの?」


 てっきり犯罪者だから葬式をすることができないと思っていた。


「ああ、国をあげてはできないが、身内でする……。ラング王の遺体はすでに火葬したが、神殿できちんと死者の魂の告別式を行う」


 目頭が熱くなる。今日は泣いてばかりだ。ふと頬に固い手のぬくもりがあった。

「セシルは泣き虫だ。顔が酷いことになっているぞ」


「っ!! 泣いてなんていないわ!! 勝手にわたくしに触れないでください! 早く仕事に戻ったら!?」


「はっはっはっは。ああ、そうだな。また来るよ」

「もう来なくていいから!」

 あたたかい温もりが消えてさびしくなった。


「もう、あれ、絶対、王子じゃない! 品がないし、俺さまだし!」

「セーちゃん、護衛の人たちが監視しているから……地で本音話すと王様に打ち首にされるよ……」

 リリーが小さく言った。


「あっ、ご、ごめん……ど、どうしよう……で、でも殿下が悪いの。そ、そうよ、きっと周りの人たちもみんなそう思っているわ……」

 護衛の存在を忘れていた。さっきから王女モードじゃなく地でしゃべっているし……。セシルはあせって護衛騎士たちを見た。


 部屋には四人の騎士がいた。紺色の軍服を着た中年イケメン以外は、黒の軍服を着ていて、三人とも30才くらいだ。もちろん全員マッチョで背が高い。セシルたちを気遣って距離を置いた所にいるが、それでも首を上に傾けないと顔が見れない。


「あっ、あの……わたくしはセシルと申します。それでリンダとリリーです。護衛なんていらないけれど、よろしくお願いします」

 とりあえず日本人専用愛想笑い。


 リンダとリリーもセシルに真似てお辞儀をした。


「はっはっは……失礼。丁寧な挨拶感謝します。わたしはセイズ第一騎士軍テルで、こっちらがハル、ミック。そした一人制服が違うのが、セイズ神殿騎士のノブだ。 俺たち、いやわたしたちのことは空気と思い生活してください」


 四人の騎士たちはニコニコしながらセシルたちを見ていた。


「あっ、はっ、はい……」


 中年イケメン軍隊と見つめあって会話するスキルなんてない!


 リンダとリリーに助けを求めても、2人も困った顔をしている。リリーにおいては、まだ男の存在に怖がっている。


「夕飯、多めにつくろう……。保存している缶詰のトマトのピューレで、スープ作る? どうせここにいる日も少ないから保存食使おう?」


「ええ、そうですね」


「わーい。もうせっかくだから思いっきり贅沢しよう。じゃあ、果物の缶詰やハチミツでお菓子もたくさん作ろうよ」


「もうリリーったら」


 リンダが笑った。今後セシルはどうなるか分からず不安だけれど、リンダとリリーが一緒にいれば大丈夫だと思った。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ